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燕尾服とは?着る場面や着こなし方をわかりやすく解説
燕尾服とは?着る場面や着こなし方をわかりやすく解説

燕尾服は、フォーマルな装いの中でもっとも格式が高い服装です。いわゆる「正礼装」と呼ばれる装いのうち、夜に着用することが多く、日中の正礼装であるモーニングとは区別されます。
一般的なスーツと燕尾服とでは、そもそもの構造や合わせるアイテム、マナーも別物です。
とはいえ礼装の着用ルールには移り変わりがあまりないため、1度覚えれば安心して着こなしやすい装いでもあります。
この記事では燕尾服の基本知識、着方やルール、着用のポイントについて詳しく解説します。
燕尾服とは?

燕尾服とは礼服のうち、主に夜間に着用する正礼装です。
最大の特徴は、なんと言ってもジャケットの後ろ側が長く伸びている点です。ジャケット(コート)の背中側のみが長く伸びている形状が燕の尾(テール)のように見えることから、英語ではtail-coat(テールコート)と呼ばれています。
礼服は格式が高い順に正礼装、準礼装、略礼装があり、このうち燕尾服はもっとも格式が高い装いとなります。ドレスコードに「ホワイトタイ」と記載があれば燕尾服の着用が求められます。
燕尾服とモーニングやタキシードとの違い

燕尾服、モーニング、タキシードはそれぞれ異なる特徴と着用シーンを持つフォーマルウェアで、主な違いは着用時間帯と格式の高さです。
燕尾服が最も格式が高く、次いでモーニング、そしてタキシードという順になります。また、燕尾服とタキシードが夜の装いであるのに対し、モーニングは昼の装いという点も異なります。
もっとも格式の高い夜の正礼装とされる燕尾服は、後ろが燕の尾のように長くなっているのが特徴です。主に夕方6時以降の非常に格式の高い場面、例えば宮中晩餐会や国際的な公式行事などで着用されます。白い蝶ネクタイとウイングカラーのシャツを合わせるのが一般的です。
対して、モーニングは昼の正礼装として知られています。本来は朝から夕方5時または6時頃までの着用が適切とされていますが、日本では時間帯を問わず着用されることもあります。結婚式の新郎や父親が着用することが多いです。
タキシードは夜の準礼装として位置づけられます。燕尾服よりも格式が低いものの、通常のスーツよりは格式が高い服装です。主に夜のパーティーや結婚式の二次会などで着用されます。黒い蝶ネクタイを合わせるのが一般的で、「ブラックタイ」と呼ばれることもあります。
燕尾服に含まれるアイテム
ここでは、燕尾服に含まれるジャケットなどのアイテムの特徴を解説します。
ジャケット

ジャケットの後ろ側が長く伸びているデザイン以外にもいくつか特徴があります。
正面側の着丈は短くなっていて、裾先はまっすぐにカットされています。
ボタンは左右に3つずつの計6つと決まっており、このボタンはいずれも留めない仕様です。
襟はピークドラペルと呼ばれる先端が上方向に尖った形状で、下襟には拝絹(はいけん)と呼ばれるシルク素材の光沢ある生地が付けられています。
スラックス

スラックスはジャケットと同じ黒で作られていて、両脚の側面には側章(そくしょう)と呼ばれる飾りテープが付いているのが特徴です。側章は2本で構成されていて両者にフォーマル度合いの差はありません。
スラックスにはもともと脇に縫い目があり、その縫い線を見せない方が綺麗であるという美意識があります。そのため、側章で縫い線を隠したのが起源であると言われています。しっかりと縫い線を隠すのか、さらっと隠すのかで、日本では燕尾服の側章は2本、タキシードの側章は1本というのが主流です。
また、裾先はフォーマル度合いが高いシングル仕上げのみです。
燕尾服にあわせるアイテムと着用ルール
燕尾服にあわせるアイテムは、通常のビジネススーツには登場しないものもあります。ここでは各アイテムと、着用のルールを紹介します。
なお、燕尾服ではシャツ、ベスト、蝶ネクタイが全て白で統一されており、Vゾーンは白一色でまとめるのが基本です。
シャツ

燕尾服シャツを着用します。胸の部分に「イカ胸」と呼ばれるヒダ状の装飾がなされているのが特徴です。正面ボタン、カフスともにボタン留めではなく、白蝶貝などのスタッズやカフリンクスで留めます。
襟はウイングカラーと呼ばれる形状で、蝶ネクタイをする前提で襟先が浮き上がっているデザインです。
ベスト

燕尾服用のベストを着用します。コットンピケと呼ばれる綿糸100%で作られた生地で作られているのが特徴です。ピケとはフランス語で刺し子繍(さしこぬい)という意味で、生地に独特の織り模様、凸凹があります。Vゾーンが深めに取られていて、襟付きのものが正式なスタイルです。
蝶ネクタイ

蝶ネクタイはベストと同じコットンピケで作られたものを締めます。ちなみに燕尾服の着用を表す「ホワイトタイ」のドレスコードの由来はこのコットンピケの蝶ネクタイから来ています。
サスペンダー

燕尾服を着用するときは白のサスペンダー(吊りベルト)を使います。もともとスラックスはベルト留めではなく、サスペンダーで吊るして着用するのが留め方の起源と言われています。
カフリンクス

白蝶貝やパールが入っているものなど気品があって装飾性が高いものを使います。燕尾服用のカフリンクスがあり、ビジネススーツで使うようなシルバーカラーやアクセサリー要素があるようなものは使いません。
靴

オペラパンプスと呼ばれる、黒のエナメル素材の革靴を履きます。または黒の内羽根式・ストレートチップを合わせます。
ポケットチーフ

白無地でシルク素材のポケットチーフを挿します。挿し方はフォーマル度合いが高いスリーピークスです。
手袋

燕尾服の着こなしでは白無地の手袋を使います。もともとは舞踏会などで手袋を装着していたことが起源で、素材は鹿革が本式であるとされています。
現代では舞踏会が開催されるとき以外は使わない場合もあります。なお、手に持つ場合は手袋の指側が体の前になるように持ちます。
燕尾服はいつ着る?

ここでは、燕尾服を着用する場面について具体的に説明します。
燕尾服は礼服、つまり特別な儀式や式典などで着る衣裳に含まれます。求められる格式の高さによって正礼装、準礼装、略礼装があり、略礼装以外は着用する時間帯によっても衣装が変わります。
このうち、燕尾服は夜(おおむね18時以降)に着用する正礼装にあたり、昼の正礼装であるモーニングコートと並んでもっともフォーマル度合いが高い衣装です。
着用する場面としては以下のような場が挙げられます。式典などでは、その場の格式を下げないためにも、もっともフォーマルな燕尾服の着用が求められます。
- 宮中晩餐会
- 国家レベルの記念式典
- ノーベル賞授賞式
他には結婚式、披露宴での新郎新婦の父親が正礼装で臨むことがあります。ただし近年では燕尾服ではなく昼夜問わずモーニングコートを着用するケースが増えています。夜の結婚式が減少しているということに加え、新郎新婦の父親はモーニングコートで臨むのが日本で定着しているためです。
そのため、新郎新婦の父親として結婚披露宴に出席する場合は、着用する時間帯に関わらずモーニングコートを選ぶほうが無難かもしれません。また、新郎の父と新婦の父の服装は揃えましょう。
燕尾服を着るときのポイント
ここでは、実際に燕尾服を着るときのポイントを紹介します。
サイズが合ったものを選ぶ

正礼装である燕尾服はサイズがきちんと合っていることで初めて格好が良く見えます。そのため、サイズがご自身の体型にピッタリと合っていることが大前提です。
燕尾服は着る機会が少ないとはいえ、多くの人から見られるという状況に加え、写真などの記録にも残ります。そのため、着る以上は万全で臨みたいところです。
理想はスーツ専門店で、燕尾服など正礼装のオーダー実績がある店舗です。そのようなスーツ店であれば、燕尾服はもちろん、シャツやベスト、ポケットチーフなども一度に揃えることができます。
関連ページ:銀座英國屋のオーダー礼服
服のシルエットはトレンドを追い求め過ぎると数年後には着用できない恐れがあります。そのため、流行に左右されないものが良いでしょう。具体的には体型に合わせた自然なラインと適度がゆとりを持つシルエットです。このような燕尾服は普遍的なデザインであり、時を経ても長く使うことができます。
必要な時期や使用する場所なども事前に伝えておくとスムーズです。
着用時は座り方に注意
燕尾服を着るときは、座り方に注意が必要となります。
そもそも燕尾服は後ろ側の裾が長い作りです。そのため、そのまま椅子に座ると裾を敷いてしまうことになります。これを避けるため、着席時は裾を左右に分けてお尻に敷かずに座ります。
まとめ
この記事では燕尾服について、想定される着用場面や着方、各アイテムの選び方について解説しました。燕尾服は夜の正礼装であり、着用場面も宮中晩餐会、国家レベルの記念式典やノーベル賞授賞式などフォーマルな装いが極めて高い場です。
燕尾服は着用する機会は多くはないものの、多くの列席者から見られて写真などの記録にも残ります。そのため、燕尾服のオーダー実績があるスーツ専門店で体型に合ったものをオーダーするのが理想と言えます。それ以外ではレンタルを視野に入れるのも良いでしょう。
この記事をご覧いただくことで、燕尾服についての理解を深めていただけたら幸いです。
監修者

小林英毅(銀座英國屋 代表取締役社長)
1981年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。 オーダースーツ銀座英國屋の3代目社長。 青山学院大学ファッションビジネス戦略論・一橋大学MBA・明治大学MBA・ネクストプレナー大学にてゲスト講師。 銀座英國屋は、創業80年。東京銀座・オークラ東京・大坂梅田・大阪あべのハルカス・京都に店舗展開。
ビジネスウェアを選ぶ際の「どなたから、信頼を得たいか?」という視点を軸に、オーダースーツについて、お役に立つ情報をお届けいたします。
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