ニュースや報道番組などで、謝罪会見の場面を目にすることがあります。多くの場合はスーツ姿で臨みますが、人によって服装はまちまちで、中には謝罪の意が伝わりにくいケースも見受けられます。

実際にはテレビで見るような謝罪会見を執り行うケースは少ないかもしれませんが、仕事のミスやクレームなどへの謝罪として、お相手先を訪問することは日常でもあり得るのではないでしょうか。ご無礼のないよう、相応しい装いをきちんと知っておきたいところです。

このコラムでは、謝罪会見のときの服装、スーツについて詳しく解説いたします。

なお、謝罪会見の服装のポイントを先に紹介すると次の通りです。

・謝罪会見の服装はスーツスタイル一択

・スーツはシングルスーツを選ぶ

・色は暗いトーンのダークネイビーまたはダークグレー

・スーツは無地柄のみ

・サイズが合ったものを着る

・謝罪会見で使うシャツは、白無地のシャツ

・シャツはジャストサイズのものを選ぶ

・シャツの第一ボタンまできちんと留める

・ネクタイは、派手なもの、主張が強いもの、明るいものは避ける

・結び方は、ディンプルは不要

・オススメはネイビーの無地ネクタイ

・謝罪会見で履くべき靴は、黒のストレートチップ

・靴は綺麗に手入れしたものを履く

・ベルトは、靴の色に合わせた革製のものを

・ポケットチーフ、ネクタイピンは不要

このコラムが、謝罪をする際の服装のご参考となりましたら幸いです。

謝罪会見の服装はスーツスタイル一択

謝罪会見の目的は、まず、お相手や関係者に「謝罪の意を伝えること」。真摯にお相手に向き合っていることや、反省していることを伝えるために最適な服装は、スーツ一択です。

最近では服装のカジュアル化が進み、単品のジャケットとスラックスを合わせたジャケットスタイルも定着していますが、フォーマル度合いは、やはり上下が共生地で作られたスーツに軍配が上がります。

そのため、謝罪会見にはスーツが必須と言えるでしょう。
ここからは、具体的にどのようなスーツを選べば良いかを解説します。

スーツはシングルスーツを選ぶ

スーツには大きく分けて２つのスタイルがあります。
１つは一般的なシングルスーツ。もう一つは、ボタンが縦２列に配されたダブルスーツです。

それでは、謝罪会見ではどちらのスーツを選べば良いでしょうか。シングルスーツよりもダブルスーツに畏まった印象を持たれて、謝罪会見には向いているように思われる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、ダブルのスーツには畏まった印象がある一方、威圧感や権威性を感じさせることがあります。これはシングルスーツに比べ、ダブルスーツのジャケットのラペル（下襟）が大きく作られていたり、襟の先端が上方向に向いていたりするためです。

謝罪会見では、謝罪する側が権威を持っているように見えるのは逆効果となりますので、会見時はシングルスーツがオススメです。

また、シングルスーツでも、ジャケットの下襟の先端が上方向に上がったピークドラペルの仕様は避け、通常のノッチドラペルのデザインを選びましょう。謝罪時には、シングルスーツの中でも最もベーシックな仕様が望ましいと言えます。

色は暗いトーンのダークネイビーまたはダークグレー

スーツの色は、ライトグレーなどの明るい色味のものは、カジュアルな印象を与えることがあるので、謝罪会見には不向きと言えるでしょう。オススメは、黒に見えるほどのダークネイビーやダークグレーなどの、暗いトーンのスーツです。

なお、「暗い色のスーツ」ということで黒のスーツを選ばれる方もいらっしゃいますが、黒のスーツは本来、結婚式やレセプションなどの式典、儀式などで使うものです。謝罪会見はあくまでビジネスシーンの延長であるため、黒のスーツよりもダークネイビー、ダークグレーのスーツの方が適しているでしょう。

スーツは無地のみ

また、スーツにストライプやチェックなどの柄が入ると華美な印象に映るため、謝意を伝える謝罪会見の場には不向きであると言えます。スーツの柄は、無地一択です。織りでストライプが表現されているシャドーストライプという柄もあり、これは遠目で見ると無地にも見えますが、光の当たり方によってはストライプ柄が浮き出てるため、織柄もないプレーンな無地のスーツが最適です。

サイズが合ったものを着る。

スーツを着る上で、もっとも重要なのはサイズ感です。ゆったり目のスーツをお召しの方がいらっしゃいますが、ぶかぶかで不必要なシワが入ったスーツは、ルーズな印象を与えかねません。

これは謝罪会見時の服装はもちろん、スーツを着用するシーンでは全て共通します。スーツはサイズが合ったものを着るようにしましょう。

参考として、スーツのサイズ感について詳しく解説している下記のページもご覧ください。

スーツはサイズ感が命！｜正しいスーツ選びのチェックポイント｜オーダースーツの基礎知識

謝罪会見で使うシャツ

謝罪会見で着るスーツについては、上で解説した通りですが、では中に着るシャツはどのようなものが良いでしょうか。ここでは、シャツについて解説します。

オススメは白無地のシャツ

スーツがベーシックであれば、「中に着るシャツは、無地でなくても良いのでは？」と思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし、仮に目立たないストライプ柄のシャツであっても、人によっては「謝罪の場でオシャレを意識している」という目で見られる恐れがあります。

また、織りでストライプ柄やチェック柄があしらわれたシャツもあり、これは遠目では無地にも見えますが、光の加減によっては柄が目立つこともあります。

謝罪の場では、最もオーソドックスな装いが一番です。
シャツも、白の無地で平織り（織柄がないもの）を選ぶようにしましょう。

シャツはジャストサイズのものを選ぶ

スーツの中に着るシャツは、ジャストサイズのものを選びましょう。サイズが大きすぎるシャツは、スーツの上着ジャケットの中でもたついてしまい、不要なシワが入ったり、また、だぶついたシャツはスーツ自体にも余計な影響を及ぼすことがあります。

シャツのサイズが合っているかは、ネックサイズ、肩幅、袖丈、身幅などで確認しますが、これらが全てきれいに合うのは難しいものです。そのため、市販のシャツでジャストサイズのものがなければ、スーツ店などでオーダーするのも一案です。

白シャツはビジネスシーンでは必須ですし、一度オーダーをしておけば、その後は体型が変わらない限り同じパターンでジャストサイズのシャツが仕上がるため、シャツを探す手間がなくなるというメリットもあります。

シャツの第一ボタンまできちんと留める

スーツスタイルでは、ネクタイを締めるとシャツの第一ボタンが隠れるため、ボタンまで留めているかどうかは一見すると分かりません。そのため、楽さだけを求めて第一ボタンを留めずにネクタイをする方も時折いらっしゃいます。しかし、第一ボタンを留めずにネクタイを締めると、シャツの前身頃に縦方向のシワが寄ってしまい、お相手に見苦しい印象を与えかねません。

謝罪の場では、謝罪の意や誠実さを伝えることが命題ですので、シャツの第一ボタンは必ず留めるようにしましょう。

謝罪会見で使うネクタイ

スーツスタイルでの必須アイテムであるネクタイ。謝罪会見では、どのようなネクタイがふさわしいのでしょうか。ここではネクタイについて解説します。

派手なもの、主張が強いもの、明るいものは避ける

謝罪会見では、ときとしてお相手や関係者がご立腹になられているケースもあります。そのような時に、ネクタイがオシャレさをアピールするものであったり、派手なものであると却って反感をかってしまう恐れがあります。

そのため、謝罪会見時に締めるネクタイは、派手なものや主張が強く感じられるものは避けましょう。また、柄がなくても色味が明るいものも、同じ理由で選ばない方が無難と言えます。

オススメはネイビーの無地ネクタイ

謝罪会見で使うオススメのネクタイは、ネイビーの無地のものです。無地のネクタイはソリッドタイとも呼ばれ、真面目で誠実な印象を与えます。ネイビーの無地ネクタイは、ビジネスシーンでも使える重宝するアイテムですので、ぜひ1本は持っておきましょう。

結び方にも注意が必要

ネクタイを結ぶ際、ノットと呼ばれるコブの部分からネクタイの結び紐が見えてしまうと、だらしない印象を与えてしまいます。そのため、ネクタイはしっかりと締め上げましょう。

ちなみに、ネクタイを結ぶ上で「ディンプル」と呼ばれる技術があります。これはノットの真下の大剣を意図的にくぼませるテクニックです。くぼんだ様がえくぼの形に似ていることからディンプル（英語で「えくぼ」の意味）と呼ばれます。このディンプルを作ることでネクタイ、Vゾーンが立体的になり華やかさを演出することができます。一般的なビジネスシーンや結婚式などの式典では有効なテクニックなのですが、謝罪会見ではディンプルは作りません。謝罪会見はあくまで反省を述べて謝罪の意を伝える場なので、オシャレの要素であるディンプルは不向きだからです。

謝罪会見で履くべき靴

謝罪会見では、どのような靴を選べば良いでしょうか。ここでは会見時にオススメの革靴について解説します。

革靴にもフォーマル度合いで差がある

革靴と一括りに言っても色やデザインなど様々な種類があります。詳細は省略しますが、大きく分けると紐靴か否か、茶か黒かでフォーマル度合いが異なります。

紐靴の方がフォーマルであり、茶より黒の革靴の方がフォーマルな装いになります。そのため、謝罪会見で紐靴ではないローファーを履くのは望ましくありません。必ず紐靴で、色は黒の革靴を選びましょう。

オススメは黒のストレートチップ

黒の紐靴の中でも、最もフォーマル度合いが高いものが、ストレートチップと呼ばれるデザインのものです。これは、靴の甲のつま先部分に横一文字のラインが入っている革靴です。フォーマル度合いが高いため、謝罪会見などの畏まった場にふさわしい靴と言えます。

また、革靴の中には穴飾りが施されているものがあり、オシャレな雰囲気を演出できますが、謝罪会見で使うのは避けた方が無難でしょう。謝罪会見の場では、装飾のないプレーンなストレートチップをオススメします。

靴は綺麗に手入れしたものを履く

このように、履くべき革靴は黒のストレートチップですが、靴が傷んでいたり汚れていたりすると、そこばかりが目立ってしまいます。靴はコーディネート全体に占める割合がそれほど大きくありませんが、意外に見られているものです。きちんと手入れをされた靴を履きましょう。

その他の小物アイテム

最後に、スーツや靴以外の小物アイテムについて解説します。

ベルト

スーツスタイルでのベルトは革製で、靴の色に合わせるのが基本です。謝罪会見では靴の色が黒となりますので、ベルトも黒の本革製のものにしましょう。また、ベルトは幅が太くなるほどカジュアルな印象になるため、太すぎないベルトを選ぶ必要があります。3cm前後のものを選びましょう。

また、ベルトにステッチなどが入るとカジュアルな印象になるので、シンプルで装飾のない無地のものを選ぶようにしましょう。

ポケットチーフ

スーツスタイルでは、胸ポケットにポケットチーフを挿すことがあります。これはポケットチーフを挿すことで華やかさを演出する効果があるからです。

しかし、謝罪会見は謹んでお詫びの気持ちを伝える場。このような華やかさの演出は、逆効果となってしまいますので、ポケットチーフを挿すのは避けましょう。

ネクタイバー

ネクタイバーには、ネクタイが動かないように固定する役割があります。日常的にネクタイを締めている方で、お使いの方も多い実用的な小物アイテムです。

しかし、オシャレや装飾的な意味合いに感じる方もいらっしゃるので、謝罪会見の際は外した方が良いでしょう。

靴下

靴下まで気を抜かないようにしましょう。

ときおり、スーツスタイルでスニーカー用の短い靴下を履いている方が見受けられますが、短い靴下は足を曲げた際に脛が見えてしまうためマナー上NGです。「ロングホーズ」と呼ばれる長さが膝下まである靴下を選び、脛が見えないように注意をしましょう。
また、白のリブソックスなどを履くと、スーツのズボンと靴が異なる色で分断され、そこに目が向いてしまうため、靴下の色をスーツの色に合わせることがオススメです。

まとめ

このコラムでは謝罪会見のときの服装、スーツについて詳しく解説しました。

なお、謝罪会見の服装のポイントを改めて紹介すると次の通りです。

・謝罪会見の服装はスーツスタイル一択

・スーツはシングルスーツを選ぶ

・色は暗いトーンのダークネイビーまたはダークグレー

・スーツは無地柄のみ

・サイズが合ったものを着る

・謝罪会見で使うシャツは、白無地のシャツ

・シャツはジャストサイズのものを選ぶ

・シャツの第一ボタンまできちんと留める

・ネクタイは、派手なもの、主張が強いもの、明るいものは避ける

・結び方は、ディンプルは不要

・オススメはネイビーの無地ネクタイ

・謝罪会見で履くべき靴は、黒のストレートチップ

・靴は綺麗に手入れしたものを履く

・ベルトは、靴の色に合わせた革製のものを

・ポケットチーフ、ネクタイピンは不要

このコラムの重要なポイントをしっかり押さえることで、謝罪会見の際の服装の参考となりましたら幸いです。

また、スーツは正しく着こなすことで、お相手への誠意が伝わりやすくなります。こちらの記事もご覧下さい。

ネイビースーツの着こなし方｜シーン別のオススメ着こなしもご紹介。

監修者

小林英毅（銀座英國屋 代表取締役社長）

1981年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。 オーダースーツ銀座英國屋の３代目社長。 青山学院大学ファッションビジネス戦略論・一橋大学ＭＢＡ・明治大学ＭＢＡ・ネクストプレナー大学にてゲスト講師。 銀座英國屋は、創業80年。東京銀座・オークラ東京・大坂梅田・大阪あべのハルカス・京都に店舗展開。

ビジネスウェアを選ぶ際の「どなたから、信頼を得たいか？」という視点を軸に、オーダースーツについて、お役に立つ情報をお届けいたします。

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