オーダースーツ 銀座英國屋コラム三星毛糸のオーダースーツ生地は尾州発で世界を唸らせるハイクオリティなウーステッド
三星毛糸のオーダースーツ生地は尾州発で世界を唸らせるハイクオリティなウーステッド
世界の業界関係者が注目するメイド・イン・ジャパンの代表的な毛織物ブランドが、三星毛糸です。明治20年に始まり、135年を迎えた長い歴史と一徹なものづくりが、日本の尾州の地から三星毛糸を世界に羽ばたかせました。
今回の記事では世界を視野に入れて、尾州で生地を織り続ける三星毛糸の歴史と魅力について詳しくご紹介します。日本が誇るテキスタイルでオーダースーツを仕立てることに興味があるみなさんは、ぜひ参考にしてください。
三星毛糸とは?
三星毛糸とは明治20年創業の135年の歴史を誇る、尾州を拠点とする毛織物ブランドです。尾州とは岐阜県羽島市や愛知県一宮市、稲沢市などを中心とした日本最大の毛織物産地で、英国のハダーズフィールド、イタリアのビエラと並んで世界3大毛織物産地と呼ばれています。
三星毛糸は木曽川の良質な水の恵みを享受し、伝統の技術と革新の姿勢で素晴らしいテキスタイルを生み出してきました。今や世界的な毛織物ブランドとして認められています。
とりわけエルメネジルド・ゼニア社から「メイド・イン・ジャパン・プロジェクト」に選出されたことは、今も記憶に新しい華々しい快挙です。
低速織機「ションヘル」によるものづくりが特徴
三星毛糸はクオリティが高い紳士服地用のオーダースーツ生地を企画・製造しています。
そんな三星毛糸では、製造から40〜50年経つ古い織機を今も丁寧に使い続けています。古い織機には人の手による工夫の余地が多く、多種多様で繊細な生地を織ることが可能だからです。その中でも、オーダースーツ向けにはシャトルタイプの織機である「ションヘル」も活用し、低速による手織り感覚で織り上げています。
高速織機で1日かけて1反分の生地(約50メートル)を織るとすれば、ションヘル織機では4日間かけてじっくり織り上げるということです。
ションヘル織機はもちろんすでに生産されていません。三星毛糸の高級毛織物製造は、そんなクラシックな機械の特性を活かしつつ、機械の調整や修理ができる職人たちによって支えられています。
ちなみにションヘル織機が故障した場合も、部品はもはや流通していません。そのため、既に役目を終えて使われていないションヘル織機から、必要な部品を外して修理するのです。
デジタルの時代に逆行するようなアナログな技法ですが、だからこそ、高速織機では決して味わえない深みのある質感が生地に備わるともいえるでしょう。
熟練した職人が何度もピッチ測定と打ち込み測定を繰り返しながら、反物を織り上げます。それを丹念に1反ずつ検査し、糸切れや糸抜け、織疵など細かな不具合も見逃さずに次の工程に進めるのが生産部です。
選りすぐりの原料から紡ぎ出された糸をもとに、時間と手間をかけて作る織物の風合いには素晴らしい味わいがあります。それだけでなく、長年に渡って着用してもなかなか型崩れがしない丈夫な服の素となるでしょう。
250種類を超える色糸が生み出す多様な世界観
紳士服用のオーダースーツ生地にも多くの素材の種類があります。ウールにモヘヤ、カシミヤ、アンゴラ、アルパカ、リネン、コットン、シルクなどがあって、その上それらの素材をブレンドした2者混、3者混もあります。
また、使用する糸の原料が本来持つ繊維の細さ(スーパー表記)や糸自体の細さ(番手表記)なども掛け合わされ、無限とも言える種類の織物が存在し、これからも生まれてきます。
さらに三星毛糸では250色を超えるオリジナルの色糸(デコレーション糸)によって落ち着いた色目から淡い色目、鮮やかな色目などの豊富な色彩のスパイスを表現できます。それをストライプやチェックほかさまざまな柄に落とし込みます。
三星毛糸が世界に誇る希少良質素材たち
三星毛糸は生地に織り上げるのが一般的に困難とされる素材も、卓越した技術力で特性を損なわずにオーダースーツ生地として仕上げています。それらの一部を紹介しましょう。
ピュアーキッドモヘヤ
たとえば「夏のカシミヤ」とも呼ばれる高級素材キッドモヘヤです。キッドモヘヤは生後6ヶ月以内の仔山羊のアンゴラ山羊から採取される最高級夏素材で作られます。
モヘヤの特性は清涼感とハリ・コシです。混率が高いほどその特性は強まります。しかしながらキッドモヘヤ単糸はその繊細さゆえに強度が求められる経糸としては使うことができず、キッドモヘヤ100%の生地を製織することは技術的に不可能と言われていました。
そこで三星毛糸では単糸を水溶性素材で補強することにより強度をもたせて製織し、整理工程でその水溶性素材を洗い流す方法を開発したのです。
そうやって世界で初めて、100%単糸モヘヤの「ピュアーキッドモヘヤ」を完成させました。それにより、キッドモヘヤの繊細さを最大限に活かした生地となっています。
ピュアーウーステッドカシミヤ
カシミヤは「繊維の宝石」と言われるほど手触りが柔らかく、吸湿性や保温性に優れています。しなやかな仕上がりのカシミヤを100%使った、細番手素材の実現を望む人は多いでしょう。
しかしながらカシミヤ繊維はそのあまりの繊細さゆえに着用するうちに型くずれや毛玉、毛羽立ちが発生してしまうものばかりでした。
しかし三星毛糸ではカシミア独特の風合いを損なわないまま原糸に強く撚りを加える技術の開発に成功し、長く安心してご着用いただけるピュアーウーステッドカシミヤを完成させています。
ピュアーシルク
美しいドレープ性や深みのある光沢を湛えるシルク織物ですが、繊維が細すぎて細番手は糸切れしやすく静電気も起こります。そのため、織機に細番手のシルク糸をセットすること自体が至難の業です。
三星毛糸では熟練職人による機械の微調整および湿度管理などを徹底することによって、細番手シルク織物も綺麗な状態で仕上げることができます。
キヴィアックやグァナコ
ほかにもキヴィアック(最終氷期を生き延びたジャコウウシとも呼ばれる古代動物)やグァナコ(主に南アメリカの高地に生息しているラクダ科の動物)などの希少動物の獣毛素材も、三星毛糸は扱います。
それぞれの獣毛の性質に合わせた加工法で、特性を活かしたまま生地としての製品化を実現してきました。
三星毛糸の評価
国際的な支持を得ているファッションブランド「マスターマインド・ジャパン(mastermind JAPAN)」や老舗テーラーの鑑で皇室御用達のお店など、世界最高レベルの高級生地に触れてきた人たちから、三星毛糸は高い評価を得ています。
超一流の人たちから評価されているのは、おおむね以下のようなポイントです。
・極めて誠実に作られた高品質な生地
・長い期間愛用できる耐久性がある生地
・表示義務はない小数点以下の化繊などの混率も明記する真摯な姿勢に感銘
・工業製品としての生地の付加価値を徹底的に追求するものづくり
・世界最高水準に迫る品質の生地と一歩退いた価格のギャップが驚異的
三星毛糸の歴史
三星毛糸は明治20年(1887年)、綿の艶つけ業として創業されました。明治39年(1906年)には尾州地区において「艶利」と称して「尾州縞」の艶付業を手がけ始めて評判を呼びます。
その後は毛織物の染色・整理・加工の技術を磨いて昭和6年(1931年)に法人化しました。戦後には梳毛紡績工場を建設し、高度成長期には紳士服のイージーオーダー工場も建てるほどに発展します。
昭和43年(1968年)には後の平成天皇となる皇太子殿下と美智子妃殿下が三星毛糸に御行啓を賜るという栄誉に浴しました。
その後1970年代にはケミカル分野にも参入し、1980年代には洋菓子の分野にも参入します。1999年にはウールの工房博物館である「テキスタイル館」を開設しました。2005年に羽島市の現社屋に、三星グループの業務全般を集約します。
2010年に現在の岩田真吾社長の体制となり、老舗の伝統を守りつつ現代企業へと急速に変貌を遂げていく様には、まさに眼を見張るものがあります。
2012年、就任3年目にして三星毛糸をプルミエール・ビジョン・パリに出展させ、2015年には自社ブランド「MITSUBOSHI1887」を東京とパリにて発表しました。
同年にアップサイクルブランド「mikketa」を始動し、さらにエルメネジルド・ゼニアの「メイド・イン・ジャパン・プロジェクト」に選出されます。
三星毛糸がおすすめな人
三星毛糸をおすすめしたいのは、日本という国の文化を愛し、世界に認められることを素直に喜べる人たちです。世界の一流品に負けない極上の生地を生み出すメイド・イン・ジャパンの誇りそのものを身にまとえます。
三星毛糸のオーダースーツ生地で仕立てたお気に入りのスーツを着用して、海外のビジネスパートナーに自信を漲らせて対峙する姿を想像してみましょう。
なお、三星毛糸と銀座英國屋の共同開発による、漆の黒を表現した最上級ブラックフォーマル生地「漆ブラック」は、ふるさと納税サイト「ふるさとチョイス」のお仕立補助券にもなっています。また銀座英國屋の各店舗では、こちらのブラックフォーマル用の生地を実際にご覧いただけます。
【3年有効】銀座英國屋 ブラックフォーマル 仕立て補助券(寄附額50万円コース)
さいごに
135年という長い年月をかけて、尾州の毛織物業者は今や世界最高峰のビッグブランドが贔屓にするほどの生地ブランドになりました。
仕事での輝かしい実績と引き換えに得た豊かさで、ふるさとを盛り上げたいみなさん。海外のビジネスパートナーに日本の銘品で仕立てたオーダースーツで向き合いたいみなさん。ぜひ、三星毛糸とパートナーシップを築いている私たち銀座英國屋にお運びください。
監修者
小林英毅(銀座英國屋 代表取締役社長)
1981年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。 オーダースーツ銀座英國屋の3代目社長。 青山学院大学ファッションビジネス戦略論・一橋大学MBA・明治大学MBA・ネクストプレナー大学にてゲスト講師。 銀座英國屋は、創業80年。東京銀座・オークラ東京・大坂梅田・大阪あべのハルカス・京都に店舗展開。
ビジネスウェアを選ぶ際の「どなたから、信頼を得たいか?」という視点を軸に、オーダースーツについて、お役に立つ情報をお届けいたします。
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