オーダースーツ 銀座英國屋コラムブラックスーツとは?ダークスーツとどう違う?着こなし方を解説
ブラックスーツとは?ダークスーツとどう違う?着こなし方を解説
ブラックスーツという言葉は、単に黒いスーツを指すとは限りません。ドレスコードのひとつとして「冠婚葬祭で着る礼服」という意味で使われるほうが一般的です。
通常の黒いビジネススーツやダークスーツとは使われる生地も異なるため、用途に合わせて選び、着こなすのがマナーとなります。
この記事では、礼服としてのブラックスーツの基本をメンズ向けに紹介したうえで、着用する場面や着こなし方までわかりやすく解説します。
ブラックスーツとは?
ブラックスーツとは、葬儀や結婚式などのフォーマルな場面で着る礼服のことです。ドレスコードの一種として、礼服の中でも略礼装にあたる装いとなります。
単に黒い無地のスーツを指すこともありますが、一般的には「ブラックスーツ」と言えば礼服として着る「ブラックフォーマルスーツ」を意味することが多いです。
なお、礼服は求められるフォーマル度合いに応じて装いが異なり、格式が高い順に正礼装、準礼装、略礼装と大きく分けられます。
また、略礼装以外は礼服を着用する時間帯によっても装いが異なります。例えば正礼装であれば日中はモーニングコート、夜間は燕尾服といった具合です。これに対して略礼装であるブラックスーツは時間帯に関係なく着用します。
ブラックスーツとダークスーツの違い
礼服としてのブラックスーツと、ビジネス向けのダークスーツでは、着る目的も仕様も根本的に違います。
ダークスーツとは、一般的に、ダークグレーやネイビーなど暗い色(ダークカラー)のビジネススーツ全般のことです。黒いスーツでも、ビジネス向け仕様で作られていれば、ダークスーツに含まれます。こちらはお相手に敬意をお届けして信頼を勝ち取るために着用するお仕事着となります。
対してブラックスーツは礼服として、冠婚葬祭など特別な場で着るための装いです。礼服にはブラックスーツを着用することによって、その式典自体、または主賓や参加者に対して礼を尽くす意味合いがあります。
使われる生地も違います。ビジネス向けのダークスーツは光沢のある生地で作られます。礼服であるブラックスーツには、光沢のない艶消し生地が使われます。そのため、見た目の印象が全くの別物です。
関連記事:ダークスーツとはどんなスーツ?
ブラックスーツの特徴
礼服としてのブラックスーツの特徴を、通常のビジネススーツと比べつつ、色やデザインの面から紹介します。
ブラックスーツの色
一般的な黒のビジネススーツに用いられる生地はややグレーがかった黒です。それに対して礼装用のブラックスーツには、いわゆる「漆黒」と呼ばれる純粋な黒に近い色が用いられています。
また、礼服のブラックスーツは慶事だけではなく、葬儀などの弔事でも着用します。喪服として着用した時に華やかな印象になるのを避けるため、光沢が抑えられたマットな質感です。
ブラックスーツのデザイン
ブラックスーツのデザインは、ビジネススーツと比較すると、シルエットにゆとりを持たせているのが一般的です。ブラックスーツは年数の経過により体型が変化しても対応できるようゆとりを持たせているためです。
ジャケットはブラックスーツとビジネススーツで異なる点がいくつかあります。
まず、ラペルと呼ばれる下衿の形状が異なります。ビジネススーツは下衿の先端が下がっている仕様で、これを「ノッチドラペル」と呼びます。対してブラックスーツは先端が上方向にピンと上がっています。この仕様は「ピークドラペル」と呼ばれフォーマル度合いが高いディテールです。
正面のボタンの仕様も異なります。ビジネススーツはボタンの数が2つまたは3つであるのに対し、ブラックスーツはボタンが1つだけです。ビジネススーツは一番下のボタンは留めないのがマナーです。それに対してブラックスーツは1つしかボタンがなく、そのボタンを留めて着用します。
また、ビジネススーツのジャケットには背中側の裾先に「ベント」と呼ばれる切れ込みが入っています。対して、ブラックスーツにはベントがありません。ベントの有無については、無いほうがよりフォーマルとされています。
スラックスの形状はブラックスーツとビジネススーツで裾先の仕様が違う場合があります。ビジネススーツのスラックスは裾先をダブル(折り返し)で仕上げる場合があります。これは裾先が傷むのを防ぐための強度を増すディテールで、今日では装飾的な意味合いがあります。
フォーマル度合いの点では、シングル仕上げの方がダブルよりも高いです。そのため、ブラックスーツではダブル仕上げはしないのが通例となります。
ブラックスーツの着用場面
ブラックスーツは礼服の中ではもっともポピュラーな装いで、略礼装として着用します。礼服の中では登場頻度も高く、結婚披露宴などの慶事とお通夜、お葬式などの弔事の両方で用いられます。
以下ではそれぞれの着用場面について解説します。
慶事
ブラックスーツは礼服の中では格式が低い略礼装です。
結婚披露宴などでは、一般ゲストとして参加する場合に着用します。
もし、新郎新婦の親族として列席する場合はホスト側になるため、礼服であるブラックスーツを着用する場合があります。
ただし、主賓として出席する場合は注意が必要です。主賓は一般ゲストより格式が高い服装で臨むため、本来は準礼装であるタキシードまたはディレクターズスーツを着用するのが一般的です。最近では両家の父親が準礼装であることも多く、その場合は装いに変化をつけるためにあえてブラックスーツを着用する場合もあります。
一般ゲストとして参加する場合はブラックスーツで構いませんが、主賓として列席する場合は両家の父親の服装を事前に確認しておくのが良いでしょう。
なお、ビジネス用のダークスーツは、結婚披露宴に親族や主賓以外の一般ゲストとして参加する場合は許容されます。その場合は慶事の席なので、華やかなポケットチーフを挿すなどお祝いの気持ちを小物アイテムで表現すると良いでしょう。
参考記事:主賓(男性)|結婚式(挙式・披露宴・二次会)にオススメな服装|礼服の基礎知識
弔事
ブラックスーツはお通夜、お葬式でも着用します。弔事では喪服を着用し、喪服にも格式に応じて高い順に正喪服、準喪服、略喪服があります。
このうちブラックスーツは準喪服にあたり、お通夜、お葬式の一般参列者が着用します。最近では遺族やその近親者も準喪服(ブラックスーツ)を着用するようケースもあります。
なお、お通夜に一般弔問客として出席する場合は、平服(ビジネススーツ)でも構いません。これは「急いで駆けつけた」ことを表すために平服でも構わないとされているためです。しかし、葬儀、告別式は準喪服であるブラックスーツで臨むのがマナーとなります。
参考記事:男性の喪服の選び方と、コーディネート|準喪服(ブラックスーツ)が基本
ブラックスーツをビジネス使いしてもよい?
礼服のブラックスーツは上記の通りビジネススーツとは使う目的やデザインが異なります。しかし、どちらも一見すると黒いスーツであるため、ブラックスーツをビジネススーツとして使うのはどうなのか?という疑問が浮かぶかもしれません。
結論はNGで、理由は以下の2点です。
フォーマル度合いが高すぎる
礼服のブラックスーツはビジネススーツと比較するとフォーマル度合いが高いディテールがいくつもあります。例えば、ブラックスーツのラペル(下衿)先端が上方向に上がっている仕様は、ビジネススーツよりもフォーマル度が高いです。
また、ジャケットの一つボタンもビジネススーツにはあまり見られない仕様です。
礼服のブラックスーツをビジネス使いするのはおすすめしません。
漆黒はビジネス向けの色ではない
ブラックスーツの黒色は漆黒のような光沢が少なく深い黒です。ビジネススーツの黒は光沢があり、グレーがかった色をしています。そのため、ブラックスーツをビジネスシーンで着用するとどこか違和感があります。
また、ビジネススーツの色はグレーまたはネイビーが一般的であるため、その点でもブラックスーツをお仕事使いすることはおすすめしません。
これらの観点から、ブラックスーツをビジネススーツとして使うのはNGと言えます。
ブラックスーツの選び方
ここでは、ブラックスーツを選ぶにあたってのポイントについて解説します。
ブラックスーツは礼服の中で略礼装にあたり、燕尾服やモーニングコートなどの正礼装と比較をすると着用する頻度は高いと言えます。また、ブラックスーツを着用するのはフォーマルな場であり、写真などの記録にも残ります。そのため、きちんとしたものを一着持っておきたいところです。
体型に合ったものを選ぶ
ブラックスーツはビジネススーツに比べてシルエットが少し緩めです。しかし、肩幅や着丈などが合っていないとルーズな見た目になります。これはスラックスについても同じで幅が太過ぎると全体的にルーズな印象を与えます。
そのため、ブラックスーツは体型に合ったものを選ぶことが肝心です。ビジネススーツと比較すると着用する頻度は少ないかもしれませんが、式典など特別な場で着る以上、着用時は撮影などで記録に残ることも考えられます。
その点でも体型に合ったものを持っておくことが大切です。
オーダーするのもオススメ
スーツが体型に合うかを判断する要素はいくつもあり、既製品がご自身の体型にピッタリ合うというのは稀です。その場合、既製品はどこかに妥協をすることになります。
これに対してオーダースーツであればご自身の体型に合わせてスーツを作るため、どこかに妥協をするということなく、最適なスーツを着ることができます。
特にブラックスーツは生地のクオリティーがダイレクトに見栄えに反映されるため、スーツの生地にはこだわりたいところです。
そのため、礼服のオーダー実績があるオーダースーツ専門店でブラックスーツを作ると着映えする一着を入手することができるのでおすすめです。
関連ページ:礼服 | オーダースーツの銀座英國屋
ブラックスーツの着こなし方
ブラックスーツは礼服であるため、お仕事着であるビジネススーツとは異なる着こなし方が求められます。ここではブラックスーツの着こなし方法について慶事、弔事に分けて解説します。
慶事での着こなし方
お祝い事の席であるため、白無地のシャツに慶事用のシルバータイを締めます。その際、ネクタイの正面の結び目(ノット)の下位置に、ディンプルと呼ばれる凸凹を付けてあげるとVゾーンに立体感が生まれ、華やかな印象を与えます。
足元は革靴の形状の中でもっともフォーマルな黒の内羽根式、ストレートチップと呼ばれる靴を履きます。胸ポケットには白無地のポケットチーフを挿すと華やかさを演出できます。
スリーピースで臨みたい場合は、シルバーベストを着用します。
結婚披露宴での主役は新郎新婦です。そのため、華やかさは意識しつつも控えめな装いを心がけましょう。
弔事での着こなし方
弔事では白無地のシャツを着用し、ネクタイは光沢のない黒ネクタイを締めます。その際、慶事で推奨した「ディンプル」は華やかな印象になるため、弔事でディンプルを作るのは避けます。
同様にポケットチーフも華やかさを演出する小物であるため、弔事では挿すのはNGです。足元は黒の内羽根式、ストレートチップと呼ばれる靴を履きます。
まとめ
このコラムではブラックスーツについて解説しました。ブラックスーツは礼服の中で略礼装にあたり、儀式や式典など特別な場で着用します。一般的なダークスーツとは着る目的やスーツの仕様が根本的に異なるため、ビジネス使いするのは避けた方が無難です。
何よりも大切なのは体型に合ったものを選ぶことです。礼服のオーダー実績があるオーダースーツ専門店であれば、着映えする一着を手に入れることができます。
このコラムをご覧いただくことで、ブラックスーツについての理解を深めていただければ幸いです。
監修者
小林英毅(銀座英國屋 代表取締役社長)
1981年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。 オーダースーツ銀座英國屋の3代目社長。 青山学院大学ファッションビジネス戦略論・一橋大学MBA・明治大学MBA・ネクストプレナー大学にてゲスト講師。 銀座英國屋は、創業80年。東京銀座・オークラ東京・大坂梅田・大阪あべのハルカス・京都に店舗展開。
ビジネスウェアを選ぶ際の「どなたから、信頼を得たいか?」という視点を軸に、オーダースーツについて、お役に立つ情報をお届けいたします。
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