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スーツに合うチェスターコートは?着こなしの基本とマナーを解説
スーツに合うチェスターコートは?着こなしの基本とマナーを解説

男性用コートの定番といえば、チェスターコートです。スーツとの相性は抜群であり、秋冬の装いをエレガントに惹き立ててくれます。
洗練された印象に仕上げるためには、色・サイズ感・デザインなどが鍵となります。しかし、選び方のポイントが分からなかったり、スーツと合わせるときのマナーで迷われたりする方もいらっしゃるのではないでしょうか。
本記事では、チェスターコートの特徴や、選び方のポイントについて解説します。ビジネスやフォーマルシーンにふさわしく、日常使いまで幅広く対応できる守備範囲の広さも魅力の一つです。ご自身にぴったりの一着を選び、秋冬の着こなしを楽しんでいただけたら幸いです。
チェスターコートの歴史

チェスターコートの正式名称は「チェスターフィールドコート」で、1840年頃のイギリスの政治家・チェスターフィールド伯爵の名前を由来としています。伯爵は現代でいうファッションリーダーのような存在であり、当時のフロックコートを好みのデザインにアレンジしたのが起源とされています。
もともとは貴族の乗馬用コートとして誕生しましたが、やがて都市部の紳士たちの外出着として広まっていきました。そのシンプルで洗練されたデザインにより、次第にフォーマルな場にもふさわしい格式高いコートとして定着していきます。
現在でもチェスターコートは、スーツに合わせるアウターの定番として、多くの男性たちから愛用されています。180年以上もの歴史がありながら、今なお男性たちを魅了してやまないアイテムといえるでしょう。
チェスターコートの特徴

チェスターコートの最大の特徴は、襟元のデザインにあります。テーラードジャケットに似たラペル(襟)がついており、フォーマルかつスマートな印象を与えます。特にノッチドラペルはビジネススーツとの相性がよく、スーツスタイルに自然となじみます。
チェスターコートにはトレンチコートに見られるようなエポレット(肩章)や腰位置のベルトなどのディテールがありません。このシンプルさが全体に上品さと落ち着きを与え、ビジネスシーンはもちろん、フォーマルな場でも品格を損なわずに着用できます。
また、チェスターコートのボタンの数や配置によって「シングルブレスト」と「ダブルブレスト」の2種類に分けられます。シングルブレストはボタンが1列に並んでいるタイプで、スマートでスタイリッシュな印象を与えるのが特徴です。

ダブルブレストは、ボタンが平行に2列並んでおり、胸元や肩のボリュームが強調されるデザインです。威厳や重厚感のある雰囲気を醸し出してクラシックな印象を与えるため、冬のパーティーやフォーマルなシーンでの着用に適しています。用途やシーンに応じて、適したものを選ぶとよいでしょう。
現在ではトレンド性の高いファッションアイテムが多く流通していますが、チェスターコートは流行に左右されないオーソドックスな一着として、ビジネスフォーマルにも最適です。大切な場面で着るからこそ、デザインや着丈に流行の影響を受けすぎず、信頼感を与えられるコートを選ぶことが重要といえるでしょう。
スーツに合うチェスターコートを選ぶには?
チェスターコートはデザインや色などがさまざまで、ご自身に合うものを選ぶのが難しいと感じる方もいらっしゃるかもしれません。ここでは、スーツに合うチェスターコートを選ぶポイントをご紹介します。
ビジネスならシングルブレスト

シングルブレストは、ダブルと比べると前身頃(まえみごろ)の合わせ部分が少なく、着用すると縦長のシルエットが強調されます。前身頃とはシャツやジャケットなどの洋服で、前面(胸や腹のあたり)を構成する布の部分を言います。通常は左右対称になっており、左右の「前身頃」が中央で出会うことで全体のシルエットが決まります。
また、シングルブレストは、襟部分が上襟と下襟で構成されていて、正面から見るとシングルスーツの上着と同じ襟型なので、きちんとしたシーンにも対応しやすいデザインです。
もう一つの特徴として、コートのボタンをすべて留めると第一ボタン以外は全て隠れる「比翼仕立て」があります。これはボタンホール(ボタン穴)の位置に重なるように上側にもう1枚生地が付けられているからです。ボタンが隠れることで、一層シンプルで上品な印象を与えます。
ビジネスシーンで使うのであれば、控えめで洗練された雰囲気に仕上がる比翼仕立てを選びましょう。
フォーマルならダブルブレスト

ダブルブレストの襟はシングルと同じく、上襟と下襟(ラペル)で構成されているものの、その形状が異なります。シングルは下襟が斜め下に向かってカットされているのに対し、ダブルは下襟の先端(剣先)が上方向に尖っているのが特徴です。この形状は先端が尖っているという意味で「ピークドラペル」と呼ばれています。
このピークドラペルは下襟にしっかりとボリュームがあるので、威厳のある雰囲気を演出します。また、前身頃にボタンが二列並ぶ仕様なので、見た目に重厚さが加わり、伝統的で格式のあるスタイルに仕上がります。
その形状からお腹周りをしっかりとホールドしてくれるため、大柄な方や恰幅がよい方は、ダブルを選ぶのがおすすめです。
ベーシックな色が合わせやすい
スーツとチェスターコートを合わせるときは、ベーシックな色を選ぶのが望ましいです。代表的な色は、次のようなものがあります。
基本は黒かネイビー

黒はフォーマル度が高く、ビジネスシーンはもちろん、冠婚葬祭など幅広い場面で活用できる万能な色です。なかでも黒無地のアイテムは主張が控えめなため、スーツの色や柄を選ばず合わせやすいのが特長です。たとえばグレースーツと合わせると、自然なグラデーションが生まれ、全体にまとまりのある印象になります。
一方で、黒より少し軽やかな雰囲気を好む方にはグレーのコートがおすすめです。グレーには明るめから濃いめまでさまざまなトーンがありますが、ビジネスシーンで着用するなら、ミディアムグレーやチャコールグレーといった落ち着いた色味を選んでおくと安心です。どちらも汎用性が高く、場面を選ばず使えるカラーといえます。
軽やかさを重視するならグレー

グレーは、黒と並んで汎用性の高いカラーです。黒よりもやや軽やかな印象を持たせたい方には、グレーのコートが適しています。
ひと口にグレーといっても、明るいトーンから濃いトーンまで幅広くありますが、ビジネスで着用するなら、ミディアムグレーやチャコールグレーといった落ち着いた色味を選ぶと安心です。控えめで上品な印象を与えられるため、さまざまな場面に対応できる一着として重宝します。
エレガントに仕上げるならベージュ

ベージュはチェスターコートの定番カラーのひとつで、やわらかな色味と上品な雰囲気が魅力です。高級感があり、全体にエレガントな印象を与えてくれます。
ただし、明るめの色である分、他のカラーと比べるとやや主張が強く、目を引きやすい傾向があります。業種や職種によっては、華美な印象を持たれることもあるので、シーンに応じて色を選ぶことが大切です。
素材も品格を左右する

チェスターコートの印象は、素材によっても大きく左右されます。基本となるのは、保温性と耐久性に優れたウールです。なかでも、なめらかで光沢のあるウーステッド(梳毛)生地は上品で洗練された印象に、厚みのあるウーレン(紡毛)生地は温かみのある印象になります。
ワンランク上を求めるなら、カシミヤを推奨します。軽くて暖かく、肌ざわりもなめらかです。上質な光沢感もひと目で品のよさが伝わり、大人の一着といえるでしょう。
なお、カシミヤと一口に言っても品質には大きな違いがあり、肌ざわりや光沢感の感じ方にも個人差があります。銀座英國屋では、実際の仕立てに使われる上質なカシミヤ生地を手に取ってご覧いただくことが可能です。
展示している現物は20種類以上、加えてサンプルブックも50種類以上をご用意しております。MTRやゼニア、ピアチェンツァをはじめ、ロロピアーナやジョンストンズ、スキャバルなどの高級素材も多数ご案内可能です。見て、触れて、納得して選べることも、満足度の高い一着を仕立てるための大きな魅力です。
おしゃれに仕上げるなら柄入り
チェスターコートは、定番の無地のほかに、チェック柄や千鳥格子など、さまざまな柄物も展開されています。柄入りのコートは視覚的なアクセントになり、おしゃれな雰囲気を演出してくれますが、無地に比べるとカジュアルな印象がやや強くなる傾向があります。
とくに注意したいのは、柄入りのコートと柄物のスーツを重ねた場合です。それぞれの柄が干渉し合ってしまい、全体のバランスが取りにくくなることがあります。
柄同士の組み合わせは上級者向けのコーディネートになるため、ビジネスシーンでは避けたほうが無難です。まずは無地のベーシックな一着を用意したうえで、2着目以降で柄入りのものを用意するのが良いでしょう。
もし柄入りのコートを取り入れたい場合は、「ヘリンボーン柄」などの織り柄を選ぶのも一つの方法です。「ヘリンボーン柄(herringbone pattern)」とは、V字型のジグザグ模様が連続して並ぶデザインで、右上がりと左上がりの斜め線が交互に組み合わさった織り目のパターンです。スーツやコート、ジャケット、パンツなど、ウール素材の衣類によく使われています。

織り柄は、生地そのものの織り方によって模様を表現しているので、遠目には無地のように見え、控えめな表情になります。スーツとの相性もよく、落ち着いた印象を保ちつつ個性を取り入れられる点が魅力です。
美しく見せるならサイズ感が重要
チェスターコートをスーツと合わせることを前提に選ぶ場合は、実際にそのコートを着る時のスーツを着た状態で試着するのが理想です。夏服のスーツで試着すると、肝心の秋冬用のスーツを着た際にキツく感じることがあります。またシャツやネクタイ、ジャケットまで含めて着用したうえで試すことで、コートとのバランスやサイズ感を正確に確認できます。
試着の際には、以下のポイントを押さえてチェックしてみましょう。
着丈(きたけ)

コートの着丈は、シルエットや印象に大きく関わります。一般的に、着丈が長くなるほどクラシックで重厚な雰囲気になり、短めであれば軽快でカジュアルな印象になります。スーツとの相性を考えると、膝が少し隠れる程度のミディアム丈がバランスよく、ジャケットの裾もしっかりカバーできます。流行に左右されにくく、長く着られる長さとしておすすめです。
身幅(みはば)
身幅とは、コートの胴まわりのゆとりのことです。スーツの上からコートを着て、前ボタンを留めたときに窮屈さがないかを確認しましょう。
腕を動かした際に引っかかりを感じたり、ジャケットにシワが寄ったりするのであれば、身幅が足りていないサインです。一方で、身幅が広すぎると、全体のシルエットがだらしなく見えやすくなるので注意が必要です。体に沿った自然なフィット感を意識しましょう。
袖丈(そでたけ)

コートの袖丈は、スーツの袖口をきちんと覆えているかが大切なポイントです。目安としては、腕を自然に下ろした状態で手の甲の半分ほどが隠れるくらいの長さが理想です。
これにより、ジャケットの袖がはみ出ることなく、見た目のバランスも整います。袖が短いと寒々しく見えたり、実用性にも欠けたりするので、細かく確認しておきます。
このように、チェスターコートのサイズ感を適切に見極めるためには、複数の視点からチェックすることが大切です。既製品で自分にぴったりのサイズが見つからない場合は、パターンオーダーやフルオーダーといった選択肢も視野に入れるとよいでしょう。自分の体型や着用シーンに合った一着を選ぶことで、着心地だけでなく見た目の完成度も高まります。
なお、既製品ではサイズが合わないと感じる方には、銀座英國屋のフルオーダーがおすすめです。体型に合わせて着丈や袖丈を調整できるだけでなく、ポケット位置やボタンの配置まで細かく設計できます。イージーオーダーでは難しい細部の調整が可能なため、仕立て上がりの満足感が格段に高まります。
コートのサイズについては、下記もご参照ください。
スーツにオススメのコートとは?|種類・色・適正サイズまで徹底解説!
スーツとチェスターコートを合わせるポイント
ご自身に合ったチェスターコートが見つかったら、スーツと合わせてみましょう。ここでは、選び抜いた一着をより美しく着こなすコツをご紹介します。
着こなしのマナーを守る

洗練された装いを実現するために大切なのが、着こなしのマナーを守ることです。まずは、コートのVゾーンからのぞく、スーツ・シャツ・ネクタイは、色数を3つ以内に抑えることが基本です。たとえば、ベースとなるシャツは白、スーツはグレー、チェスターコートはネイビーなどでまとめると、自然で落ち着いた印象に仕上がります。
また、スーツのジャケットでは、一番下のボタンを留めないことが一般的な着こなしのマナーです。チェスターコートも同じように、フロントボタンの一番下は開けておくのが好まれます。シルエットが美しく保たれるだけでなく、動きやすさも確保できます。
なお、訪問先やレストランなど、室内に入った際はコートを脱ぐのもマナーです。裏地が見えるように軽くたたみ、腕にかけて持ち運びましょう。椅子の背もたれに掛けるのは、シワや型崩れの原因となりますので避けるのが賢明です。
小物使いにこだわる

コートを着用する際は、必ずマフラーやストールも一緒に巻くようにしましょう。それはコートの襟元が首と直接触れ合うことで、皮脂が付きやすくなり、コートの襟元が汚れやすくなるからです。
またチェスターコートに限らず、冬場に着るコートは暗い色になりがちです。ビジネススーツもダークトーンのものが一般的なので、全体の印象が沈んで見えることがあります。
そのような場合は、マフラーやストールなどの小物で明るい色を取り入れるのも一案です。顔まわりに明るい色があると、いわゆる「レフ板効果」で顔色をよく見せてくれます。
ただし、マフラーやストールに大きな柄が入っていると、主張が強くなりすぎてしまうこともあります。シンプルなデザインのものを選ぶと、好印象を与えやすくなります。
まとめ

チェスターコートは防寒性に優れているだけでなく、スーツスタイルを美しく引き立て「信頼を得られる一着」として、ビジネスフォーマルから日常使いまで幅広く対応できるのが魅力です。トレンドに左右されにくく、品格を求める場面にこそふさわしいコートといえるでしょう。
ご自身に合うチェスターコートを選ぶためには、色や素材、サイズ感をきちんと見極めることが大切です。なかでもカシミヤは質感に差があり、手に取って確かめることで納得のいく一着に近づけます。また、銀座英國屋では、体型や好みに応じたフルオーダーにも対応しており、細部までこだわることが可能です。
マナーや小物使いを意識することで、さらに洗練された装いが完成します。ぜひ、ご自身にとって最適な一着を見つけ、秋冬のスタイルを上質にお楽しみください。
監修者

小林英毅(銀座英國屋 代表取締役社長)
1981年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。 オーダースーツ銀座英國屋の3代目社長。 青山学院大学ファッションビジネス戦略論・一橋大学MBA・明治大学MBA・ネクストプレナー大学にてゲスト講師。 銀座英國屋は、創業80年。東京銀座・オークラ東京・大坂梅田・大阪あべのハルカス・京都に店舗展開。
ビジネスウェアを選ぶ際の「どなたから、信頼を得たいか?」という視点を軸に、オーダースーツについて、お役に立つ情報をお届けいたします。
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