オーダースーツ 銀座英國屋コラム
スーツの後ろにあるしつけ糸は切っていい?場所や正しい外し方を解説
スーツの後ろにあるしつけ糸は切っていい?場所や正しい外し方を解説
新品のスーツを買ったとき、ジャケットの後ろなどに白い糸が縫い付けられていて「これは何だろう?」と疑問に思ったことはありませんか。そのまま着ていいのか、それとも切るべきなのか、処理に戸惑った経験をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
この白い糸は「しつけ糸」です。スーツの型崩れを防ぐ役割を持ち、着用前に切ることが基本です。しかし、一見しつけ糸に見えて実は切ってはいけない糸も存在します。対応する前には、切っても問題ない糸と、つけたままにしておくべき糸を見極めることが必要です。
この記事では、切るべきしつけ糸の場所や役割、生地を傷めない正しい外し方を解説します。初めてのスーツでもしつけ糸を正しく処理し、かっこよく着こなす参考になれば幸いです。
目次
白い糸で×印に縫われているのは「しつけ糸」
しつけ糸は、購入したばかりのスーツに見られる、×印などで縫い留められた糸のことを指します。生地と同化しないようにあえて白などの目立つ色が使われ、購入者が存在に気づきやすいようになっているのが特徴です。製造過程から購入・着用されるまでの生地の仮留めを目的としており、着用する前に取り外すことが前提とされています。
しつけ糸は型崩れを防ぐ&新品の証明
しつけ糸は、スーツの型崩れ防止を目的としています。ジャケットの背中などは衣擦れなどで傷みやすく、生地が弱るとシルエットにも影響が出かねません。そこで、動きやすい部分を糸で軽く固定して、輸送や店舗での保管、試着などによって生じるダメージからスーツを守る役割を、しつけ糸が担っています。製造後から販売されるまで魅力的な形状を保ち、購入者の満足感をより高めてくれるしつけ糸は、スーツには欠かせない存在です。
また、しつけ糸にはスーツが新品であると証明する意味合いもあります。多くの方は着用前に外すことから、しつけ糸がついたままのスーツであればまだ誰も着用していないと考えられるからです。しつけ糸の有無は、そのスーツが新しいかどうかを見分けるポイントになります。
【場所ごとに解説】スーツのしつけ糸はどこにある?
しつけ糸はジャケットやスラックスの様々な箇所に施されており、基本的には着用前にすべて外すことが推奨されます。しかし、しつけ糸は気づきにくい部分についていることもあるので、着用前の入念なチェックが不可欠です。見落としや外し忘れを防ぐ意味でも、しつけ糸がついている場所を事前に把握しておくと安心できます。
ここでは、スーツについているしつけ糸の位置を解説します。
ジャケットの背中側にある切れ込み

ジャケットの背中側にある裾の切れ込みはベントと呼ばれ、多くの場合×印や一文字に縫われたしつけ糸がついています。着用者からは見えづらい位置にあるので、外し忘れが起こりやすいポイントです。ベントが糸でつながっていると動きにくくなり、見た目の美しさも損なわれてしまいます。
ベントはデザインによって位置が異なり、それによって糸の場所も変わります。着用前に背中側まで入念にチェックをすることで、スーツの後ろ姿もスタイリッシュに整います。
関連ページ:スーツは後ろ姿までカッコよく!気を付ける箇所を分かりやすく解説
ジャケットの腰/胸ポケット

ジャケットは腰と胸にポケットがあり、それぞれの口をしつけ糸で留めてシルエットが崩れないよう保護しています。胸のポケットについてはポケットチーフを挿す場合があるので、しつけ糸を外して使用可能な状態にしておくことが基本です。
腰ポケットに関してもしつけ糸を外すことがほとんどです。しかし、物や手を入れないようにあえて糸を外さないという選択肢もあります。これは、腰ポケットに物を入れるとジャケットのシルエットを崩してしまう点や、ふさがっていても機能面に支障は出ないという点に基づいた考え方です。しつけ糸を外した場合もできる限り物を入れないよう意識すると、ジャケットの型崩れを避けられます。
関連ページ:スーツのポケットはどう使う?種類や役割マナーの基本を解説
ジャケットの肩

肩部分の構築的なシルエットはスーツの大きな魅力です。その形状を保つべく、ジャケットの肩にもしつけ糸がついています。機能的な支障が出にくいので、そのまま着用してしまうケースもあります。正面から目につきやすい部分なので、取り忘れには注意が必要です。
スラックスの後ろポケット

ジャケットだけでなく、スラックスの後ろポケットにもしつけ糸がついていることがあり、チェックが必要なポイントです。ここの糸が外されていないと座ったときに縫い目が引っ張られ、生地が傷んでしまうおそれがあります。ハンカチなどの小物を入れることも多い部分なので、事前に確認しておくと安心です。
袖口のタグは外すのが基本

新品のスーツを購入した際、袖口にブランドロゴや生地メーカーの名前が書かれたタグがついている場合があります。これらは主に、販売時のメーカー名のアピールや生地の紹介といった意味合いを持ちます。有名ブランドのロゴなどはデザインの一部に思えるかもしれませんが、取り外して着用するのが基本です。四隅を簡易的に縫い留めているだけなので簡単に取り外せるうえ、綺麗な状態で保管できます。
ただし、最初からタグをデザインの一部として取り入れているケースもあることは注意が必要です。この場合はタグが外れないようにしっかりとミシンで縫い込まれており、無理に外す必要はありません。外すべきかどうか判断がつかない場合は、購入した店舗などで確認をすると確実な対応ができます。
しつけ糸のようで外してはいけない糸がある
これまで見てきたように、しつけ糸は基本的に切って外してから着用することが前提です。しかし、デザインとしてのステッチは一見するとしつけ糸のように見え、間違えて外してしまうことがあります。万が一必要な糸を切ってしまうと、生地がほつれるほか、本来のデザインが損なわれるなど、様々な支障が生じるので注意が必要です。
ここでは、着用前に外す必要があるしつけ糸と、外してはいけないステッチの見分け方を解説します。切る前にその糸が本当に仮留め用の糸なのかをしっかりと見極めることが大切です。
デザインとしてのステッチとしつけ糸の見分け方

しつけ糸とステッチはつける目的が異なります。しつけ糸は仮留め、ステッチはデザインとして取り入れられており、役割の違いが見た目などにも表れます。しつけ糸とステッチを見分けるうえでは、この違いをとらえることが重要です。
たとえば、しつけ糸は取り外すことを前提としているので、生地に埋もれないよう白色などを使って目立たせているケースが多くなります。対するステッチはデザインとして調和するように、生地と同系色を使うことがメジャーです。ただし、カジュアルな作りなどデザイン性を求めた場合は、あえて目立つ色が使われることもあります。
両者の違いは縫い目にも見られます。しつけ糸の場合は生地から少し浮いて見え、指で軽く引っ張ったときに糸が動くくらい粗く縫われているケースが多くなります。一方でステッチは縫い目が細かく均一で、生地にしっかりと馴染むように縫い込まれており、引っ張っても簡単には動きません。
万が一必要な糸を切ってしまうと、自分では直せない事態に陥ってしまう恐れがあります。明らかに仮留めであると判断できるもの以外は、慎重な判断が求められます。
判断に迷ったときはどうする?
ご自身で確認しても、しつけ糸なのかステッチなのか判断がつかない場合もあります。そのようなときは無理に切ろうとせず、専門的な知識を持つプロの目で見極めてもらうのが確実です。スーツを購入した店舗や、日頃から利用しているクリーニング店、洋服のお直し専門店などに持ち込むと適切に判断できます。
スーツのしつけ糸をきれいに取る方法
しつけ糸を取り除くときは、丁寧に扱わないと生地を傷めてしまいます。正しい手順で作業をして、スーツを傷つけないように扱うことが大切です。ここでは、しつけ糸をきれいに取る方法を解説します。
ハサミやリッパーを使用する

しつけ糸を取ろうとして力任せに引っ張ると生地に負担がかかり、スーツを傷つけてしまいます。外すときには、裁縫用の小バサミやリッパーという手芸用の糸切り道具を使うと安全です。適切に道具を用いると、スーツを不用意に傷つけず、綺麗なシルエットを保ったまましつけ糸を取り除くことができます。
これらのアイテムがない場合は、刃先の細いハサミを使用すると、生地を傷めにくくなります。ただし、扱いには十分な注意が必要です。
生地を傷めない手順
実際にしつけ糸を外す際は、生地を傷めない手順を事前に確認しておくとスムーズに進められます。ここからは、綺麗にしつけ糸を外す手順を説明します。
まずはしつけ糸の真ん中あたりを指で優しく持ち上げ、生地と糸との間に小さな隙間を作ります。その隙間にハサミの刃先やリッパーをそっと滑り込ませて、糸だけを切ることが重要です。糸が切れたら、残った糸の両端を指で軽くつまんでゆっくりと引き抜けば、生地を傷めずきれいに糸を取り外せます。もし途中で引っ掛かる場合は無理に引っ張らず、もう一度ハサミやリッパーを入れてほどきます。
しつけ糸を取ったあとのスーツのお手入れ
一着のスーツを長く愛用するうえでは、継続的なお手入れが欠かせません。購入するまではしつけ糸が型崩れを防いでいましたが、外したあとは自分がスーツを守るという意識が必要です。特にジャケットの魅力でもある立体的な肩回りや、ポケット付近のシルエットを維持するには、日々適切に保管することが求められます。
肩部分は、スーツ用のハンガーを使用することが大切です。しっかりとした厚みを持ったハンガーならジャケットを内側から支えられ、自重でつぶれてしまうことを防いでくれます。また、ハンガーにかける際にポケットに物を入れたままだと、重みで生地に負担がかかってしまいます。ハンガーにかける際はポケットの中身をすべて出しておくことも、スーツを長持ちさせるポイントです。
また、脱いだスーツはすぐにクローゼットへしまわず、風通しの良い場所で陰干しをすることも効果的です。着用後のスーツには湿気やほこりが付着しており、そのまま密閉されたクローゼットに入れると生地が傷んでしまいます。しまう前に湿気を逃がし、ブラッシングをして生地の状態を整えると、スーツをよいコンディションで保管することができます。
関連ページ:【保存版】スーツの生地を長持ちさせるお手入れ方法とクリーニングの注意点
まとめ
この記事では、新品のスーツについているしつけ糸の役割とついている場所、正しい外し方について解説しました。
しつけ糸は、購入したスーツを着用するまで美しく保つ大切なものです。着用前にベントやポケット、肩などについている糸を外し、袖口のタグも適切に処理することで、スーツが理想的な姿になります。外し方に迷った際や、ステッチとの見分けがつかない場合は、無理をせずにプロへ相談することが推奨されます。
この記事が、しつけ糸の扱いに困っていた方の助けとなれば幸いです。
監修者

小林英毅(銀座英國屋 代表取締役社長)
1981年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。 オーダースーツ銀座英國屋の3代目社長。 青山学院大学ファッションビジネス戦略論・一橋大学MBA・明治大学MBA・ネクストプレナー大学にてゲスト講師。 銀座英國屋は、創業80年。東京銀座・オークラ東京・大坂梅田・大阪あべのハルカス・京都に店舗展開。
ビジネスウェアを選ぶ際の「どなたから、信頼を得たいか?」という視点を軸に、オーダースーツについて、お役に立つ情報をお届けいたします。
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