オーダースーツ 銀座英國屋コラムスーツはサイズ感が命!|正しいスーツ選びのチェックポイント|オーダースーツの基礎知識
スーツはサイズ感が命!|正しいスーツ選びのチェックポイント|オーダースーツの基礎知識
「スーツはサイズ感が命」と言われます。
上質な生地を使用し、卓越した技術で縫製されたスーツも、それでだけでは着用する方にとって「良いスーツ」とは言えず、「サイズが身体に合っている」ことが大切なポイントとなります。
しかし、「身体に合ったサイズ」とは、どういったものでしょうか?
今回のコラムでは、この「スーツのサイズ感」についてご説明いたします。
目次
サイズ感のチェックの前に…「どなたからの信頼が必要か?」
サイズ感のチェックの前に必要なことは「どなたからの信頼が必要か?」を確認することです。
スーツは、「相手に敬意を示し、信頼を得る」ために着るもの。
ただし、世代によって「身体に合ったスーツのサイズ感」は異なるため、お会いする方の感覚に合ったスーツ選びをすることが、相手に敬意を届ける1つのポイントとなります。
世代によるスーツのサイズ感の違いとは、具体的には、ジャケットの襟幅・着丈・ゆとり具合、ズボンのゆとり具合・裾丈などに顕著に現れます。
例えば、ジャケットの着丈は、20・30代にとっては「お尻が見える着丈も今は普通」です。
しかし、50歳代以降の方には、「お尻を見せるなんて失礼だ」と違和感・抵抗感を覚える方も多くいらっしゃいます。
ですから、サイズ感をチェックする際には「どなたから見て良いサイズ感か?」という視点が必要です。
そして、これを考えるキッカケとして「どなたからの信頼が必要か?」を考えてみましょう。
本稿では「エグゼクティブ層から見た適切なサイズ感」を解説
本稿では、80年以上に渡り、エグゼクティブ層の方より支持されてきたオーダースーツ-ブランド「銀座英國屋」として、エグゼクティブ層から見た
確認がしやすい最低限のチェックポイントを解説いたします。
(フルオーダースーツの老舗ブランドとして、サイズ感のチェックポイントを、深く・細かくご紹介することも可能です。
ご興味がある方は、メンズ無料オーダー体験(メンズのオーダースーツの無料相談+フィッティング体験)をご利用ください)
スーツのサイズ感のチェックポイント
スーツの上部から順にご説明します。
ジャケットの後ろ襟が、首の後ろにフィットしている
スーツ業界のみならず、アパレル業界には「3首」という専門用語があります。3首とは「首、手首、足首」を指し、この3点がファーストコンタクトの際、注視されることから重要とされています。
WEB会議では、胸から上が切り抜いて表示されるため、「3首」の中でも「首」の重要性がさらに増しました。
そのような中では、ジャケットの後ろ襟が、首の後ろにフィットしているかは大切なポイントです。
フィットせずに、首の後ろから離れている(襟が抜けている)・押さえつけられすぎてシワになっている場合、スーツが着用者の姿勢・肩の形状などと合っていないサインです。
ジャケットの肩幅は、軽くつまめる程度のゆとりがある
ジャケットの肩山と自分の肩のトップ位置がちょうど合っているのがジャストフィット。目安は、ジャケットの肩先を軽くツマめるユトリがあることです。
20・30代の流行では肩幅を狭くしますが、狭くしすぎると、二の腕の上部に凹みジワが出てしまい、腕が動かしにくくなり、また肩こりの一因となります。
ジャケットの肩が、デコボコしていない
「スーツは肩で着る」と言いますが、肩の形状に、ジャケットが合っていないと、肩のラインがデコボコしてしまいます。
ジャケットの前身に、余分なシワ(たすきジワ、引かれジワ)が出ていない
ジャケットの前身(前から見える、胴体部分)に、シワは不要です。
20・30代の流行は細身ですが、タイトにしすぎると引かれジワ(斜め皺)が発生してしまい、そのほかの余計なシワの発生要因ともなります。
ジャケットのサイズ感の目安は、前釦を締めて腹部のゆとりに「こぶし一つが入るか!?」です。
ジャケットの胸が、浮き上がっていない
ジャケットの襟は、胸に吸い付いているのが良いサイズ感です。
敢えて胸の筋肉を強調するために、胸が浮き上がるようにするといったスーツの提案もありますが、エグゼクティブ層のスーツではお見受けしません。
ジャケットのアームホールで、ワキが下から押し上げられていない
アームホール(ジャケットの身頃と袖筒を繋ぐ穴)が小さかったり、その位置が身体に合っていない場合には、ワキが押し上げられ窮屈に感じることがあります。
この状態が続くと、ワキが擦れ、痛みが生じることや、ワキの血流の悪さによる肩こりに繋がることがあります。
ジャケットのアームホールが大きすぎて、腕を上げたときに、前身が過度に付いてきてしまう
ジャケットのアームホールが大きすぎる場合、腕を上げると、前身も引っ張られることになり、前見頃自体が持ち上げられ過ぎてしまいます。
この状態ですと、肩・腕に無駄にスーツの重さが掛かってしまうため、やはり肩こりの発生に繋がります。
もちろん前項の通り、小さすぎてしまうと、痛みや肩こりを発生させてしまうため、「適度な大きさ」にする必要があります。
なお、アームホールの不具合は修理が難しいものです。というのも、穴を広げる・小さくするは、物理的に無理な場合があるためです。
(ちなみに銀座英國屋では「肩回りを楽にするフィッティング」を目指す中で、アームホールの大きさ・位置を重視しています。そのため、スタイリスト(接客担当)とは別に、フィッティング専門技術者を育成し「肩まで外すフィッティング」を開発・導入しています。)
ジャケットの背中に、余計なシワが出ない。(抱きジワは必要)
ジャケットの背中にも、前身と同じく、シワは不要です。
ただし、肩の付け根の背中側には、抱きジワという縦のゆとりが必要です。この抱きジワが無い場合、腕を前に出す余裕が無くなり、肩の位置まで上げることもできなくなります。
ジャケットの裾が、お尻の下線ピッタリ~1.5cm上
昔は、「お尻が出るのは失礼だ」とされており、ジャケットの着丈は、お尻を完全に隠す長さでした。
今は、お尻の下線ピッタリ~1.5cm上が、良いサイズ感です。(※足の長い方については、お尻の下線から1.5cm上でも、ジャケットが短く見える場合もあります。)
20・30代の流行として「お尻が完全に出る着丈」もありますが、エグゼクティブ層ではお見掛けしません。
袖丈の長さはワイシャツが覗く
袖の長さはワイシャツが1~1.5cmぐらい出るくらいの長さが適当です。
ワイシャツが覗かないほど袖が長いと、袖が肩からスーッとまっすぐ落ちずに、手首でたまってしまい、とてもだらしなく見えてしまいます。
また、ワイシャツが覗く袖丈の長さは、直接に袖口と手首とが接触することはないので、手首皮脂による袖口の汚れ防止にも役立っています。
ズボンのウエスト部分に引かれシワ・余りジワが無い
ズボンのウエストにもシワは不要です。
「細身に見せたい」というご希望がある場合には、ズボンのウエスト部分を絞るよりも、テーパード(ヒザ下を絞る)にする方がオススメです。
というのも、ズボンのウエスト部分は、ジャケット・ベストで隠れ、さほど目立たないためです。
逆三角形のイメージで、下に行くほどに細くなると、細身に見えやすいものです。
ズボンの尻ぐりが、尻に食い込んでいない
ズボンの尻ぐりが、お尻に食い込んでいるのは、見栄えの良いものではありません。
また、極端な食い込みはゆとりが少ないため、座った瞬間、尻繰りの縫い線から裂けてしまうこともあります。
ズボンのセンター(クリース線)が、まっすぐ降りている
ズボンのセンターライン(クリース線)が、まっすぐ降りているかは、サイズ感とは、若干異なりますが、足長に見える要素ですので、ぜひご確認ください。
O脚やX脚の方の場合は、ご相談ください。
ズボンの裾が、ハーフクッション
ズボンの裾(足首)は、前述「3首」に当たる部分でもあり、バランスが大切です。
そして、足首と靴の境目が目立たない方が、足長効果があるという意味でも「ハーフクッション(スーツの裾が靴の甲に少し当たり、少しシワが出る長さ)」がオススメです。
20・30代に見られる、ノークッション(スーツの裾が靴の甲に当たらない長さ)や、靴下が見える長さは、エグゼクティブ層では、お見受けしません。
カジュアルウェアでは、「3首」の足首を敢えて出してスタイリッシュに見せるテクニックがありますが、ビジネスウェアとしては、崩し過ぎ感があり、オススメできません。
なお、裾幅が狭い場合、ハーフクッションが難しくなるため、ノークッションも一つの選択肢となります。
ベストの後ろ襟が、首の後ろにフィットしている
ジャケットと同様に、ベストも、後ろ襟が首の後ろに吸い付いているのが、良いサイズ感です。
ベストの着丈は、ベルトが隠れる長さ
ベストの着丈は「ベルトのバックルは見えないようにするが、横裾からはベルトが見える着丈」が、現代での良いサイズ感です。ワイシャツ・ネクタイは、裾から見えてはいけません。
また「足長効果」を狙い「腰の位置を隠す」という意味でも、ベルト・ワイシャツ・ネクタイが隠れることは、適正なサイズ感と言えます。
実は、このベストの着丈のセッティングは、難しくなっています。
というのも、昔は「ベルト全体が隠れる長さが、良いサイズ感」とされていましたが、今は昔と比較すると、ズボンの股上が浅くなっており、それを前提に「ベルトが隠れる長さ」とすると、ベストの着丈が、長めになってしまうからです。実際、20・30代の流行で言えば、ズボンの股上は短く、かつ、ジャケットの着丈に合わせて、ベストの着丈も短くなっているため、結果的に、ベルト・ワイシャツ・ネクタイがベストの裾から見えてしまっている、という例は少なくありません。
一方で、ジャケット・ベストを脱いだ時に、ズボンの股上が長すぎるのも、今の感覚では違和感があります。
この意味でベストの着丈については「ベルトのバックルは見えないようにするが、横裾からはベルトが見える着丈」がおすすめです。
なお、ズボンの股上が浅く、ベルトのバックルを見えないようにするのも難しい場合は、ベストの着丈を長くするよりは、「ベルトのバックルは見せるが、ワイシャツは見えないベストの着丈にする」という着丈が良いでしょう。そして、ネクタイの長さは、本来、ベルトのバックルの上端・下端の間が良いのですが、この場合には、少し短めにして、ベストの下からネクタイが出ないようにします。
裾の話題から少し広げますが…ベルトをすると、ベストの裾部分が、ベルトによって、どうしても膨らんでしまいます。
これが気になる方は、腰骨でシッカリと止まってズリ落ちてこないサイズのズボンを履くか、サスペンダー(ブレイシーズ)を活用し、ベルトをしないでも済むようにされることを、おすすめします。
注意:同じブランドといっても、ずっと同じサイズ感とは限らない。
ご自身にジャストフィットするサイズ感のスーツがあったとしても、そのサイズ感のスーツが、ずっと販売されているかは分かりません。
特に、既製スーツの場合、シーズンごとにデザインを見直すため、その傾向は顕著です。
また、オーダースーツであっても、パターンオーダー・イージーオーダーは、数年に一度、基となるパターンの見直しが入るため、フィットするサイズ感のスーツが提供され続けるかは、少し不安が残ります。
修理の注意
「修理すれば、全て直る」というワケではない。
単に「大きくする・小さくする」「長くする・短くする」といった修理は、可能です。
しかし、「シワ」「肩のデコボコ」「後ろ襟が、首の後ろから離れている」といったことは、様々な要因が絡まるため、修理が難しいケースもあります。
例えば、肩は、筋肉の付き方、肩の付き方、首の付き方が、人それぞれによって異なります。このため、肩幅を大きくor小さくすれば、全て解決するというわけではありません。全体的な縫製を見直す必要があります。
このため、「シワ」「肩のデコボコ」「後ろ襟が、首の後ろから離れている」といった修理は難しくなります。
修理は、そのスーツブランドに相談する。
スーツの修理をお願いする際には、そのスーツブランドにお願いするのがオススメです。
というのも、スーツブランドによって、縫製方法・副素材(芯地など)が異なるためです。
もちろん、いわゆる「スーツの修理屋さん」でも、修理は可能です。しかし、数多くあるスーツブランドごとの縫製方法・副素材までをも熟知した上で、修理方法を決められるかと言えば難しいでしょう。
このため、スーツの修理をお願いする際には、まずは、そのスーツブランドに相談してみましょう。
修理の見極めは、技術者にお願いする
スーツの修理箇所を見極めることは、とても難しいものです。
上述の通り、ジャケット袖丈・ズボン裾丈の修理であれば簡単です。また、単に大きくする・小さくするといったことも、対応可能です。
しかし、「シワ」「肩のデコボコ」といったことは、様々な要因が絡まり合うため、どのように修理するべきかは、専門技術者でなければ、判断が難しいものです。
スーツブランドによっては、接客担当が、フィッティングも兼務することがありますが、なるべく、技術に詳しいスタッフに見極めをお願いすることを、おすすめします。
(銀座英國屋では、接客担当とフィッティング技術者を分けており、修理箇所の見極めは、フィッティング技術者が担当します。)
さいごに
いかがでしたでしょうか?
ぜひ、ご自身にとって、良いサイズ感のスーツを見付け、カッコよくスーツを着こなし、信頼を得られる一助となれば幸いです。
監修者
小林英毅(銀座英國屋 代表取締役社長)
1981年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。 オーダースーツ銀座英國屋の3代目社長。 青山学院大学ファッションビジネス戦略論・一橋大学MBA・明治大学MBA・ネクストプレナー大学にてゲスト講師。 銀座英國屋は、創業80年。東京銀座・オークラ東京・大坂梅田・大阪あべのハルカス・京都に店舗展開。
ビジネスウェアを選ぶ際の「どなたから、信頼を得たいか?」という視点を軸に、オーダースーツについて、お役に立つ情報をお届けいたします。
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