オーダースーツ 銀座英國屋コラム礼服とは?メンズフォーマルの種類と選び方・着こなしまで徹底解説
礼服とは?メンズフォーマルの種類と選び方・着こなしまで徹底解説
礼服は、社会的な儀式や正式な場でのエチケットを体現するための服装です。
適切に装うことで、着用者のみならずその場全体に品格と格式を与えることができます。しかし種類が多岐にわたるため、場面によって使い分けるにはコツが必要です。
細かな規則やマナーに悩んだ経験をお持ちの方も、いらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では礼服に関する基本的な知識をはじめ、礼服の種類、結婚式や葬儀における各シーンにおける装いの例を解説していきます。最後には実際に購入する際のポイントもご紹介しますので、参考にしていただけましたら幸いです。
礼服とは?
礼服とは、特別な儀式や公式の場で着用する衣服です。結婚式や葬儀などの改まったシーンで人々とお互いに敬意を表すために用いられ、フォーマルウェアとも呼ばれます。
一般的に「礼服」といった場合には、西洋のスーツスタイルをベースにしたものを指します。和服にも礼服は存在しますが、その場合は「紋付袴」のような個別の名前で呼ばれることがほとんどです。
ビジネススーツとの違い
礼服とビジネススーツでは、着用の目的が根本的に違います。
ビジネススーツは、企業活動における日常の業務を遂行するためのスーツで、いわば職業人の仕事着です。取引先や上司、同僚からの信頼を獲得することが主な目的となります。スーツの色柄や小物をうまく選べば、フォーマルさを損なうことなく個性を表現し、相手に自分を印象づけることも可能です。
対して礼服は、主催者や参列者に敬意を払うための衣服です。普段は異なる服装をしている各個人が同じスタイルの服を身に纏うことで、儀式や催しに賛同することを表現します。ルールやマナーが、ビジネススーツより細かく設定されているのは、同じスタイルであることが求められるためです。
喪服との違い
礼服と喪服は、指定する衣服の範囲が違います。
礼服は式典や儀式全般で着用される衣服を指し、冠婚葬祭を問わず使われる用語です。一方、喪服は通夜や告別式といった葬儀の際に用いる服を意味します。つまり、礼服の方がより広い概念であり、弔事に着用する礼服が喪服というわけです。
単に「喪服」といった場合は、ブラックスーツの上下(もしくは三つ揃え)を指すのが一般的です。この後ご紹介するモーニングコートやディレクターズスーツは、喪服に含まれません。
礼服のマナー
礼服を着る際は、TPOに合わせたマナーがあります。着用シーンや格式についても考慮した服装選びが必要です。
礼服をベースにした装いを「礼装」といい、大きく3種類に分けられます。
・正礼装
・準礼装
・略礼装
どれを着用すべきかは催しそのものの格式や、その中における立場・役回りに応じて変わります。着用する時間帯にも注意が必要です。例えば同じ準礼装が求められる場合でも、日中と夜間では適切な服装が変わるためです。
正礼装は最も格式高い服装で、式典の主催を務めたり、国家的行事などの格式高い催しに参列したりする際の装いです。昼間ではモーニングコート、夜間では燕尾服が正礼装に該当します。
準礼装は文字通り正礼装に準ずる服装で、略礼装よりもワンランク格式の高い装いです。昼間はディレクターズスーツ、夜間はタキシードが準礼装に該当します。
略礼装は、比較的フォーマル度の低い催しにおいて、一般参加者が身に纏う装いです。昼夜を問わず、ブラックスーツが該当します。
以上の分類はあくまで目安で、催しによっては必ずしも一致しないこともあります。ドレスコードがあるかどうか、あるいはどの礼装が適切かをその都度確認するようにしましょう。
礼服の種類
ここからはそれぞれの礼服について、その構成や特徴をご紹介いたします。以下を押さえておくことで、いざ必要になったときに落ち着いて対応しやすくなるはずです。
ブラックスーツ
ブラックスーツは日本で最もポピュラーな礼服です。略礼装として着用します。
その名の通り黒いスーツのことですが、礼装のブラックスーツには、一般的なビジネススーツやリクルートスーツと異なる点があります。
まずは使用される生地についてです。通常のブラックスーツに用いられる生地はややグレーがかっています。対して礼装用のブラックスーツには、いわゆる「漆黒」と呼ばれる純粋な黒に近い色が用いられます。加えて、喪服として着用した時に華やかな印象になるのを避けられるため、光沢が穏やかでマットな質感なものが好まれます。
デザインにおいても違いがあります。現代のジャケットのデザインは、2つボタン1つ掛け・ノッチラペルというスタイルが基本的です。礼服のジャケットでは1つボタン1つ掛け・ピークドラペルが多く用いられます。
また、背中側の裾に入っている切れ込み「ベント」についても違いがあります。通常のスーツはセンターベントかサイドベンツが一般的です。対して礼服ではノーベント、つまり切れ込みがなく完全に縫い付けられている仕様が多く用いられます。式典などでは、動きやすさよりも見た目が重要視されるためです。
礼服としてのブラックスーツとその他の黒のスーツでは別の衣服となるため、購入する際は必ず確認するようにしましょう。
ディレクターズスーツ
ディレクターズスーツは、重役の執務服として欧米で流行したスタイルです。現在では、昼間の慶事においてブラックスーツよりワンランク格式高い準礼装として着用されます。
ブラックスーツのジャケットに、シルバーベストと黒とグレーのストライプが入ったコールズボンを合わせた服装です。シャツは白無地のレギュラーカラーシャツ、ネクタイはシルバータイを結び下げ、靴は黒のストレートチップを合わせます。
記念式典に出席する方や、昼間の結婚式に主賓として招待された方などにおすすめのスタイルです。
モーニングコート
モーニングコートは、園遊会や受勲・受章での伝達式などでも着用される正礼装です。昼間着用される服装の中では最も格式高い装いとされています。
コート(ジャケット)は、シングル1つボタン・ピークドラペルに、前を大きくカットした特徴的なテールがついています。シルバーベストもしくはジャケットと共地で仕立てた白襟付きベストを合わせ、ズボンは股上の深いコールズボンをサスペンダーで吊るします。ディレクターズスーツと同様、白無地のレギュラーカラーシャツにシルバータイ、黒のストレートチップを合わせるのが基本です。
ただし弔事においては、白襟を外した共地のベストに、黒無地のタイを合わせるようにしましょう。
格式を重んじる昼間の式典や、主催者側として臨む祝賀会など、特別なタイミングで着用されます。
タキシード/ブラックタイ
タキシードは夜間の準礼装で、ドレスコードに「ブラックタイ」の指定がある場合に着用します。
タキシードという名前は米国由来です。ニューヨーク、タキシードパーク倶楽部の正装舞踏会で有名になったことからその名がつけられました。欧州諸国では、「ディナージャケット」や「スモーキングジャケット」と呼ばれます。
ジャケットの襟はピークドラペルかショールカラーで、拝絹と呼ばれる光沢のあるサテン生地が被せられています。側章入りのスラックスにエナメルのパンプスを合わせ、ジャケットの内側にはカマーバンドを着用します。
タキシード用のシャツには、胸にピンタックが入っており、フロントと袖口は、オニキスをあしらった揃いのスタッズボタン及びカフリンクスで留めるのが一般的です。
ネクタイは「ブラックタイ」、すなわち黒の蝶ネクタイで、拝絹かカマーバンドと共地で作られたものを使用します。
夜間の準礼装ということで、祝賀会や晩餐会、レセプションパーティーなどで着用されることが多い服装です。
燕尾服/ホワイトタイ
燕尾服は夜間の正礼装で、ドレスコードに「ホワイトタイ」が指定されている場合にはこのスタイルが必要です。別名テールコートとも呼ばれます。
燕尾服のコート(ジャケット)には前裾をカットした長いテールがついており、燕尾服やテールコートという名前はこの部分に由来します。衿はピークドラペルで、タキシードと同じく拝絹付きです。2本の側章が入ったスラックスをサスペンダーで吊り、黒エナメルのパンプスを合わせます。
白のコットンピケで仕立てたベストの丈はコートのカットに合わせて短くなっており、3つボタンの襟付きスタイルが基本です。
燕尾服には白無地のウイングカラーシャツを合わせます。胸の部分はベストと共地のピケで補強された「イカ胸」仕様、カフスにも同じくピケ素材が使用されており、シルバーに真珠や白蝶貝を載せたカフリンクスで固定します。
そしてネクタイは「ホワイトタイ」というドレスコードの通り、白の蝶タイです。ベストと同じピケ素材かシルク素材のものを用います。
昼夜を問わない最高礼装として宮中晩餐会やノーベル賞の授賞式などで着用されます。
礼服の着こなし【結婚式編】
ここからは、礼服の着こなしについて具体的にご紹介いたします。
まずは結婚式での装いについてみていきましょう。
新郎新婦の父親として参加する場合
新郎新婦の父親の方は、「モーニングコート」を着用するのがオススメです。
人生における大事な儀式である結婚式に、新郎新婦の父親という立場で望む場合はやはり格式高い正礼装で臨みたいものです。
モーニングコートといえば昼間の正礼装ですが、現代の日本では昼夜問わず着られるようになっています。また、そもそも夜の結婚式自体少なくなってきていますので、新郎新婦の父親はモーニングコートが第一候補と考えるのが良いでしょう。
ネクタイは白黒のストライプか、シルバーグレイ系のものをプレーンノットかセミウィンザーノットで結び下げるのがオススメです。礼装用のネクタイは生地が比較的厚めのものが多い傾向にあります。ダブルノットやウィンザーノットなどの結び目が大きくなりがちな締め方は避けたほうがすっきりした着こなしにつながります。
参考:結婚式での父親の服装マナー&モーニングの着こなし|オーダースーツ基礎知識
一般ゲストとして参加する場合
結婚式に一般ゲストとして招待された場合には、「礼装用ブラックスーツ」がオススメです。
白無地のシャツにシルバータイ、黒の革靴をコーディネートするのが基本です。物足りなく感じられる場合は白のポケットチーフを胸ポケットに挿してみましょう。ベスト付きのスリーピーススタイルであればシルバーベストを着用します。
シンプルだからこそ、コーディネート次第で厳かにも華やかにもなるのが、ブラックスーツの特徴です。しかし結婚式は新郎新婦の晴れ舞台であり、主役よりも目立ってしまうような服装は当然マナー違反となります。控えめな装いを心がけましょう。
ガーデンウェディングなどのカジュアルな結婚式では、ブラックスーツでは印象が重すぎる可能性があります。その場合はブラックスーツの代わりにダークスーツを用いるのがおすすめです。
礼服の着こなし【弔事編】
続いて、弔事における礼服の着こなしについてご紹介いたします。
喪主を務める場合
喪主を務める場合は「モーニングコート」を着用するのがオススメです。
喪主は葬儀を執り行うにあたり、最も重要で責任ある立場です。故人や参列者に敬意と感謝を示す意味でも、正礼装がふさわしいと言えます。
注意しなければならないのは、シルバーではなく、黒のベストを着用することです。日本の慣習で黒のベストに白襟がつけられている場合は必ず外しましょう。アクセサリー類は身につけず、サスペンダー、ネクタイ、靴、靴下は黒で統一します。
一般弔問として参列する場合
一般弔問として通夜や葬儀に参列する場合は、「ブラックスーツ」が基本です。
ベストを着用する場合は、スーツと共地の黒無地を用い、白無地のシャツに黒無地のネクタイを合わせます。カフリンクスやポケットチーフといった装飾品は使用を控えましょう。
ただし、故人が亡くなってすぐに執り行われる通夜に限っては、ダークスーツなどのいわゆる「平服」で参列してもよいとされています。平服で参列する場合にも、華美な色やアクセサリーを用いることは控え、お悔やみの場にふさわしい装いを心がけましょう。
礼服選びのポイント
実際に礼服を購入する際の3つのポイントをご紹介いたします。以下は、どの衣服を選ぶにあたっても重要ですのでぜひ参考にしてみてください。
体型に合ったものを選ぶ
最初のポイントは、体型に合ったものを選ぶということです。
スーツ一般に言えることですが、適切なサイズを着用することで、装いが引き締まります。そして、整った身だしなみは「敬意をする」という目的にも繋がります。
冠婚葬祭や式典の場では、長時間同じ姿勢であったり、緊張感を伴ったりすることが多く、普段と比べて体に負担がかかりがちです。体型に合っていればそのストレスを軽減することができます。
既製品で合うものが見つからなければ、オーダーメイドに頼るのも良いでしょう。オーダースーツは、ウエストや袖丈といった箇所のサイズ調整ができるため、より良いフィット感を得られます。
参考:スーツはサイズ感が命!|正しいスーツ選びのチェックポイント|オーダースーツの基礎知識
「礼服地」を使用したものを選ぶ
続いてのポイントは、礼服地を使用したものを選ぶということです。
礼服地として用意された生地とその他の黒無地では、色や質感が異なります。購入する際は、ふさわしい生地が使われているか確認が必要です。
一見しただけでは区別がつきにくいこともありますので、迷った場合は遠慮なく店舗スタッフに聞いてみましょう。
流行に左右されないシルエットを選ぶ
最後のポイントは、流行に左右されないシルエットを選ぶということです。
礼服はその性質上、他の衣服と比べて着用頻度が少なく着用期間が長くなりがちです。そのため、流行に合わせた極端なシルエットのものを購入すると、数年後には時代遅れの服装に見えてしまうことがあります。極端な衣服は会場で悪目立ちする危険性もはらんでいます。
流行に左右されないシルエットとは、体に合わせた自然なラインと適度なゆとりを持つシルエットのことです。ご自身の体型にあったもの選ぶことにも繋がりますので、合わせて押さえていただければ幸いです。
まとめ
礼服は人生の特別な節目や社会的な儀式において、自らの品格と敬意を表す重要な服装です。単なる衣服を超えた、深い文化的意味合いを持っています。
今回の記事が、そんな礼服という文化を現代においても適切に、そして洗練された方法で表現するお手伝いとなれば幸いです。
監修者
小林英毅(銀座英國屋 代表取締役社長)
1981年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。 オーダースーツ銀座英國屋の3代目社長。 青山学院大学ファッションビジネス戦略論・一橋大学MBA・明治大学MBA・ネクストプレナー大学にてゲスト講師。 銀座英國屋は、創業80年。東京銀座・オークラ東京・大坂梅田・大阪あべのハルカス・京都に店舗展開。
ビジネスウェアを選ぶ際の「どなたから、信頼を得たいか?」という視点を軸に、オーダースーツについて、お役に立つ情報をお届けいたします。
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