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ロングホーズとは?基本からスーツに合わせた選び方・コーデ例も解説
ロングホーズとは?基本からスーツに合わせた選び方・コーデ例も解説

ロングホーズとは膝下まである長い靴下のことであり、メンズのクラシックなスーツスタイルに欠かせない存在です。
ロングホーズと一口にいっても素材や色などはさまざまで、きちんと選ぶのは意外と難しいもの。しかし、難しい分、スーツとロングホーズをうまく合わせられていると、きちんとした印象を与えられるうえに周りとも差をつけられます。
そこで今回のコラムでは、ロングホーズの特徴や選び方、スーツと合わせる際のポイントを分かりやすく解説します。
ロングホーズとはどんな靴下?

ロングホーズとは膝下まである長い靴下のことで、日本では一般的にハイソックスと呼ばれるものです。
英語で「long hose」と表記され、水を撒くホースのように細長い筒状の形をしていることが語源となっています。英語圏では単に「hose」と呼ばれています。
日本では靴下のことをソックスと呼びます。英語での「socks」は短い靴下だけでなく、くるぶし丈からふくらはぎ丈までの一般的な靴下を指し、ロングホーズとは別物です。
クルーソックスとの違い

ロングホーズは、足元を上品にみせる効果があります。見た目の美しさに加え、動いてもずり落ちにくく、スーツスタイル全体をすっきりと整えてくれます。足元の印象は意外と目に留まりやすいため、ビジネスシーンでは意識しておきたいポイントです。
一般的に着用されているクルーソックスは、ふくらはぎの中ほどまでを覆う、扱いやすい長さで、黒や紺といったビジネスシーンに合う色も多く販売されています。革靴とも相性がよく、ビジネス用として十分に使える選択肢のひとつです。そのため、ロングホーズではなく、クルーソックスで問題ないと考える方も少なくありません。
ただ、人の脚はくるぶしからふくらはぎにかけて太くなり、膝に向かって再び細くなる構造をしています。
クルーソックスは、ちょうどふくらはぎの最も太い部分に履き口がくるため、時間とともにずり下がります。特にスポーツなどをしていて筋肉が張っている方などは、その傾向が顕著です。
これに対してロングホーズはふくらはぎを完全に覆う長さがあります。靴下の履き口は膝下まで来て、ふくらはぎよりも小さな周囲でゴムが締まって留まるので、ずり下がる心配が少なく、動きの多い日でも快適に過ごせます。さらに、座ったときに素肌が見えてしまうのを防げるため、足元を美しく保てるのもポイントです。
ロングホーズの歴史

ロングホーズの起源は、中世ヨーロッパの時代まで遡(さかのぼ)ります。この頃は乗馬や狩猟をするのが貴族の嗜みで、狩猟をするときの足元はブーツが定番でした。その際、膝丈のパンツを穿いており、結果としてブーツの丈に合わせた長い靴下であるロングホーズが生まれました。
18世紀に入ると、スーツスタイルにおいて肌を見せないことが礼儀とされるようになり、ロングホーズは紳士の装いに欠かせないものとして定着します。現代においてもこの考え方は根強く残っており、ロングホーズは、身だしなみに対する意識やマナーを表すアイテムとして重宝されています。背景にある歴史を知ることで、ロングホーズの役割をより深く理解できるのではないでしょうか。
ロングホーズの役割
足元は服装全体の印象を左右します。ここでは、ロングホーズの役割について解説しましょう。
素肌を見せない

ロングホーズは、素肌が見えるのを防ぐ役割があります。特にフォーマルな場では、肌の露出を避けることが礼儀とされ、相手に対する敬意を示す身だしなみの一つと考えられています。
ビジネスの場や冠婚葬祭など、改まった場面では外見の印象がその人の信頼性や誠意を映すことも少なくありません。見落とされがちな足元の乱れが、思わぬマイナス評価につながる可能性もあります。
スラックスの裾丈は革靴に軽くかかる程度の長さがあるので、立っているときに、すねが見えることは少なくなります。しかし、座る動作や足を組む姿勢では裾が上がるため、予期せぬタイミングで、すねが見えてしまうことがあります。
こうした場面で気をつけたいのが、靴下の丈です。
ビジネスシーンで一般的に着用されているクルーソックスは、丈がふくらはぎの中間ぐらいの長さであるため、靴下が下がっていると素肌が見える可能性があります。
その点、ロングホーズは膝下近くまでしっかり覆う構造ですので、座ったり足を組んだりしても、素肌が見える心配が少なく、足元の印象をきちんと保てます。
足元を美しく見せる

足元の印象を美しく保つのも、ロングホーズの重要な役割です。
ロングホーズはふくらはぎの上まで長さがあるので、ずり落ちることはほとんどありません。くるぶしあたりに靴下の生地が溜まらず、座ったり足を組んだりしても足首周りをスッキリと美しく見せてくれます。
また、スーツと同じ色の靴下を選ぶことで、スラックスと靴下のラインが自然につながり、脚を綺麗に見せられることもポイントです。
スーツを守ってくれる
ロングホーズには、スーツやスラックスが傷むのを防ぐ役割もあります。
スーツの生地はウールで出来ているものが一般的です。このウールは水分や湿気にはあまり強くありません。短い靴下を履いている場合、膝から下がダイレクトに脚に当たるので、スラックスを傷めてしまう恐れがあります。
その点、ロングホーズは膝下までしっかりと脚を覆ってくれることで、肌が直接スラックスに触れず、生地へのダメージを抑えることができます。
ロングホーズの選び方
では具体的に、どのようなロングホーズを選べば良いでしょうか。ビジネスシーンに相応しいものに焦点を当てて解説します。
丈とフィット感を意識する

スーツスタイルでは素肌を見せないのがマナーとされています。ロングホーズを選ぶときは、丈とフィット感を意識すると良いでしょう。具体的には、靴下を履いたときに上端がふくらはぎの最も太い部分よりも上にあり、膝のすぐ下までしっかり覆っている長さが理想です。
加えて、ズレにくさも快適さに直結します。歩いたり座ったりしたときに下がってこないよう、自分の脚の形に合ったものを選ぶことが大切です。ゴムの締めつけが強すぎると跡が残りやすく、弱すぎると落ちやすくなります。
自分の脚の形に合ったものを選ぶことで、何度も靴下を引き上げる必要がなくなり、ストレスなく一日を過ごせるでしょう。
スーツの色に合わせる
ロングホーズの色はスーツに合わせるのが基本です。例えば、ネイビースーツにはネイビーを、グレースーツならグレーの靴下を選ぶと良いでしょう。
スーツと靴下の色をそろえることで、スラックスから足元までが一本の線のようにつながり、脚を長く見せられる効果が見込めます。ロングホーズ自体は、他のビジネスソックスとそれほど変わらない価格帯ですので、消耗品であることを考慮して複数持っておいて良いでしょう。
柄は無地を選ぶ
ロングホーズの柄は無地を選びましょう。靴下に柄が入っていると、スラックスと靴の間で視線が途切れて、スタイルの一体感が損なわれるためです。
特に、靴下とスーツの両方に柄があると、柄同士がぶつかってしまい、コーディネートが難しくなります。その点、無地の靴下だとスーツに柄が入っていてもお互いに干渉することがなく、コーディネートもしやすくなります。
もし柄が入ったロングホーズを選びたい場合は、ストライプがうっすらと入ったものや、リブで柄を表現したものであればスーツの色、柄にあまり干渉せず、馴染みやすいでしょう。
季節に合った素材を意識する

靴下の素材も意識したいところです。季節に応じたものを履くことで快適に過ごせます。寒い季節には、保温性に優れたウール素材のロングホーズがおすすめです。生地が薄くても暖かさを感じられるため、冬の通勤や外出時でも安心して着用できます。

暑い季節は、ロングホーズを敬遠する方もいらっしゃるかもしれません。そんな方におすすめなのが、通気性の良いコットン素材や、冷感加工が施された靴下です。これらは汗を吸収しやすく、蒸れを抑えるため、足元の不快感を和らげてくれます。
このように、季節に応じて適切な素材を選べば、ロングホーズは一年を通して活躍します。
スーツスタイルで避けた方が良い靴下
スーツスタイルで避けた方が良い靴下はどのようなものでしょうか。以下で詳しく解説します。
丈が短い靴下
丈が短い靴下は避けましょう。丈が短い靴下は足を動かすとすねが見えやすく、ビジネスの場ではマナー違反となります。特にスニーカーソックスは、実用面でも注意が必要です。
履き口が浅いため、靴を脱ぐ際に一緒に脱げてしまうことがあります。こうした状況は、急な訪問や会食などで靴を脱ぐ場面が多い日本では、想定しておきたいリスクのひとつです。安心して過ごすためにも、丈がしっかりあり、足の動きに合わせてずれにくいものを選びましょう。
スーツの色と異なる派手な靴下
ビジネスの場では、スーツの色と異なる派手な靴下は避けた方が無難です。赤や白などの派手な色の靴下がスラックスから覗くと、そこばかりが目立って、スタイル全体のバランスが崩れてしまいます。こうした靴下はカジュアル向けであり、プライベートで履くのが良いでしょう。
靴下選びに迷ったときは、黒無地を選ぶと失敗が少なくなります。どんなスタイルにもなじみやすく、きちんとした印象を演出できます。
生地が厚い靴下
生地が厚すぎる靴下は避けましょう。なぜならこうした靴下は主にカジュアルなシーンで履くことを想定されているからです。黒や紺色などの落ち着いた色であっても、厚みがあると足元だけが浮いて見えるため、全身のバランスが悪くなります。
見た目だけでなく、履き心地にも注意が必要です。特に革靴との相性を考えると、厚手の靴下は慎重に選ぶ必要があります。なかでも、現在履いている革靴のサイズがタイト目である場合、生地が厚すぎると足を圧迫し、歩きづらさや、疲れやすさにも影響を与える可能性があります。
靴のサイズやフィット感に合わせて靴下の厚さを見直すことが、快適に過ごすためのポイントです。
とはいえ、極端に薄い靴下もさけたいところ。肌が透けて見える靴下は不自然な印象を与えやすいので、適度な厚みがあるものを探してみましょう。
劣化した靴下
靴下は使っているうちにどうしても指先に穴が開いたり、かかとが薄くなったりするものです。靴を履けば見えないと思っていると、会食など思わぬところで靴を脱ぐシーンがあるでしょう。そのような場面で傷んだ靴下を見せてしまうのは、やはり好ましくありません。靴下は消耗品ですので、劣化したものは避けて、新しいものに変えましょう。
ロングホーズのコーディネート例
最後にロングホーズを使ったコーディネート例をご紹介します。スーツや革靴に加えて靴下まで綺麗に合わせることができると、統一感の取れた美しいコーディネートになります。ここでは、無地と柄物のスーツ、タキシードに分けて解説します。
無地のスーツ

無地のスーツには、同じ色のロングホーズを選びましょう。例えば、ネイビーのスーツであれば靴下も同じくネイビーを選びます。厳密に同じ色がない場合はおおむね近い色で問題ありません。
柄は無地が良いでしょう。または薄いストライプ柄や、靴下全体にリブでストライプが表現されたものを選ぶのも素敵です。スラックスが無地なので、目立ちにくいストライプであれば相互に干渉せず、スッキリとしたコーディネートになります。
柄物のスーツ

柄物のスーツには、無地のロングホーズを合わせるとよいでしょう。理由は、柄同士の喧嘩を防ぐためです。例えば、チェック柄のスーツに、しっかりとストライプ柄が入った靴下を合わせると、ちぐはぐな印象を与えてしまいます。
このように色でストライプや他の柄が表現されているものは柄物とは合わせづらくなります。一方で、単色で織柄の目立たないストライプ柄などは、それほどスーツの柄に干渉しないので、取り入れるのも良いでしょう。なお、この場合も靴下の色はスーツに合わせます。
タキシード

タキシードには黒い無地のロングホーズを選びます。素材は、フォーマルスタイルの最上級であるシルクが最適ですが、黒い無地の靴下であればコットンやウール、ポリエステルでも問題ありません。現代では、百貨店等でフォーマルの場面にふさわしい靴下が販売されているので、自分に合うものを探してみましょう。
タキシードの選び方や着こなしの詳細は、以下で紹介していますのでご参照下さい。
関連ページ:新婦に喜んでもらえる、新郎タキシードの選び方・着こなし
まとめ

ロングホーズは、見えにくい部分にこそ気を配るという、装いの本質を体現するアイテムです。膝下までしっかりと覆える長さがあるため、肌の露出を防ぎ、足元の印象を整えてくれます。
ビジネスやフォーマルな場面では、こうした細やかな配慮が信頼や誠実さとして受け取られることがあります。だからこそ、靴下の色や長さ、ひとつをとっても気が抜けません。
ロングホーズを選ぶ際は、スーツの色に合わせることを意識しましょう。スラックスと靴の境目が目立たずに全体として1本の線ように見えることから、視覚的な脚長効果が期待できます。
一見、些細なことのように思えるかもしれませんが、そうした細部へのこだわりが、装いに品格や信頼感をもたらすのです。
今回お伝えした内容を参考に、ご自身に合うロングホーズを探してみてはいかがでしょうか。
監修者

小林英毅(銀座英國屋 代表取締役社長)
1981年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。 オーダースーツ銀座英國屋の3代目社長。 青山学院大学ファッションビジネス戦略論・一橋大学MBA・明治大学MBA・ネクストプレナー大学にてゲスト講師。 銀座英國屋は、創業80年。東京銀座・オークラ東京・大坂梅田・大阪あべのハルカス・京都に店舗展開。
ビジネスウェアを選ぶ際の「どなたから、信頼を得たいか?」という視点を軸に、オーダースーツについて、お役に立つ情報をお届けいたします。
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