オーダースーツ 銀座英國屋コラム王家の羊エスコリアルのオーダースーツ生地はまるでクリームの手触りを持つ超高級素材
王家の羊エスコリアルのオーダースーツ生地はまるでクリームの手触りを持つ超高級素材
この世の中にはカシミヤを超える繊細な繊維が存在します。ひとつは「神の繊維」と呼ばれるビキューナです。もうひとつはウールを採取する羊の種の中でも「王家の羊」と呼ばれるエスコリアル種の羊から採れる繊維です。
かつてナポレオン戦争時に絶滅の危機に見舞われた希少種ですが、現在でもニュージーランドで大切に飼育され、エスコリアル社が最高クラスのオーダースーツ生地として発信しています。
今回の記事ではそんな「王家の羊」から採れる生地ブランド「エスコリアル(ESCORIAL)」について、その誕生と生存の歴史や生地の特徴をご紹介します。ウールの中でも最も繊細な生地に興味があるみなさんは、ぜひ参考にしてください。
王家の羊エスコリアル(ESCORIAL)とは?
14世紀、北アフリカのマーグレブを起源とする、小さくて毛が極めて柔らかいユニークな羊の群れが、ムーア人に連れられてスペインに移動し、マドリッドの北西にある平原で放牧されました。
15世紀になってその羊たちはスペイン国王の所有となります。その羊たちから採れる羊毛からの選りすぐりが生地となり、ヨーロッパの王侯貴族の外套衣服に使われるようになります。
スペイン国王が愛したクリームのような羊毛
16世紀にスペイン国王フェリペ2世は、まるで柔らかいクリームのような毛を持つこの羊に興味を持ちました。そして王家専用の羊として、マドリッド郊外の広大な平原を見下ろすエル・エスコリアル宮殿にて大切に飼育させたのです。
エスコリアルの名はその宮殿の名に由来しています。これらの特別な羊が王室の保護下で育てられて、その柔らかいウールが極めて繊細で伸縮性に優れた生地を生み出しました。
エスコリアルあわや絶滅の危機
18世紀にフランス皇帝ナポレオンがスペインに侵攻した際に、エスコリアル羊は戦火でほとんど死滅します。しかしその前にスペイン王室はドイツのザクセン選帝侯フリードリヒ3世に、エル・エスコリアル羊を贈呈しており、絶滅は避けられました。
やがてザクセン選帝侯領において、クリームのような羊毛が採取できるようになります。
1829年に、羊の希少性に気づいたスコットランド人女性、エリザ・ファーロンジュは120頭のエスコリアル種の羊を、羊が育つための環境として最適なオーストラリアのタスマニアに連れて行きました。
彼女の先見の明によって、この希少な純血種が現在も残っているのです。
エスコリアル社創業者の情熱
エスコリアル社(ニュージーランド)の創業者ピーター・ラドフォードは今から40年以上前に、エスコリアル種の羊から採れる繊維の稀に見る特性に注目しました。
そして1987年、オーストラリアからニュージーランドの南島のなだらかな草原に40頭の子羊を連れて来たのです。
それ以来、彼の情熱は変わることなく、彼の大切な顧客に「起源まで遡れる純血種」のエスコリアル種の原毛を用いた生地製品を提供してきました。
今日、本来のエスコリアル種の直系にあたる子孫は、ニュージーランドの南島とオーストラリア南部にある自然の牧草地で放牧されています。
最高の素材と最高の技術の出会い
エスコリアル社のパートナーは、時代を超えた品質を実現できるデザイナーや織布および編み物の職人です。贅沢で繊細すぎる天然繊維を損なうことなく製品化する彼らの理解と技術は、エスコリアル繊維が世界的に認められることを可能にしました。
関係者全員の責任感と使命感が、尊い歴史の一部を保存する役割を果たしています。
エスコリアルは極めて繊細な繊維のため、紡績と織布の末に生地として製品化するプロセスを作り上げるまでに長い年月を要しました。ようやく2002年に、世界で最も繊維が細いウールとして認定されます。
エスコリアル(ESCORIAL)の生地の特徴
普通の羊に比べて半分以下の大きさであるがゆえに、出生率は年に1頭の母羊から0.6頭という低い繁殖力しかありません。その原毛の軽さは実にカシミヤの半分です。収穫量は極めて少なく、カシミヤの1%にも及ばない年間80~100トンです。
エスコリアルと他の生地との決定的な違いは、自然にコイル状に巻かれたバネのような繊維が生み出す強いシュリンク性にあります。この柔軟な特性により、独特の柔らかい手触りを備えたドレープと比類のない弾力性が備わった快適な生地が生まれます。
エスコリアル(ESCORIAL)がおすすめな人
エスコリアルのオーダースーツ生地がおすすめな人は、これまでもスーパー150’sなどの上質ウールでオーダースーツを仕立てた経験があるみなさんです。さらに別格の存在があることを体感すれば、その人のスーツスタイルをさらに磨き上げるでしょう。
本当の贅沢なので、しょっちゅう着用することはないでしょうが、ここぞというハレの日や勝負のときに着用してその場に臨めば、きっと素晴らしい結果につながることでしょう。
さいごに
普通の生活では出会うことはないような、数奇な運命を持つ希少な羊の原毛による「王家の羊」のエスコリアル繊維ですが、エグゼクティブのみなさんには1着だけでもワードローブに欲しいものです。
どこまでも柔らかくて軽く、優しいバネのような弾力を秘めたエスコリアルには、価格以上の高い付加価値があります。エスコリアルに興味が惹かれるというみなさんは、ぜひ銀座英國屋にお声掛けください。
監修者
小林英毅(銀座英國屋 代表取締役社長)
1981年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。 オーダースーツ銀座英國屋の3代目社長。 青山学院大学ファッションビジネス戦略論・一橋大学MBA・明治大学MBA・ネクストプレナー大学にてゲスト講師。 銀座英國屋は、創業80年。東京銀座・オークラ東京・大坂梅田・大阪あべのハルカス・京都に店舗展開。
ビジネスウェアを選ぶ際の「どなたから、信頼を得たいか?」という視点を軸に、オーダースーツについて、お役に立つ情報をお届けいたします。
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