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フラワーホールとは?スーツの胸元を上品に整える使い方を解説
フラワーホールとは?スーツの胸元を上品に整える使い方を解説
多くのスーツの下襟(ラペル)には、小さな穴が設けられています。この穴は「フラワーホール」と呼ばれ、普段はあまり意識されないものの、装いにさりげない華やかさや品格を添える重要なディテールです。きちんと整えられたフラワーホールは、スーツの仕立ての良さを物語り、品のある雰囲気を添えてくれます。
本記事では、フラワーホールの由来から、胸元を上品に演出するポイントまで分かりやすく解説します。ワンランク上の着こなしを目指している方の参考になれば幸いです。
フラワーホールとは

フラワーホールとは、ジャケットのラペル(下襟)の左側に開けられた、飾り穴のことです。英国では「ボタンホール」と呼ばれることもありますが、右襟に留めボタンはなく、実際に留め具として使うものではありません。現在では、ラペルピンや社員章を付けるといった装飾的な役割を担っています。
フラワーホールの横幅は、穴を大きく開けすぎず控えめに仕上げられているのが特徴です。ピンバッジが安定しやすいよう、内部には繊細な工夫が施されており、仕立ての良さを感じることができる部分でもあります。
フラワーホールの歴史と由来
フラワーホールは直訳すると「花を挿す穴」ですが、もともとは装飾が目的ではありませんでした。
スーツの原型とされる初期の洋装は、軍服に由来するといわれています。かつては風の強い日や寒さをしのぐ際の対策として、襟をしっかり留められるよう左襟にボタンホール、右襟の裏側に対応するボタンが付けられていました。やがて狩猟用コートの影響で襟を折り返すスタイルが広まると、実用としてのボタンは姿を消し、ボタンホールだけが飾り穴として残りました。
19世紀には、こうした名残のボタンホールに生花を挿してパーティーへ出席することが貴族の間で流行します。これが「フラワーホール」という呼び名の広まりにつながりました。また、男性が女性にプロポーズする際、女性が承諾の意を込めて花束から一輪を抜き、男性のラペルに挿したという逸話も語り継がれています。
フラワーホールの位置はスーツによって違う?
フラワーホールは基本的に左ラペルに設けられますが、スーツの構造やデザインによって、その配置や見え方に違いが生まれる場合があります。ここでは、シングルブレストとダブルブレストのスタイルごとに、フラワーホールの特徴を解説します。
シングルブレスト

シングルブレストとは、正面のボタンが一列に並ぶ最も一般的なジャケットのスタイルです。フラワーホールは、前述の歴史に触れたように、通常は左側のラペルに一つだけ設けられています。
一方で、ピークドラペルを採用したシングルジャケットの中には、左右双方にフラワーホールを備えるものも見られます。元来、ダブルブレストの様式に由来する意匠で、左右対称の美しさを引き立てるよう取り入れられたデザインです。クラシックな雰囲気をまとわせたい一着に使われることが多く、細部へのこだわりが感じられるディテールといえます。
ダブルブレスト

ダブルブレストとは、正面のボタンが二列に配される重厚感のあるスタイルです。風格と構築的なシルエットが特徴で、クラシックな装いを好む方に長く親しまれています。
伝統的なダブルブレストには、左右両方のラペルにフラワーホールが設けられていました。かつては襟を深く重ねて留めるつくりであった名残があり、対称性を大切にするフォーマルな意匠がそのまま受け継がれています。
しかし現代のダブルブレストでは、より端正で簡潔な印象を求め、左側のラペルのみにフラワーホールを設けているものも増えています。より簡略化されモダンな感覚を取り入れた、軽やかなデザインといえます。
また、視覚的なバランスが整うよう、フラワーホールの位置がシングルブレストよりもわずかに高くなることが多いのも特徴です。ここから、ラペルの流れをより美しく見せる細やかな配慮が伺えます。
フラワーホールの使い方
フラワーホールにはいくつかの使い方があり、装いに個性や品の良さを添えてくれるのが魅力です。ここでは、その代表的な用途を三つご紹介します。シーンや気持ちに合わせて選び、スーツをより心地よくまとっていただければ幸いです。
社章やバッジをつける

フラワーホールは、社章やバッジを装着する場所として広く用いられています。もっとも一般的な使い方のひとつであり、企業の一員としての姿勢を示す役割を持つものです。
社章を身に着けることで、顧客へ誠実さや安心感が伝わり、装い全体にも端正な印象が加わります。所属する組織への思いを深めるきっかけにもなる重要な要素です。
さらに、弁護士や公認会計士など、専門資格を持つ方が着用する徽章(きしょう)もフラワーホールに着用することが慣習となっています。これらの徽章は、資格の権威と信頼性を象徴するものであり、小さなバッジであっても存在感が宿り、職業的な誇りを高める役割があります。
装着する際は、フラワーホールにピンを通し、裏側のキャッチでしっかり留めます。頻繁な着脱は生地への負担が大きく、ラペルの印象を損ねる恐れがありますので、扱いには注意が必要です。
ラペルピンで華やかに

プライベートシーンやカジュアルな集まりの場合には、ラペルピンを添えることでスーツに華やかさが生まれます。控えめな大きさでありながら、奥行きのある印象を与え、装いへ上品な遊び心を漂わせてくれる品の良いアクセサリーです。
ラペルピンにはスティック型やブローチ型、チェーンをあしらったタイプなど多彩なデザインがあります。小さくとも視線を引き寄せるようなインパクトがあり、身に着ける人の美意識や人柄が自然に伝わる点も魅力です。趣味や職業をモチーフにしたデザインを選ぶと、話題が広がるきっかけにもなります。
その際には、スーツの品位を損なわないよう、個性を出しつつも全体の調和を意識した選び方が大切です。ワンポイントとして取り入れることで、肩の力がほどよく抜けた大人のシャレを楽しめます。
生花を挿す

パーティーや式典といった華やかな場所では、生花を挿して装いに彩りを添える方法があります。ラペルに一輪の花があるだけで、顔まわりの印象が明るくなり、スーツ全体に洗練された雰囲気が生まれます。
選ぶ花は、小ぶりで軽いものが望ましく、大きすぎる花はラペルにも馴染みにくくなり、また重さで垂れ下がってしまうことがあります。装いのバランスを考えながら、さりげなく引き立つサイズを選ぶと上品な印象にまとめられます。
また、生花を挿す場合は、花びらや茎からの水分が生地に触れないよう注意が必要です。見えない部分で萼(がく)や茎にアルミ箔を巻いておくと、直接スーツに触れず、美しい状態を保てます。
なお、フラワーホールに添える飾り花は「ブートニエール」と呼ばれることがあります。もとはフランス語で「ボタン穴」を意味する言葉ですが、現在ではラペルに挿す小さな花飾り、あるいはそのアクセサリー全般を指す呼称として親しまれています。上質なスーツとの相性も良く、特別な場を一層華やかに演出する際に最適です。
フラワーホールをおしゃれに使いこなすポイント
フラワーホールをおしゃれに活かすには、いくつかの押さえておきたいコツがあります。装いの細部に心を配ることで周囲の印象が大きく変わり、スーツの佇まいそのものも引き立たせることが可能です。ここでは、装飾をより美しく見せるポイントを詳しく解説します。
TPOに合わせて使い分ける
フラワーホールは、場面に合わせて使い方を変えることが大切です。TPOを踏まえた選択をすることでスーツの品位が保たれ、着る人の美意識が伝わります。
ビジネスシーンでは、社章やシンプルなメタルピン、あるいは小ぶりで落ち着いた色味のブートニエールが適しています。華美なものを避けることで、相手に誠実さや信頼感が自然と伝わり、装いに端正な印象が加わるでしょう。
一方で結婚式やパーティーなど、華やかな席では胸元を印象づける機会が生まれます。生花を使ったブートニエールや、宝石があしらわれた華やかなピンを選ぶと、装い全体にエレガントな雰囲気が漂います。フォーマルな装いに程よい華やぎを加える、伝統的な楽しみ方です。
カジュアルな場では、遊び心のあるモチーフや色柄を取り入れて、個性を自然に表現できます。TPOを意識してピンを選ぶことで、スーツスタイルがより洗練され、着る人のセンスが際立ちます。
近年は、既製スーツにブランドの意匠をあしらったラペルピンが付属することもあります。ビジネスで着用する場合は、その意匠が調和を損ねないか、場にふさわしいかを見極める視点が欠かせません。スーツ全体の印象を丁寧に整えることが、洗練されたスタイルにつながります。
コーディネート全体の色味をそろえる
コーディネートに複数の色を多用すると、全体のバランスが崩れやすくなります。たとえば、グレー系のスーツに赤い花を添える場合などは、差し色を一つに留めることで洗練された印象が生まれます。
ネクタイやポケットチーフなどの小物を合わせる際は、ラペルピンと色調を揃えましょう。胸元から襟元にかけての色味が美しく、全体にまとまりのあるコーディネートが実現します。
ラペル幅とのバランスをチェック

フラワーホールに花を挿す場合は、ラペルの幅とバランスが大切です。花が大きすぎると全体の印象が重く見えてしまいます。小ぶりな花は清潔感があり、スーツに自然と馴染むので上品な装いに仕上がります。
その際、花の角度を少し上向きにすると胸元にほどよい立体感が生まれます。控えめながらも洗練された雰囲気が漂い、品の良いアクセントになるでしょう。
ただし、結婚式に参列する際は、花の選び方への配慮が欠かせません。友人や同僚として出席する場合、新郎よりも華やかに見えてしまうのは避けたいところです。お祝いの気持ちを込めて花を添えつつ、節度を保った控えめなコーディネートを心がけると、場の雰囲気にふさわしい装いになります。
スーツにフラワーホールがないときは?
スーツによっては、フラワーホールが貫通していないものや、そもそもデザインとして設けられていないものがあります。いずれもデザイン上の考えが反映されており、必ずしも欠点というわけではありません。
安全ピンなどを使い自分で穴を開ける方法も知られていますが、生地への負担が大きく仕立ての風合いを損ねる恐れがあり、避けたいところです。
社章の着用が必要な方は、スーツを選ぶ段階でフラワーホールの有無を確認してとよいでしょう。
また、フラワーホールはそれ自体に装飾的な役割も担っています。位置や形にこだわりたい方や、胸元の見え方を大切にしたい方には、オーダーで丁寧に仕立てる方法もおすすめです。理想の雰囲気に合わせて細部を整えることができ、スタイル全体の完成度が一段と高まります。
関連記事「初めてのオーダースーツ|注文前に知っておきたい7つのポイント」
まとめ
本記事では、フラワーホールの成り立ちから役割、そしてコーディネートのポイントまで解説しました。小さな意匠でありながら、スーツにさりげなく個性と奥行きを添える重要なディテールです。
位置やデザイン、装飾の選び方を意識すると、ビジネスでは信頼感が漂い、フォーマルな場では上品な華やぎが生まれます。シーンに寄り添ったアイテム選びと全体のバランスを大切にしながら、自分らしい演出を楽しんでみてはいかがでしょうか。
監修者

小林英毅(銀座英國屋 代表取締役社長)
1981年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。 オーダースーツ銀座英國屋の3代目社長。 青山学院大学ファッションビジネス戦略論・一橋大学MBA・明治大学MBA・ネクストプレナー大学にてゲスト講師。 銀座英國屋は、創業80年。東京銀座・オークラ東京・大坂梅田・大阪あべのハルカス・京都に店舗展開。
ビジネスウェアを選ぶ際の「どなたから、信頼を得たいか?」という視点を軸に、オーダースーツについて、お役に立つ情報をお届けいたします。
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