オーダースーツ 銀座英國屋コラムスーツにオススメのコートとは?|種類・色・適正サイズまで徹底解説!
スーツにオススメのコートとは?|種類・色・適正サイズまで徹底解説!
寒くなってくると、スーツの上に着るコートが欲しくなります。しかし、いざ購入しようとすると様々なコートがあり、どのようなコートを購入すれば良いか分からない方も多いと思います。実際に「スーツに合うコートを教えて欲しい」というご意見もよく頂戴します。
そこでこのコラムではスーツに合うコートの種類、サイズ、色などを詳しく解説します。なお、スーツに合うコートの流れを先に紹介すると以下の通りです。
・スーツに合わせるコートの種類
・チェスターコート
・ダブルチェスターコート
・シングルチェスターコート
・ステンカラーコート(バルマカーンコート)
・トレンチコート
・スーツに合わせるコートのサイズ感
・コートの着丈
・そで丈
・スーツに合わせるコートの色・柄
・基本はグレー・ネイビーのコート
・最初の1着目は無地のコートを
・コートの生地
・オーダーもオススメ
・スーツに合わせるコートの着方・注意点
・建物に入る際は入り口で脱ぐ
・袖口に付いているタグは外す。
・マフラー、ストールで差をつけるのも一案
このコラムのポイントをしっかり押さえることで、スーツに合わせるコートの参考になれば幸いです。
スーツに合わせるコートの種類
コートには様々な種類がありますが、ビジネスシーンでスーツの上に着るコートはある程度限られてきます。以下で代表的なものを挙げて解説します。
チェスターコート
ビジネスシーンでスーツに合うコートの代表格がチェスターコートです。正式には「チェスターフィールドコート」といい、これは19世紀頃のイギリスの政治家のチェスターフィールド伯爵の名前が由来です。チェスターフィールド伯爵は現代でいうファッションリーダーのような存在として知られており、同氏がフロックコートをベースにして自分の好みのデザインでオーダーしたのが起源とされています。
ちなみにフロックコートというのは18世紀頃の男性の礼装用コートのことを指します。コートという名称ですが、ボタンはダブルで現代のスーツのジャケットの着丈を長くしたようなものでした。
このチェスターコートはフォーマル度が高く、現代でもスーツに合わせるコートとして広く着られています。
なお、デザインの違いにより、ダブルチェスターコートとシングルチェスターコートがあります。どちらもかっちりとしていて精悍な印象を与えます。また着丈もしっかりとあるので、着用することで視覚的に体を縦長でスタイル良く見せることができます。
以下ではそれぞれにコートについて具体的に解説します。
ダブルチェスターコート
ボタンが横2列のチェスターコートをダブルチェスターコートと言います。襟は上襟と下襟(ラペル)で構成されていて、下襟が大きく襟の先端(剣先)が上方向に尖った形状をしているものが多く、この下襟の形状をピークドラペルと呼びます。ダブルスーツの襟もピークドラペルのものが一般的であり、これと同じ襟型となります。
ダブルチェスターコートはラペルにしっかりとしたボリュームがあるので、カッチリとしてクラシックな見た目になり、また、前身頃の重なる部分が大きく取られていて、重厚感、格式ある印象になります。
どなたが着てもクラシックで格好いい雰囲気になり、このダブルのコートはダブルスーツと同じようにお腹周りをしっかりとホールドしてくれますので、大柄な男性にもオススメです。
シングルチェスターコート
ボタンが1列のチェスターコートをシングルチェスターコートと言います。ダブルチェスターコートと同じく、襟は上襟と下襟(ラペル)で構成されています。下襟の形状は襟先が下方向に下がっているものが多く、この襟型をノッチドラペルと呼びますが、シングルスーツの襟と同じ形なのでイメージしやすいのではないでしょうか。
シングルチェスターコートもラペルにボリュームがあるので、ダブルチェスターコートと同じように、カッチリとしてクラシックな見た目になります。ダブルチェスターコートと比べると前身頃の合わせ部分が少なく、着ることで縦長なシルエットが強調されます。そのため、スッキリとした印象に見せたい方にオススメです。
ステンカラーコート
ステンカラーコートは襟部分に襟腰(台襟)と呼ばれる立て襟がついたコートを言います。襟腰の後ろ側(背中側)が高く、前方向に行くにしたがって低くなっているのが特徴です。チェスターコートのように下襟はなく、第一ボタンまで留めると襟周りがコンパクトな見た目になります。また、第一ボタンを開いても、チェスターコートと比べると開き部分の面積が小さいため、控え目で上品な雰囲気を醸し出します。そのため、スーツと合わせると品良くエレガントな印象を与えます。
また、ステンカラーコートの袖はラグランスリーブという形状のものが多いのも特徴の一つです。これは、襟の付け根から袖下にかけて、斜めの切り替えが入った仕様の袖を言います。ラグランスリーブの袖は肩から袖先が一体となったデザインであるため、腕を動かしやすい利点があります。
ステンカラーコートのボタンは縦1列についていますが、ボタンを全て留めると第一ボタン以外は隠れる仕様になっています。これは前身頃のボタンホール(ボタン穴)がある側が二重になっており、下側にだけボタン穴が空いているためです。この仕様を「比翼仕立て」と呼びます。
このように①台襟がある、②袖がラグランスリーブの仕様になっている、③比翼仕立てであるものがステンカラーコートですが、最近では台襟が付いている仕様であればステンカラーコートと称することもあります。
ちなみに「ステンカラーコート」は和製英語であり海外では通じません。正確には「バルマカーンコート」(Balmacaan Coat)と呼びます。バルマカーンはスコットランドの地名が由来だと言われています。
このステンカラーコートという名称は諸説ありますが、襟の形状が台襟の上部分から下に向かっていることから「スタンド・アンド・フォール・カラー」が変化して「ステンカラー」になったと言われています。
トレンチコート
スーツに合わせるコートとしてよく挙げられるのがトレンチコートです。トレンチコートは第一次世界大戦時にイギリス軍が塹壕(敵の銃撃などから身を守るために陣地の周りに掘った溝のこと)での使用に耐えるために悪天候用の防水コートを作ったのが起源とされています。
このようにミリタリー由来であることから、トレンチコートには肩部分に銃や双眼鏡をかけるエポレットや右胸部分にガンフラップと呼ばれるライフル銃を発泡した際に衝撃を和らげる当て布など、随所に戦闘下での仕様を想定したディテールが施されています。
コットン素材であるため、ウール素材を基本としたチェスターコートに比べると保温性は下がりますので、春先や秋口のようなスーツだけでは少し肌寒い気候で重宝します。
色はベージュのものが多く、またコットン素材の印象からもチェスターコートと比べるとややカジュアルな印象になります。
スーツに合わせるコートのサイズ感
スーツは適正なサイズ感で着用することが重要ですが、これはコートも同じです。美しいシルエットはサイズ感が合ってこそ実現します。ここではコートのサイズについていくつかポイントを挙げながら解説します。
コートの着丈
一般的にコートの着丈は長いほどフォーマル、短いほどカジュアルな印象になります。トレンド、流行によって求められる着丈も変わりますが、膝丈から膝上10cmくらいの着丈のコートだと流行り廃りなく長く使えます。
大事なのはコートを着たときにスーツの上着ジャケットがきちんと隠れることです。コートを着た時に中に着ているジャケットの裾が見えると不恰好になりますので、気をつけたいところです。
コートの身幅
ビジネスシーンでのコートはスーツの上に着用するため、ある程度ゆとりが必要です。中には「スリムに見せたい」ということで、タイトなシルエットのコートを着る例がありますが、コートがピタピタだと中に着ているスーツにシワが寄ったり、歩くたびにスーツとコートの裏地が擦れて、スーツ生地を傷めたりするので注意が必要です。
適切なコートのサイズ感を知るためには、実際にスーツを着た状態でコートを試着してみるのがもっとも分かりやすいです。スーツの上にコートを着て体を動かしたときに、中のスーツが引っ張られたり、突っ張る感覚がなければ大丈夫です。あくまで目安ですが、コートのウエスト幅は実寸のウエスト幅より10cm程度は必要だと言われています。
そで丈
コートの袖丈についてはあまり気にしない人が多いですが、意外に大事なポイントです。前提としてスーツのジャケットの袖丈について見てみると、ジャケットの袖丈は中に着ているシャツが1cm程度覗く長さが適正とされています。
逆にコートはそのシャツを隠す必要があります。そのため、コートの袖丈はシャツの袖丈よりも長くする必要があります。実際にはコートを着用したときにコートの袖先が手の甲の真ん中あたりに位置するくらいであれば問題ありません。
スーツに合わせるコートの色・柄
同じデザインのコートでも色や柄が異なると別のものに見えます。ここではスーツに合わせるコートのオススメの色や柄について解説します。
基本はグレー・ネイビーのコート
ビジネススーツの基本色はネイビーとグレーとされています。そのため、コートも同じくネイビーやグレーのものを持っておくとコーディネートがしやすくなります。また、スーツは複数の色をお持ちの方も多いと思いますが、コートを同じ数だけ揃えるのは現実的には難しいでしょう。
そのため、どんなスーツにも合わせやすいネイビーやグレーといったベーシックなコートがオススメです。
なお、キャメルカラーのコートも上品な印象がありオシャレですが、ネイビーやグレーのコートと比べるとカジュアルな印象が強いため、使える場面が限られてしまいます。
最初の1着目は無地のコートを
コートを新調する際、明るい色や目立つ柄など、ついオシャレなものに目が向いてしまいがちです。しかし、コートは洋服の中でもっとも生地面積が大きいため、派手なものや柄が入ったものを選ぶと思っているより目立ってしまいます。
コートに柄が入っている場合、中のスーツにも柄が入っているとごちゃごちゃした見た目になり、コーディネートのバランスが悪くなってしまいます。また、柄物のコートを選ぶと中に着るスーツは自ずと無地のみになり、選択肢が狭まります。
1着目に選ぶなら、まずは無地のコートがオススメです。もしストライプ柄やチェック柄のコートが欲しいなら2着目以降で新調されると良いでしょう。
コートの生地
コートは洋服の中でもっとも面積が大きい衣類です。そのため、生地の良し悪しがダイレクトにみる人に伝わります。
コートを選ぶにあたってはウールやカシミアなど毛並にツヤがあり、上質なものがオススメです。また、一度新調すると長く使うコートでもあるので、洋服の中ではしっかりと投資をしたいところです。
オーダーもオススメ
これまではコートのデザインや適正なサイズ感などをお伝えしましたが、コートのデザイン、色、サイズ感、生地のクオリティなど全てが希望に適ったコートを探すのは困難な作業です。
そのように考えると既製品のみから探すのではなく、オーダーをするというのもオススメです。コートは一度作れば長きにわたって愛用できる洋服です。自分が希望するデザインや色、そして生地選びまで厳選した一着はきっと愛着も湧くことでしょう。
参考として、コートではありませんがスーツのオーダーに関して下記もご参照ください。
初めてのオーダースーツ|注文前に知っておきたい7つのポイント
スーツに合わせるコートの着方・注意点
ビジネスシーンで使うコートについては着用の仕方についても気をつけたいところです。ここではコートの着方や注意点などについて解説します。
建物に入る際は入り口で脱ぐ
コートは「外套」(がいとう)とも呼ばれるとおり、屋外で寒さや雨風をしのぐための洋服です。屋外でコートを着ていると知らないうちに塵やホコリなどがコートに付いていることがあります。そのため、建物の中でコートを脱ぐ行為は室内にホコリが出るためマナー違反であるとされています。
コートを着て訪問先の建物や家屋に向かう際は、コートは入り口手前か玄関ホールで脱いで腕にかけて持っておきましょう。専用のクロークがあれば、もちろん預けて構いません。
袖口に付いているタグは外す。
既製品のコートには袖口に生地ブランドや品質表示(ウール100%やカシミヤ100%)のタグが付いていることがあります。そのタグを付けたままコート着ている人が多いですが、これはNG行為です。タグは生地の四隅を軽く纏ってあって、簡単に取り去ることができるように付けられていますので、下ろす前に取っておきましょう。
マフラー、ストールで差をつけるのも一案
コートやスーツが全てネイビーやグレーといった色だと全体のコーディネートが暗く見える場合があります。特に冬場は暗い色の洋服が多くなるので、その傾向は顕著です。その際に例えば水色やベージュのマフラー、ストールなどを巻くと暗いトーンの中に明るい色が入り、差し色効果でメリハリのあるコーディネートになります。
また、顔周りに明るい色のアイテムが入ると、レフ板効果で顔写りも明るくなります。このようにコートがベーシックな分、ストールやマフラーに明るい色や柄物を持ってくるのも一案です。
ただし、あくまでビジネスシーンで使うものなので、目立ちすぎるもの、派手なものは避けた方が無難です。また、コート同様に屋内に入るときにはマフラーも外すようにしましょう。
まとめ
このコラムではスーツに合わせるコートについて詳しく解説しました。
なお、スーツに合わせるコートの流れを改めて紹介すると以下の通りです。
・スーツに合わせるコートの種類
・チェスターコート
・ダブルチェスターコート
・シングルチェスターコート
・ステンカラーコート(バルマカーンコート)
・トレンチコート
・スーツに合わせるコートのサイズ感
・コートの着丈
・そで丈
・スーツに合わせるコートの色・柄
・基本はグレー・ネイビーのコート
・最初の1着目は無地のコートを
・コートの生地
・オーダーもオススメ
・スーツに合わせるコートの着方・注意点
・建物に入る際は入り口で脱ぐ
・袖口に付いているタグは外す。
・マフラー、ストールで差をつけるのも一案
このコラムの重要なポイントをしっかり押さえることで、スーツに合わせるコートの参考となりましたら幸いです。
監修者
小林英毅(銀座英國屋 代表取締役社長)
1981年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。 オーダースーツ銀座英國屋の3代目社長。 青山学院大学ファッションビジネス戦略論・一橋大学MBA・明治大学MBA・ネクストプレナー大学にてゲスト講師。 銀座英國屋は、創業80年。東京銀座・オークラ東京・大坂梅田・大阪あべのハルカス・京都に店舗展開。
ビジネスウェアを選ぶ際の「どなたから、信頼を得たいか?」という視点を軸に、オーダースーツについて、お役に立つ情報をお届けいたします。
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