カンクリーニ（CANCLINI）はイタリアのコモを拠点とする、世界的に認知度が高い名門の高級オーダーシャツ生地ブランドです。最近は日本でも若者を含めた幅広い層に、愛用者が増えつつあります。

オーダーシャツの素材の品質にこだわる世界中のテーラーはもちろん、エルメネジルド・ゼニアやクリスチャン・ディオール、ルイ・ヴィトン、エルメスをはじめとしたトップブランドが顧客として名を連ねる実力派のオーダーシャツ生地ブランドです。

今回の記事ではそんなカンクリーニの魅力や特徴を、その由緒ある深い歴史に触れつつご紹介していきます。選択肢がとても豊富なので、オーダーシャツビギナーのみなさんもぜひ参考にしてください。

イタリアの名門シャツ生地ブランド「カンクリーニ（CANCLINI）」とは？

カンクリーニは幅広い年齢層に安定した人気があり、グレード感があり選択肢も潤沢に用意されているオーダーシャツ生地ブランドです。多くの選択肢から選べて本物の高級感を味わえるので、日本の若者にも人気が高まっています。

一般的なコットンとは明らかに違う艶やかさやなめらかな肌触りは、ハイエンドなオーダーシャツ生地として採用されています。そんなカンクリーニの品質の安定感は、創業者ジュゼッペ・カンクリーニの人生を賭けた偉大なる挑戦に由来しています。

カンクリーニ（CANCLINI）に脈打つ挑戦のDNA

ジュゼッペ・カンクリーニは、1900年にコモ湖の村コリコで誕生しました。彼は控えめな家族の中では、活気のある青年に成長します。またジュゼッペ・カンクリーニは生来の創造性と機知に富んだ発想で、若い頃から際立っていました。

彼は音楽が好きで、アコーディオンとピアノを弾くことができ、狩猟とスキート射撃に情熱を注いでいました。彼はまた英語を流暢に話せましたが、当時英語を話せるのは非常に稀な能力だったのです。

機械とビジネスに興味を抱いていた創業者

ジュゼッペ・カンクリーニは繊維関係の機械工を目指して勉強をし、イタリア北部の繊維機械工学を専門とするアルバテにある大手企業オミタに就職します。

そこで彼はシャトル織機の作り方を学びます。その経験を通して自身の技術的な能力の高さを自覚しました。併せ持っていたビジネス志向とあいまって、25歳で織物製造業としてカンクリーニ社を設立したのは1925年のことです。

とはいえ、最初は義父に借りた小屋からの始まりでした。そこで織機を組み立てて肌着用のシルク生地を製造します。

彼がプロデュースする美しいシルク生地は、フィレンツェを最も重要な市場とするトスカーナの織物商によって取引され、徐々に顧客が増えていきました。

聡明なジュゼッペ・カンクリーニはビジネスを始めてまもなく、生地の製造にとって原材料の品質がいかに重要であるかを理解しました。彼はその段階で早くも製造工程全体を自分でコントロールするという目標を定めます。

その目標達成のために、彼は南アメリカと南イタリアで適切な場所を見つけて桑の木を育て、蚕を自分で繁殖させる計画を立てました。

残念ながらそれは実現しなかったのですが、その野心的なプロジェクトは現代の感覚からいえば、グローバルで先見性がある経営戦略と見なすことができます。

戦争の時代を乗り越え、世界市場に進出

カンクリーニ社は戦争によって経営困難にも見舞われましたが、パラシュートを作るためにその技術を転用して生き延びることができました。パラシュート製造には非常に独特で高度な技術的要件がありましたが、カンクリーニ社はそれに応えました。

巧妙な技術で空気を通さずに、大気圏での落下に耐えうる生地を開発したのです。それによって、カンクリーニ社には戦争の困難な時期でも、市場からの需要がありました。

戦後、1955年から1965年の10年間に、ジュゼッペ・カンクリーニの息子であるヴィットリオ・カンクリーニとジャンカルロ・カンクリーニも事業に参加しました。

ヴィットリオ・カンクリーニが技術開発部門の責任を引き受け、ジャンカルロ・カンクリーニがコモに開設された営業部門と管理部門を引き継ぎます。

やがてシルクスカーフとシルクジャカードのガウンの爆発的な流行は、カンクリーニ社とコモの地を世界的に有名にしました。

コモのさまざまな業者から、すでに確立されたフィレンツェのサルトリア（テーラー）、そして新興のナポリのサルトリアまで、取引の声が掛かります。

当時の主力商品はシャツ用のシルク生地で、それをドイツ、フランス、デンマークに輸出することで海外進出への第一歩を踏み出すことができました。

すべての機能をルラーテカッチービオに

1960年代の初期にルラーテカッチービオに新しい工場が建設され、最初の紡績工場も誕生しました。そしてプロセス全体が、一貫して管理されるようになります。

営業および管理部門は、1970年代頃にコモからルラーテカッチービオに移され、生産工場にすべての中枢機能が揃いました。

カンクリーニ（CANCLINI）が、すでに市場が飽和状態に達しつつあるシルクを惜しげもなく捨てて、主力商品をコットンのシャツ生地に切り替えるという大胆で先見的な決定をしたのは1975年頃です。

織機は、シャトル織機とジャカード織機のいずれもがコットン用に転換されました。ほぼすべての企業が同じようにシルク用の織機を調達し、差別化がもはや困難になっていた状況でのコットン生地へのシフトは圧倒的勝利を決定づける戦略でした。

現代のハイファッションに不可欠となったカンクリーニ

1990年代にシモーネ・カンクリーニならびにマウロ・カンクリーニが事業に加わり、強力なグローバルネットワークにもとづいて、世界中のシャツ生地市場での存在感を揺るぎないものにします。

これにより、カンクリーニ（CANCLINI）は、世界の名門テーラーとトップブランドから、ハイエンドのシャツ生地を供給する信頼できる重要なビジネスパートナーとして認識されるようになりました。

アルフレッドダンヒル、アクアスキュータム、ヒューゴボス、ブリオーニ、クリスチャンディオール、エルメネジルド・ゼニア、イートン、エトロ、ハケット、エルメス、イセタン、ポロラルフローレン、プラダなどがカンクリーニの顧客です。

100ヵ国以上の輸出売上高は彼らの総売上高の約4分の3に相当します。また、その約5分の1は、新しいトレンドや製品に対応するための新しいテクノロジーおよびプロセスへの投資に充てられています。

創業者ジュゼッペ・カンクリーニの仕事に対するダイナミズム、創造性、継続的な革新に対する情熱は、イタリアのシャツ生地の最高峰になるという夢を実現しました。

その根本はいまだに変わらず「原材料の品質」です。カンクリーニは原料の研究と先端テクノロジー、そして数十年の経験をいずれも欠けることなく活用し、掛け合わせることにより、現代のハイファッションに不可欠なブランドとなりました。

カンクリーニ（CANCLINI）のコレクションの特徴

カンクリーニ（CANCLINI）のコレクションは、一貫性のあるスタイル提案です。毎シーズン、コレクションは更新されて、常に自社の伝統に忠実でありながら、より多くの素材に新しい魅力を加えています。

開発チームはファッションショー、社会トレンド、一般大衆ほかさまざまなものからインスピレーションを得て、製品に反映しています。そして洗練されたファッション性と最新の製造技術のおかげで、私たちは素敵なバリエーションを数多く見ることができます。

現在使用される素材は最高級のコットンから工業用繊維、人工繊維、ウールからリネンまで多岐にわたります。加工法もプリントから先染め、トップ染め（糸になる前の段階で染める手法）からジャカードまで、製品コンセプトに応じて幅広く採用しています。

カンクリーニ（CANCLINI）がおすすめな人

カンクリーニは、初めてオーダーシャツの仕立てを検討しているみなさんにオススメです。それは品質の安定感やファッション性の確かさ、そして物理的な丈夫さが信頼できるからです。

もちろん、これまでに沢山のオーダーシャツを仕立ててこられたベテランのみなさんにも、カンクリーニにて新たな発見があるかもしれません。

さいごに

創業者の情熱と先見性が現代の製品にも受け継がれているカンクリーニは、年齢や立場を問わず、おすすめできるオーダーシャツ生地です。原料の品質にこだわり続けた100年の伝統は、生半可ではありません。

これから初めてオーダーシャツを仕立てるみなさんも、オーダーシャツに関してベテランのみなさんも、生地選びの有力な選択肢としてぜひご検討ください。

そのラインナップは、私たち銀座英國屋の店舗で見ることができます。ぜひお気軽にお立ち寄りください。

監修者

小林英毅（銀座英國屋 代表取締役社長）

1981年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。 オーダースーツ銀座英國屋の３代目社長。 青山学院大学ファッションビジネス戦略論・一橋大学ＭＢＡ・明治大学ＭＢＡ・ネクストプレナー大学にてゲスト講師。 銀座英國屋は、創業80年。東京銀座・オークラ東京・大坂梅田・大阪あべのハルカス・京都に店舗展開。

ビジネスウェアを選ぶ際の「どなたから、信頼を得たいか？」という視点を軸に、オーダースーツについて、お役に立つ情報をお届けいたします。

オーダースーツ銀座英國屋（東京銀座・東京赤坂・大阪梅田・大阪阿倍野・京都）｜トップへ戻る