オーダースーツ 銀座英國屋コラムビジネスシーンでの、ベスト付きスーツ(スリーピーススーツ)のカッコいい着こなし|オーダースーツの基礎知識
ビジネスシーンでの、ベスト付きスーツ(スリーピーススーツ)のカッコいい着こなし|オーダースーツの基礎知識
「ベスト付きスーツ(スリーピーススーツ)がカッコいい!」と思っても、最初は、「どのように着こなせば良いのか?」と不安になるものではないでしょうか?
実際、テーラー(オーダースーツ店)として、そのようなご質問をよく頂戴します。
このコラムでは、特にビジネスシーンを想定し、「ベスト着用のメリット」「ベストの着こなしポイント」「ベスト購入時の注意点」を中心にご紹介します。
なお、ベストの着こなしポイントを先にご紹介すると、以下の通りです。
・ベストの一番下のボタンは外す
・明るめのネクタイがオススメ
・ワイシャツの色は、白がオススメ
・ワイシャツの襟が、ベストの外に出てはいけない
・ワイシャツ or ネクタイの色に合わせてチーフを挿す
このコラムが、重要なポイントをしっかり抑えることでベストをカッコよく着こなし、ビジネスシーンに必要な「信頼を得られる装い」とする参考となりましたら幸いです。
目次
ビジネスシーンで「相手から信頼を得たい」なら、スリーピーススーツがおすすめ
皆さんは夏以外のビジネスシーンで、ベストを着ることはありますか?
多くの方は、ジャケット、スラックスのツーピーススーツのスタイルがほとんどではないでしょうか。
もちろん、ツーピーススーツも、きちんとしたビジネスシーンの装いです。しかし、相手からの信頼を得たい場合、ツーピーススーツにベストを加えたスリーピーススーツのスタイルも選択肢に入れることがオススメです。
今回の記事では、ベストを着ることによるメリットや、デザインの違い、ベスト選びのポイントについてご紹介します。
ベストを着用するメリット
ベストを着用することのメリットは以下の通りです
・より信頼を得られる装いになる
・カッコよくなる(脚長効果)
・防寒対策になる
それでは一つずつ見ていくことにしましょう。
ベスト着用メリット① より「信頼を得られる装い」になる
まず、ベストを着用するメリットの一つ目に、より「信頼を得られる装いになること」があげられます。
現代ではジャケットにスラックスというツーピースの形で着用されることの多いスーツですが、元々はジャケット、スラックスにベストも含めたスリーピースが正式なスタイルでした。
すなわち今現在主流とされるツーピースのスタイルは、本来略式のものであるということです。
伝統的なスタイルというものは、それを身に纏う人に格式や威厳、信頼感をもたらします。
よりクラシックな装いであるスリーピーススーツを着用することで、上司や取引先といった大切な方からの信頼をより得られやすくなります。
ベスト着用メリット② カッコ良くなる(脚長効果)
二つ目のメリットは、ズバリ「カッコよくなる」ということです。
正しくフィットしたスーツは、着る人の体型を、より綺麗に見せてくれます。
特にベストを着用した場合は、スラックスとワイシャツとの境目が見えなくなることで足腰の境が隠れ、脚長効果に繋がりスタイルがよく見えるのです。
また、日本では特に若い人の間ではベストを着用する人の割合はあまり多くありません。上下のスーツに加えてベストを追加することで、より洗練された印象を与えることができます。
最初はベストを着用することに戸惑うこともあるかもしれませんが、ポイントさえ押さえてしまえばそれほど難しいことではありません。ぜひチャレンジしてみましょう。
ベスト着用メリット③ 防寒対策
三つ目のメリットは、ベストを着用することで防寒対策になるということです。
ベストを着るということは身につける衣服が一つ増えることを意味します。着ないよりも着たほうが暖かくなるのは、当たり前と言えば当たり前ですね。
寒さが気になる季節にインナーに頼るのも一つの手ですが、見た目のレベルアップと防寒を一度に満足させられるベストはまさに一石二鳥のアイテムです。
また昨今のコロナウイルス対策として、真冬でも換気のために窓・ドアを開けることも多くなっていますので尚更のことです。
防寒対策の一つに、ベスト着用というアイデアを持っておくことは冬の着こなしのバリエーションを増やすことにも繋がります。
ベストの着こなしのポイント
ここまでベストを着用することのメリットを見てきました。
ただし、数多くのメリットをもつベストですが、着こなしのバランスが取れていなければメリットが得られないどころか、場合によっては逆効果になってしまうこともあります。
ここからは、ベストを着こなすためのポイントを確認していきましょう。
ベストの着こなし① ベストの一番下のボタンは外す
通常、ジャケットの一番下のボタンは留めずに開けたままにしておくのがマナーとされています。ジャケットの裾のラインを美しく見せたり、機動性を確保したりするためです。
アンボタンマナーとも呼ばれるこのマナーは、ベストにも適用されます。特殊なケースを除いてジャケットもベストもアンボタンマナーを前提に作られているため、「原則、一番下のボタンは開けておく」と覚えておきましょう。
ベストの着こなし② 明るめのネクタイがオススメ
ベストを着ると、ツーピースを着る時に見えていたシャツの生地は、多くの部分がベストに隠れてしまい、ネクタイも結び目とその下の部分、つまりネクタイの1/3~1/4ぐらいしか見えなくなります。
また、ビジネスシーンではダークネイビースーツやダークグレースーツといった濃い目のスーツが基本のため、スリーピースのスタイルでは全体の印象が暗くなりがちにもなります。
そうなってしまうことを避けるために、スリーピーススーツを着る際は明るめのネクタイがオススメです。重厚感ある格式高いスタイルの中にも華やかな印象を与えることができます。
ベストの着こなし③ ワイシャツの色は、白がオススメ
ワイシャツの色は白がオススメです。明るい色のネクタイを選ぶ理由と同じく、印象が暗くならないようにするためです。どうしても色付きのシャツを着たいときには、ごく薄い色の生地を選ぶようにしましょう。
ベストの着こなし④ ワイシャツの襟が、ベストの外に出てはいけない
全体のバランスをあまり考えないままシャツを選んでしまうと、シャツの襟がベストの外に出てしまうことがあります。
スーツ姿を綺麗に見せるには上から下までの流れを遮断しないことが大切。襟が外に出てしまうとその部分だけ目についてしまい、整った印象から離れてしまいます。
襟が高すぎたり大きすぎたりするとこうしたことが起こりやすいため、ご自身の体型にあったものを選ぶようにしましょう。
また、襟がベストの外に出てしまうのを避けるために、剣先がベストの内側に入る、襟の開きが大きいデザイン(セミワイド or ワイド)を選ぶこともオススメです。
ベストの着こなし⑤ ワイシャツ or ネクタイの色に合わせてチーフを挿す
繰り返しになりますが、スリーピーススーツの場合、全体に占めるダークな色の割合が多くなり、どうしてもメリハリや立体感が失われがちです。
シャツやネクタイの工夫に加えて、ジャケットの胸ポケットにポケットチーフを差すことも一つの手です。
ポケットチーフは、スーツ全体のバランスを考えて、ネクタイやシャツと同じ色が入っていると、統一感があり、オススメです。
最近はオーソドックスなハンカチーフタイプに加え、あらかじめ、成型に折られた台紙付きの便利な商品もありますので、気軽に挑戦してみましょう。
ビジネスシーン向きのベストのデザイン
続いて、ビジネスシーンにおいてどのようなデザインがふさわしいのか、デザインによってどのような違いがあるのか見ていきましょう。
オッドベスト(別ベスト)は、ビジネスシーンでは難易度が高い
“スーツ”は「同一の生地から作られるひと揃いの服」という意味の言葉です。つまりスリーピーススーツの場合、ベストも同じ生地で作ったものを着用することが基本のスタイルとなります。
ジャケット、スラックスとは異なったスーツ生地で作られた「オッドベスト」は、着こなしのアクセントとなり、組み合わせとしてはオシャレに見えるというのは事実ですが、揃いの生地で作ったベストに比べてどうしてもカジュアルな印象を与えてしまいます。
ビジネスシーンにおいては、上司や取引先にオシャレに見られることよりも、その方達の信頼を得られることの方が重要なはずです。
オッドベストは、デートの時や結婚式の二次会などのカジュアルなシーンで楽しむようにしましょう。
ニットベスト・ダウンベストは、ビジネスシーンではNG
ニットベストやダウンベストも、ドレスダウンしたスタイルです。ビジネスシーンでは着用を避けるようにしましょう。スーツ生地ではない分、オッドベストよりもさらにカジュアルなスタイルといえます。
襟付きベストよりも、襟なしベストがおススメ
海外の映画や、紳士向け雑誌などで襟付きのベストを見る機会も多いのではないでしょうか。華やかでオシャレな襟付きベストですが、ビジネスシーンでは少し華美な印象になり過ぎるかもしれません。
現代のスーツスタイルでは、装飾をつけずシンプルな方がスタイリッシュに見えますし。派手すぎるスーツスタイルはかえって信頼からも遠ざかってしまいます。
ビジネスシーンでは襟なしのベストを選び、襟付きのベストはパーティなどの自由なオシャレが許される場面で着用するようにしましょう。
ダブルベストよりも、シングルベストがオススメ
フロントのボタンが一列だけあるものをシングルベスト、二列になっているものをダブルベストと呼びます。このうちビジネスシーンにオススメなのはシングルベスト。ダブルベストではVゾーンがとても狭くなりコーディネートのバランスが難しくなります。
また、ダブルベストは襟付きのベストと同じく、現代のビジネスシーンでは派手に見えてしまう可能性も高いため、そうした点からもシングルベストがオススメです。
尾錠(背中のバックル)は不要
ベストの背中部分にバックル付きの帯がついていることがあります。これは「尾錠(びじょう)」と呼ばれるものです。
サイズ調整とデザイン性の二つの役割がありますが、サイズ感・シルエットが合っていれば、基本的には不要な装飾となります。
サイズ調整については、購入時にポイントを抑えてチェックをすれば、それほど困ることはないでしょう。
また、尾錠の金具がジャケットの裏地に当たってしまい、裏地を傷つけてしまう可能性もあります。
さらに夏物の薄い生地を使ったジャケットの場合には、ジャケットの背中部分の生地にも干渉して、生地本体にキズをつけてしまうことも考えられます。
食事の前後で大幅にウェスト寸法が変わる方や、ベスト単体の着用が多くデザイン性をどうしても求めたい場合などを除いて、尾錠なしのベストを選ぶと良いでしょう。
ベスト購入時の注意点(サイズ感・シルエットが最重要)
ここまでベストのデザインを選ぶ時のポイントを見てきました。ここからは、ベストを購入するときのポイント、特にサイズ感、シルエットの部分について見ていきましょう。
実は、スーツのジャケットよりも、フィッティングが難しい。
ベストのフィッティングは、ジャケットよりも難しいものです。シャツに続いて体に近い衣服であり、ゆとりがあり過ぎると、ジャケットのシルエットにも影響を及ぼします。また立体的に形を作るための副素材(芯地と言います)も薄いモノしか使用できず、ジャケットのように肩パッドもありません。
自分の体にあっているか、より慎重にチェックしていく必要があります。
胸部分が浮かないか?
ベストを購入する際の一つ目のポイントは「胸の部分が浮いていないか」、という点の確認です。
ベストのサイズが大きいと胸の部分が浮いてしまいます。サイズが大きいベストは見た目で緩んだ印象になってしまい、ベストの特長でもある引き締まった印象を演出できません。上からジャケットを着たときに、中で余ってしまい、見た目ばかりでなく、着心地にも影響します。
ボタンを締めた時に、引きジワが出ないか?
続いてのチェックポイントは、「ボタンを留めたときに余計なシワが出ていないか」という点です。
このシワは体型に対してベストが小さかったときに出るものですが、見た目にもあまり良くありません。
また、胸周りが締め付けられるほどサイズが小さいベストは、ジャケット以上に窮屈に感じます。
フィットしていることは重要ですが、長時間着用して快適であることは大事な要素です。必要最低限のゆとりは確保するようにしましょう。
ベストの着丈の長さは、「ベルトのバックルは見えないようにするが、横裾からはベルトが見える着丈」
ベストの着丈も重要なポイントです。少し細かな内容になりますが、ここを外してしまうと全体のバランスが大きく崩れてしまうため、詳しく見ていきましょう。
少し昔までは、理想的なベストの着丈はどこから見てもスラックスの帯、すなわちベルトが見えない長さとされてきました。また、その頃のスラックスはツータックが基本で、股上が現在の主流な位置よりも深かったため、ベルトが全て隠れるようなベストの着丈でもバランスよく見えました。
しかしスラックスの股上が浅くなっている現代のスーツでは、ベストの着丈をベルトが全て隠れる長さに設定してしまうと、胴長短足に見えてしまい見た目が良くありません。
かといって、ベストとスラックスの間からシャツが覗いてしまうと、「ベストを着用するメリット②」で述べたような脚長効果が期待できなくなってしまいます。
「ベルトのバックルは見えないようにするが、横からはベルトが覗くような着丈」のベストを選びましょう。
ベスト購入するショップの選び方
せっかくいつものスーツに加えてベストを選ぶのですから、その効果が最大限現れるようなベストを購入したいものです。最後に、ベストを購入する「ショップ選びのポイント」をお伝えします。
そのポイントはズバリ、「ベーシックなスタイルを提案している老舗テーラー」を選ぶことです。
先にも述べた通り、ベーシックなスタイルを大きく外れてしまうと、特にビジネスシーンにおいて、ベストのもたらす信頼感は薄くなってしまいます。
また、繊細なフィッティングが必要とされるベストは、体型に合わせてオーダーできるに越したことはありません。
ーシックなスタイルを長年提案し、支持され続けている老舗テーラーでベストを購入(注文)すれば、これまで見てきたようなポイントをしっかり押さえられ、ワンランク上のスーツスタイルを手に入れることができます。
補足:用語説明
三つ揃えスーツ・スリーピーススーツ・ベスト付きスーツ
ジャケット、スラックスにベストを加えたスーツスタイルのこと。
チョッキ・ベスト・ジレ・ウェストコート
全てベストのことを差します。ジレはフランス語、イギリスではウェストコートと呼ばれることが多いようです。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
このコラムでは、特にビジネスシーンを想定し、「ベスト着用のメリット」「ベストの着こなしポイント」「ベスト購入時の注意点」を中心にご紹介いたしました。
ベストの着こなしポイントは、以下の通りです。
・ベストの一番下のボタンは外す
・明るめのネクタイがオススメ
・ワイシャツの色は、白がオススメ
・ワイシャツの襟が、ベストの外に出てはいけない
・ワイシャツ or ネクタイの色に合わせてチーフを挿す
このコラムが、重要なポイントをしっかり抑えることでベストをカッコよく着こなし、ビジネスシーンに必要な「信頼を得られる装い」とする参考となりましたら幸いです。
監修者
小林英毅(銀座英國屋 代表取締役社長)
1981年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。 オーダースーツ銀座英國屋の3代目社長。 青山学院大学ファッションビジネス戦略論・一橋大学MBA・明治大学MBA・ネクストプレナー大学にてゲスト講師。 銀座英國屋は、創業80年。東京銀座・オークラ東京・大坂梅田・大阪あべのハルカス・京都に店舗展開。
ビジネスウェアを選ぶ際の「どなたから、信頼を得たいか?」という視点を軸に、オーダースーツについて、お役に立つ情報をお届けいたします。
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