オーダースーツ 銀座英國屋コラム採寸・フィッティングはオーダースーツの真髄|フィット感を高めるためのポイント解説
採寸・フィッティングはオーダースーツの真髄|フィット感を高めるためのポイント解説
オーダースーツでは、生地をはじめ、スーツのデザイン、ボタンや裏地の柄、内ポケットの大きさなど、さまざまな部分を自分好みにカスタマイズすることができます。
それらだけでもスーツをオーダーするのに十分な理由となり得ますが、
オーダースーツの最大の真髄はやはり、
「自分の体にあったスーツを仕立てられる」
ことではないでしょうか。
そのために必要となるのが、「採寸」と「フィッティング」です。
この記事では、オーダースーツにおける採寸・フィッティングをする意味と、より自分に合ったスーツを仕立てるための具体的なポイントについて解説していきます。
あらかじめ流れをお伝えしておきますと以下のようになります。
・採寸・フィッティングはオーダースーツの要
・採寸について
・フィッティングとは?
・採寸・フィッティング共通のポイント
・特にフィッティングで気を付けるポイント
今回の記事が、皆様がスーツをオーダーした際に、よりフィットした仕上がりを得るための参考となりましたら幸いです。
それでは早速見ていきましょう。
採寸・フィッティングはオーダースーツの要
採寸、フィッティングは、体に合わせたスーツを作る上で必要不可欠な作業です。
スーツのオーダーにおいては専門的・技術的な作業であるため、長さを測ってサイズを合わせていくだけの無機質な作業に思われがちです。
しかし体の大きさ、長さだけではスーツの形は決まりません。
人の体の形は千差万別で、似たような体型であったとしても、ひとそれぞれの好みがあります。
さらに、同じ人が着用するスーツであったとしても、素材や、着るシチュエーションなどあらゆる条件によってベストなフィッティングは変わってきます。
お客様側とテーラー側がコミュニケーションを重ねながら、それぞれ必要な情報を提供し合い、その時々に合わせたベストな一着を目指していくのです。
採寸について
採寸は読んで字の如く、体の各部位の寸法、つまり長さを測っていく作業です。
パターンオーダー・イージーオーダー・フルオーダーと、どんなオーダースーツにおいても、体に合わせたスーツを作る上で土台となります。
採寸では、仕上がりのゆとり幅やシルエットの好みを反映せず、純粋に体の長さを測っていきます。
採寸箇所
具体的にどんな部分を採寸していくのか見ていきましょう。
ジャケット
ジャケットに対応する部分として、
・着丈
・肩幅
・胸回り
・背幅
・胸幅
・袖丈
・アームホール
などを測ります。
肩幅は、全体のシルエットや着心地に大きな影響を及ぼす部分であり特に重要な部分です。
袖丈も、シャツとコーディネートした際に全体の印象を引き締まったものにするため、正確に測る必要があります。
スラックス
・ウエスト
・ヒップ
・ズボン総丈
・股下
などはスラックスのサイズに対応します。
お腹まわりのサイズが気になったとしても、正しいサイズを測るために、不自然に引っ込めたりしないようにしましょう。
採寸の際に、ズボンの裾口幅を確認することもあります。
その他
体型補正がある、イージーオーダーやフルオーダーでは、数値に表現されない
・怒肩か撫で肩か
・体が反り気味か屈み気味なのか、
といったことをチェックすることがあります。
採寸の所要時間
スーツを注文する際の所要時間について気にされる方も多いかと思いますが、採寸に限って言えばさほど時間はかかりません。
熟練の技術者であれば、5分ほどあれば全て採寸し終わるでしょう。
しかしながら、スーツを注文する際には生地選びをはじめ、デザインを決めたり、フィット感を相談したりと、決めなければならないことも他に多くありますので時間に余裕を持って来店するようにしましょう。
フィッティングとは?
フィッティングは、スーツを体に合わせていく作業全般のことをいいますが、
オーダーの種類によって意味が異なることがあります。
ここでは、一般的に用いられている「フィッティング」という言葉の意味について、オーダーの種類に分けてご紹介いたします。
フルオーダースーツの場合
フルオーダースーツは、顧客ごとにスーツの設計図である「型紙(パターン)」を作成するオーダーのことで、非常に自由度が高い手法であるため、スーツの形に仮留めした生地を着用しながら体に合わせていく「仮縫い」が必要になります。
フルオーダースーツにおいて、「フィッティング」という言葉は、この「仮縫い」のことを指します。
仮縫いを行うオーダーの場合は(フルオーダーでなかったとしても)
“フィッティング=仮縫い”
と考えておくのがよいでしょう。
フルオーダー以外の場合
フルオーダー以外のパターンオーダーやイージーオーダーは、あらかじめ用意された型紙に基づいて、サイズを調整したり体型補正を加えたりすることで、体に合ったスーツを作っていきます。
これらの場合、仮縫いが行われることは稀で、パターンオーダー、イージーオーダーを実施している多くのテーラーでは、顧客がゲージ服と呼ばれるサンプルを着用した状態で、サイズを調整していきます。
仮縫いを実施しないオーダーにおいては、この調整作業のことをフィッティングと呼ぶことが多くなっています。
採寸・フィッティングをする上で共通のポイント
ここまでは、採寸およびフィッティングについて、解説してまいりました。
ここからは実際にスーツをオーダーした際、採寸・フィッティングを受けるにあたってのポイントをお伝えしていきます。
いつどこで着るのか、どなたに会うのかを想定しておく
まず初めに大切になるのが、
・いつ、どこで着用するのか
・そのスーツを着てどなたに会うのか
を想定しておくということです。
例えば、デスクワークが多いのか、それとも外回りが多いのかによって、フィッティングで重視しなければならないポイントも変わってきますし、世代が上の方とお会いになるのであれば、それにふさわしいシルエットを選ぶこともできます。
いつ、どこで、どなたに会うのかが整理されていることで、複数の選択肢の中から迷わず選ぶことができ、間違いを減らすことにもつながります。
さらに、店舗スタイリストや技術者に伝えておくことで、具体的な提案やアドバイスを受けやすくなるというメリットもあります。
また、ビジネス用にオーダースーツを注文する場合は
・どなたからの信頼が必要か
という点についても考えておくと、自分に合ったスーツがどのようなものなのか、より明確に見えてくるかもしれません。
今お伝えしたようなポイントは、採寸、フィッティングに限らず、店選びや生地選びなど、スーツ選びをする上で非常に重要ですので、ぜひ参考にしていただければ幸いです。
詳しくはこちらをご覧ください。
自分の好みをあらかじめ把握しておく
二つ目のポイントは、
・自分の好みをあらかじめ把握しておく
ということです。
先ほどの項目に通ずるところもありますが、あらかじめ整理がついていないと、好みについてお店側から質問があったときに、急には答えられないものです。
シルエット、ゆとり、股下の長さ、全体的な雰囲気など、自分でも知らず知らずのうちに似たようなものを選んでいる可能性もあります。
もしも比較するポイントがわからなかったり、うまく言語化して整理できない場合は、普段着ているスーツを着用して来店するのも良いでしょう。
そのスーツが気に入っている場合は参考にしてもらえますし、見た目や着心地で気になる点がある場合は、伝えることで改善できる可能性もあります。
スーツに合わせるシャツ、靴を用意する
採寸・フィッティングの際には、
・一緒に合わせるシャツや靴を用意する
ことも、自分に合ったスーツを仕立てる上で重要です。
シャツのゆとりやサイズ、靴のボリューム感やかかとの高さによって、仕上がりの寸法は微妙に変化します。
シャツや靴においても、「いつどこで、誰に会うのか」を想定して選んだものがベスト。
シャツのオーダーもできる店舗であれば、スーツと一緒に注文してしまうのもひとつのアイデアでしょう。
コーディネートで購入することで装いを洗練させることもできますし、スーツが仕立て上がったあとにシャツと合わないといったトラブルを避けることもできます。
着用して来店しても、着替えとして持っていっても、どちらでも構いませんので、余裕のある場合はシャツや靴も用意しておきましょう。
自然な立ち姿で受ける
採寸やフィッティングは、さまざまなポイントをバランスよく確認できるよう、鏡の前で行われることがほとんどですが、その際に注意しなければならないのが、
「普段通りの立ち姿をキープする」
ということです。
鏡の前では、意識しなくとも胸を張ったり背筋をピンと伸ばしたりして、良い姿勢をとりがちです。
スーツは基本的に立ったときの姿勢で合わせていきますから、フィッティングなどの際に普段と違う姿勢で受けてしまうと、
普段通りの姿勢に戻った時に余計なシワがでたり、フィット感を失ったりしてしまう可能性があります。
自分の理想の姿勢にあわせたスーツを作る、という考えもありますが、
一度身についてしまった姿勢を矯正するのは一朝一夕にはいきません。
普段の姿勢が少し恥ずかしく感じられることもあるかもしれませんが、基本的にはいつも通り、楽な姿勢で臨むことをオススメします。
特にフィッティングで気を付けるポイント
最後に、フィッティングの際にチェックするべき具体的なポイントについてご紹介いたします。
少し細かい内容になりますが、これらのポイントを抑えることでオーダースーツの満足度をより高めることができますので、ぜひ参考にしていただければ幸いです。
ジャケットのフィッティングで気を付けるポイント
袖丈
袖丈で最も大切なのが、シャツとのバランスです。
具体的には、腕を下ろした時スーツの袖口からシャツが指一本分覗く丈である必要があります。
シャツが見えないほどの袖丈ですと全体までぶかぶかな印象になりますし、逆に短すぎる袖丈は窮屈で貧相に見えてしまいます。しっかりと確認しましょう。
着丈
着丈は後ろから見た時のジャケットの長さで、スーツのシルエットバランスが取れていることが大切です。
近年はタイトなシルエットが主流となっており、それに伴って着丈も短い傾向にありますが、お尻が半分以上見えていれば短すぎと言えるでしょう。
意識しにくく忘れがちなポイントですが、チープな印象にならないためにも鏡でチェックしましょう。
胸回り、胴回りのゆとり
胸回り、胴回りのゆとりは着心地に直結し、見た目にも大きな影響を与えます。
また、好みによるところも非常に大きいものがあります。
基本的には、フィッティングの際の着心地と見た目を直感で判断して問題ないと思われますが、内ポケットにペンや手帳、ハンカチなど、たくさん物を入れる場合は相応のゆとりが必要になりますので、フィッティングの際に必ず伝えるようにしましょう。
スラックスのフィッティングで気を付けるポイント
ウエスト
ウエストのゆとり、サイズ感は好みが非常にわかれるところです。
こちらも普段の着用感に合わせてオーダーすれば問題ありませんが、デスクワークなどで座っていることが多い場合はややゆとりを持たせ、立った状態がメインの場合はジャストで合わせるのがオススメです。
またお食事の際、お腹まわりの変化が大きい方は、すこしゆとりを持たせるようにしておくと安心です。
裾幅
裾口の幅は、スーツのシルエットと密接な関係があります。
裾口幅が細ければシルエットも細くなり、太くなればその逆です。
また、裾口が細ければ細いほど、靴にあたりクッションができやすくなりますので、その分股下の長さも短くなります。
フィッティングの際はスーツに合わせる靴を用意して確認するのがベストです。
股下
股下の長さは、靴の甲にスラックスの裾口があたって折り目が一回できる「ワンクッション」、またはそれよりやや短い「ハーフクッション」がおすすめです。
一般的に、裾口やズボンのシルエットが標準の場合は「ワンクッション」、細身の場合は「ハーフクッション」が良く合いますが、好みも反映できる部分ですので、フィッティングの際に全体のバランスを見ながらチェックしましょう。
ベストのフィッティングで気を付けるポイント
着丈
ベストとスラックスの間からシャツが見えてしまっていないかどうかを確認しましょう。
ベストを合わせたスリーピーススーツでズボンの股上が浅い場合、シャツを見えないようにすると、ベストの着丈が長くなりすぎて胴長に見えてしまうことがあります。
ベストの着丈はスラックスとのバランスを大切にしましょう。
また、胴回りのゆとりにも注意が必要です。
ベストはジャケットに比べて体に密着しているため、着心地に対する影響もその分大きくなります。
タイトなスーツでもゆとりを削りすぎないようにしましょう。
また、スラックスのウエストと同じように、座ることが多い方はややゆったり目。立って着用する機会が多い方はジャストサイズで合わせるのが良いでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回の記事では、オーダースーツにおける「採寸」と「フィッティング」の意味、またそれらを実際に受ける際のポイントについて解説してまいりました。
あらためてポイントをまとめますと以下のようになります。
・採寸・フィッティングもコミュニケーションが大切
・いつどこで、だれに合うかを想定しておき、店舗スタッフに伝えておく
・自分の好みを把握しておく
・いつも通りの自然な状態で受ける
・全体のバランスを考慮して判断する
今回の記事が、皆様がスーツをオーダーした際によりフィットした仕上がりを得るための参考となりましたら幸いです。
監修者
小林英毅(銀座英國屋 代表取締役社長)
1981年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。 オーダースーツ銀座英國屋の3代目社長。 青山学院大学ファッションビジネス戦略論・一橋大学MBA・明治大学MBA・ネクストプレナー大学にてゲスト講師。 銀座英國屋は、創業80年。東京銀座・オークラ東京・大坂梅田・大阪あべのハルカス・京都に店舗展開。
ビジネスウェアを選ぶ際の「どなたから、信頼を得たいか?」という視点を軸に、オーダースーツについて、お役に立つ情報をお届けいたします。
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