オーダースーツ 銀座英國屋コラムジョン・フォスターは英国文化に普遍性をブレンド。洗練された生地の種類と特徴を解説
ジョン・フォスターは英国文化に普遍性をブレンド。洗練された生地の種類と特徴を解説
英国生地ブランドのジョン・フォスター(John Foster)は品質の安定度が高く、テイストは英国のクラシックスーツの持ち味が底流を支えつつ、現代感覚を併せ持っています。
そのためクラシックテイストながらまったく古めかしくなく、今の時代に違和感のない洗練された品格が漂うスーツとなるでしょう。しかも価格が比較的求めやすいのも魅力です。
今回の記事では、そんな英国生地ブランドの代表格のひとつであるジョン・フォスターを紹介します。どのような背景を持つオーダースーツ生地ブランドなのかを紐解き、その生地の特徴と魅力を掘り下げ、どんな人におすすめかについても触れておきましょう。
目次
ジョン・フォスターは英国の代表的生地ブランド
ジョン・フォスターはビスポークテーラー発祥の地であり紳士服の本場である英国発の、代表的な生地ブランドのひとつです。
テイストは英国クラシックをベースにしており、汎用性も高いモダンブリティッシュなファッション性を持つ生地が中心となります。
品質に関しては、どれを選んでもまず失敗がないといわれるほど確かです。一方で、その価格は、主要な英国生地のブランドの中でも、比較的求めやすくなっています。
創業200年を超える老舗の織物業者ジョン・フォスター
およそ200年前、英国のウエストヨークシャー州ハダーズフィールドのクイーンズベリーにおいて、21歳のジョン・フォスター青年が織物商を営み始めました。それが、英国生地の代表格ジョン・フォスターの出発点です。
フォスター青年は、同州のブラッドフォードにある牧場を持つ農夫の息子でした。彼は成人するとブラッドフォード郊外の、クイーンズベリーの地主の娘と結婚します。
そしてクイーンズベリーの、後にブラック・ダイク・ミルズ(ジョン・フォスターの自社工場)を建てることになる場所にあった倉庫で、織物商を開始したのが1819年です。
その年は英国の植民地行政官スタンフォード・ラッフルズがシンガポールを、ジョホール王国のスルタンから獲得し、極東への進出を開始した年。日本では江戸時代で、折しも天文学者伊能忠敬が日本全国の測量行脚を敢行していた頃です。
毛織物商からコツコツと確実に成長
創業者ジョン・フォスター青年が当初に手がけたのは、糸を仕入れて織物職人に卸し、出来上がった生地を買い上げ、それを市場で売るビジネスでした。
仕事熱心で誠実なフォスター青年は、そのビジネスに取り組んでからわずか7〜8年で、大切な家族と暮らすための立派な邸宅を建てるほどの成功を収めます。
フォスター青年は、よりダイナミックにビジネスを展開するために、自社工場の建設を視野に入れて長期的な考えに立ちました。そしてまずはキャノン・ミルという工場を借りて、糸の紡績を始めたのが1828年です。
研究熱心なフォスター青年がキャノン・ミルでプロデュースする糸は、その品質の良さから織物職人の間で評判となり、引き合いがどんどん増えていきました。ビジネスは順調に進み、自社工場建設の資金も着実に蓄積されていきます。
1835年には、義父から取得したクイーンズベリーの、以前は倉庫があった創業の地に、満を持して自社工場の最初の部分を建てます。
また、折からの産業革命の最中である1840年代前半には、将来への投資として苦心しながら500台の最新式の織機を導入しました。この頃から子息のウィリアムが創業者の仕事のパートナーを始めます。
その後ブラック・ダイク・ミルズは敷地を広げて建て増しされていきます。品質を保ちつつ生産量を飛躍的に拡大し、クイーンズベリーでは知らぬ者などいないほどの有名な織物工場となりました。
とりわけウールのウーステッド(スーツに用いられる梳毛素材)とモヘヤ生地(アンゴラ山羊の毛から作る高級夏服素材)の品質が、毛織物業界内で高く評価されています。
ロンドン万博で栄誉に輝く
ジョン・フォスターブランドの生地の評判を象徴するかのように、1851年のロンドン万国博覧会において創業者ジョン・フォスターは、モヘヤおよびアルパカの生地で最優秀賞を、糸の紡績で金賞を受賞する栄誉に輝きました。
1879年に創業者ジョン・フォスターが逝去した後、彼の事業を産業革命の頃からパートナーとしてサポートしてきた子息のウィリアム・フォスターが、その大いなる意志を継いで経営の舵取りを担います。
20世紀を迎える時点で、自社工場の総床面積は東京ドームの約1.3倍に匹敵する15エーカーを超えていました。
その後もジョン・フォスターブランドは、ウーステッドとモヘヤのトップランナーであり続け、現在に至ります。このようにジョン・フォスターは200年以上にわたり、英国を中心として栄える絢爛な服飾文化の一端を担ってきました。
19世紀の初頭から21世紀の今日に至るまで、数多くの紳士とその人材価値を良質な服地で飾ってきた老舗織物業者こそ、ジョン・フォスターといえるでしょう。
ジョン・フォスターの生地の種類と特徴
ジョン・フォスターは老舗でありながら、現代の英国ファッション界を代表する紳士服地のブランドのひとつです。伝統的な英国クラシックの要素を現代に展開する、本格的な生地の供給を貫いています。
ここではジョン・フォスターが発信する生地の主な種類と特徴を解説しましょう。
ジョン・フォスターの存在意義、ウーステッド
ジョン・フォスターがジョン・フォスターである存在意義ともいえる生地こそ、良質なウーステッドです。
ジョン・フォスターのウーステッドは隙のないビジネススタイルを形成する、クールで現代的なモダンクラシックスーツを仕立てるために最適な素材といえるでしょう。
ウーステッドとはスーツ向けの、梳毛(そもう)素材を意味します。
羊の原毛を櫛ですくコーミング工程で、短繊維やネップ(繊維の塊)が除かれて、残った長繊維で紡がれた糸が手羽立ちのない繊細な梳毛糸です。その梳毛糸で織り上げられるのが、スーツに最適なクールな表面感があるウーステッド素材となります。
ちなみに除かれた方の短繊維やネップで紡がれた糸が、手羽立ちがある粗い紡毛糸です。紡毛糸で織り上げられるのが、防寒着のコートやスポーツジャケットを仕立てるのに向いているウーレン素材(紡毛素材)となります。
ウーレン素材の中にはフランネルのように冬向けのスーツで使用されるものもあり、ジョン・フォスターの生産する上質なフランネルも高く評価されています。
スーパー100’sを中心に最適な目付と肉厚感を実現
ジョン・フォスターの評判高いウーステッド服地で使う原毛は、スーパー100’s(繊維の直径が18.5ミクロン:1ミクロン=1/1,000ミリメートル)以上の良質素材が中心です。
それをしっかりとした打ち込みの良い目付(生地1メートルあたりのグラム数で表現する織りの密度)で耐久性を持たせ、ほどよい肉厚で織られます。
梳毛糸で織られてクリアカットされた、美しくてなめらかさもあるジョン・フォスターのウーステッドは、まるでイタリア生地のようにドレープ性にも優れているのが特徴です。
そのため、仕立てるスーツのテイストとして、ブリティッシュスタイルはもちろんですが、イタリアンスタイルにも良く合います。
控えめの色柄や無地であれば、インターナショナルスタイルやコンテンポラリースタイルにも使えるでしょう。幅広いスタイルに用いることができる汎用性の高さも、ジョン・フォスターのウーステッドの魅力です。
ロンドン万博で最優秀賞に輝いた夏服最高級素材モヘヤ
また、前述のとおりロンドン万博で最優秀賞の栄誉に輝いたジョン・フォスターの良質なモヘヤ生地は、夏用の高級服地として揺るがぬ地位を確立しています。
スキャバルと並んで名高いマーチャント(生地商社)である「ドーメル」のモヘヤをジョン・フォスターが生産していることが、いかに高品質かの証明だといえるでしょう。
アンゴラ山羊は生息地域がトルコと南アフリカ、北アメリカの一部に限られている希少種です。アンゴラ山羊の体毛には生糸のような上品な光沢があり、コシがあって比較的丈夫な繊維で、通気性も高くて夏向けの紳士服素材に適しています。
モヘアで紡いだ糸は白く輝くことから「アイス・ヤーン」の別名があります。
また、同じアンゴラ山羊でも生後6ヶ月の子山羊からとれるモヘアは、素晴らしい光沢となめらかさ、そして保湿性にも優れています。ジョン・フォスターの生地の中でもキッドモヘアと銘打たれているものがそれです。
モヘアはウールよりも繊細なので、紡績や織布に関する高い技術力がなければ生産できません。技術力を誇るジョン・フォスターならではともいえるモヘヤ素材の上品な光沢と清涼感は、「夏のカシミヤ」と呼ばれるほどの極上の風合いを湛えています。
ジョン・フォスターの生地が持つファッション性の魅力
ジョン・フォスターのウーステッドやモヘヤをメインとした紳士服地の魅力について、ファッション性の観点から詳しく見ていきましょう。
モダンブリティッシュスタイルには抜群のラインナップ
ジョン・フォスターはモダンブリティッシュスタイルのスーツを仕立てるには、申し分のないラインナップを提供してくれるブランドです。
柄行きはこれぞ英国調という感じのクラシック柄が豊富に展開され、それにとどまらず時代を反映したモダンな柄も潤沢に用意されます。
ジョン・フォスターのクラシックテイストの生地は、変わりゆくファッションの流れの中にあって、劣化することも埋もれることもありません。
常に紳士たちの「装う美学」から発せられる要求を満たし、ワードローブ用に選ばれるに足る普遍性を持った生地ブランドです。
決して型にはまったテイストには収まらず、また万人受けするように個性を薄めたテイストになるわけでもありません。英国ファッションの持つ格調の高さとエレガンスを、現在進行形で表現できるファブリックといえるでしょう。
格調を落とさずに「時代の好み」を反映
ジョン・フォスターは英国生地らしい格調の高さを、色柄や織り方だけでなく素材の本質部分であるハリやコシの良さでも表現しています。ただしひと昔前の英国生地ほどの、固さや重厚さはありません。
時代の流れで多くの人が好む軽やかさや柔らかさ、なめらかさやしなやかさも、モノづくりに反映しているのです。
その結果、固過ぎて重過ぎることもなく、やわらか過ぎて軽過ぎることもなく、絶妙にバランスがとれた仕上がりとなっています。
ジョン・フォスターがおすすめの人とは?
仕事で良いパフォーマンスを発揮し、キャリアアップしてマネジメント職の仲間入りをすると、新たに出会う人たちのまとうステータスに「格」を感じるようになるものです。それが真のクラス感といえるでしょう。
キャリアのストーリーがそのフェーズに入ったビジネスパーソンにとって、自身のスーツ選びもまた新たなフェーズに入ります。
仕事人生のフェーズの変わり目にふさわしいオーダー生地
エグゼクティブの入り口に立ち、それまでは既製品のスーツを着ていたけれど、そろそろオーダーにトライしてみようという人は多いでしょう。とはいえ、生地選びは結構難しいものです。
テーラーではたくさんの生地ブランドが名を連ねていて、その中から自分のステータスに合うものは何かを考えると迷いがちになります。決めかねるのも無理はありません。
英国調が好みで、自身のポストと釣り合う身だしなみの必要性は感じているけれど、まだスキャバルやドーメルほどの予算はかけにくい・・・そういう人たちに、自信を持っておすすめできるのがジョン・フォスターです。
着る人のステータスを可視化し、際立たせるジョン・フォスター
高級オーダー服地の中では比較的コストパフォーマンス性がある一方で、仕立て上がったオーダースーツからは品格が醸し出されます。また、クラシックな趣きながらも現代的な感覚を帯びて洗練されているのです。
それは世界各国のオーダー服地マーケットからの要望に応えながら、実に200年にわたって連綿と紳士服地を織り上げてきた、信頼できる老舗だからこそ持ちえた魅力といえるでしょう。
もちろん誰が着てもクラス感が出るような、魔法の服ではありません。
ハイクラスに仲間入りするフェーズに入ったあなただからこそ。そのステータスを凡庸な生地では及ばないくらいにジョン・フォスターは可視化し、鮮やかに際立たせるのです。
ジョン・フォスターをチョイスするタイミングを、ぜひとも逃さないでください。
さいごに
ジョン・フォスターの生地で仕立てたオーダースーツを着こなせば、その人の印象や評価がポジティブなものになります。それは英国文化に根ざした伝統と、洗練された普遍性の賜物といえるでしょう。
キャリアの階段を昇り出会う人たちの「格」を感じたら、ジョン・フォスターでスーツを仕立て、身だしなみのクラスを上げましょう。着る人のステータスを可視化して飾り上げるジョン・フォスターのような生地こそが、本当の意味でのクラシックです。
監修者
小林英毅(銀座英國屋 代表取締役社長)
1981年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。 オーダースーツ銀座英國屋の3代目社長。 青山学院大学ファッションビジネス戦略論・一橋大学MBA・明治大学MBA・ネクストプレナー大学にてゲスト講師。 銀座英國屋は、創業80年。東京銀座・オークラ東京・大坂梅田・大阪あべのハルカス・京都に店舗展開。
ビジネスウェアを選ぶ際の「どなたから、信頼を得たいか?」という視点を軸に、オーダースーツについて、お役に立つ情報をお届けいたします。
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