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スーツの上着の着こなし方とは?基本マナーを解説
スーツの上着の着こなし方とは?基本マナーを解説

スーツは「何を着るか」と同じくらい「どう着るか」が大切です。とくに上着には、着こなしの基本マナーがあり、それを知っているかどうかで、見た目の印象に大きな差が生まれます。
きちんと着こなせれば「できる男」として信頼感を高められる一方で、マナーを知らずに着てしまうと、大事なビジネスシーンで知らず知らずのうちに評価を落とすことにもなりかねません。
そこでこの記事では、スーツの上着についての基本的な着こなし方、単品ジャケットとの違い、さらにダブルスーツやスリーピースを着るときの上着の着用マナーについても分かりやすく解説します。
スーツの上着とは?
スーツの上着とは、スラックスとセットで着用する、ビジネスやフォーマルな場にふさわしい上着のことです。
単品のジャケットとは異なり、ヒップがしっかり隠れる長めの着丈が特徴で、全体のバランスを整えるためにもこの長さが重要とされています。
またスーツの上着にはいくつか特徴があります。ここでは、スーツの上着について、その特徴やジャケットとの違いなどを具体的に解説します。
スーツの上着の特徴

スーツとは、同じ生地で仕立てられた上着とスラックス(ズボン)のセットを指します。このうち上半身を覆う「上着」は一般的にジャケットと呼ばれ、襟(上襟・下襟)がつき、前面はボタンで留める仕様になっています。
上下が同じ生地であることで、全体に統一感が生まれ、洗練された印象を与えるのが特徴ですが、ビジネスシーンや就職活動、冠婚葬祭など、フォーマルな場面で幅広く着用されており、第一印象を左右する重要なアイテムです。
そして、スーツの上着は生地にも特徴があります。一般的には「梳毛(そもう)」と呼ばれる細くて長い羊毛で織られた生地が使われ、上品な光沢と滑らかな肌ざわりが魅力です。
またスーツ生地は春夏用・秋冬用・盛夏用など、季節に応じて種類が分かれ、気候に合った素材を選ぶことで快適に過ごせるだけでなく、見た目にも季節感を演出できます。
スーツの上着とジャケットの違い

スーツの上着と似たアイテムに「単品ジャケット」があります。単品ジャケットは、上下セットではなく、ジャケット単体で着用するものを指します。たとえば、ネイビーの単品ジャケットにグレーのスラックスを合わせるといった装いは、メンズファッションの定番スタイルの一つです。
スーツの上着と単品ジャケットは、見た目はよく似ていますが、目的やデザインの面で明確な違いがあります。以下でその違いを詳しく見ていきましょう。
肩パッドの厚みと印象の違い
スーツの上着にはやや厚めの肩パッドが入っており、しっかりとした輪郭を形作ることで、よりフォーマルで威厳のある印象を与えます。
一方、単品ジャケットはカジュアルな着こなしにも対応するため、肩パッドはごく薄く、ナチュラルなラインになっていることが多くなります。
ポケットのデザイン
スーツの上着には、左右の腰位置にフラップポケット(蓋付きポケット)がつきます。
対して単品ジャケットは、パッチポケットと呼ばれる外付けタイプのポケットが一般的で、よりカジュアルな印象を与えます。

使用される生地の違い
スーツの上着には、梳毛(そもう)と呼ばれる細い羊毛が使われ、上品な光沢感と滑らかさが特徴です。
一方、単品ジャケットは、光沢を抑えた厚手の生地が使われることが多く、なかには起毛感のある素材もあり、カジュアルスタイルに適しています。
着丈の違い
スーツの上着は、ヒップがしっかり隠れる程度の長めの着丈で設計されていますが、対して単品ジャケットは、ヒップの下が少し見えるくらいの短めの丈で、動きやすさや軽快さを重視した作りになっています。
スーツの上着をジャケットとして使えるか?
スーツの上着は上下を一緒に着ることで、初めてフォーマルな装いであるスーツとしての役割を果たします。
では、上着だけを単品のジャケットのように使うことはできるでしょうか。
一見するとスーツの上着は単品のジャケットと形状が似ているため、上着だけを使う合わせ方も良さそうに思えます。しかし、以下の点により、スーツの上着は単品ジャケットとして使うことは推奨されていません。
着丈が長く、バランスを崩しやすい

スーツの上着は、ヒップを隠す程度の長めの着丈で設計されています。これは上下のバランスを整え、全身がすっきりと縦のラインに見えるようにするためです。しかし、上着だけを単品で着てしまうと、上半身が強調されて胴長に見え、全体のバランスが悪く見えてしまうことがあります。
生地の質感に違和感が出やすいスーツの生地には、前述したように、上品な光沢感のある梳毛(そもう)ウールが使われるのが一般的です。
一方、単品ジャケットにはマットな質感や起毛素材など、カジュアル向きの生地が使われることが多く、スーツの上着を単品で着用すると、「スーツの上だけ着てきた人」という印象を与えてしまう恐れがあります。このように、スーツの上着は単品使いを前提とした設計にはなっていません。
着こなしのバランスや見た目の印象を考えると、スーツは上下セットで着るのがベストです。どうしても着回しを楽しみたい場合は、最初から単品使いを想定したジャケットを選ぶのが無難でしょう。
スーツ上着の基本マナーとは?
スーツの上着には、着こなしにおける基本的なマナーがあります。きちんとした装いを身につけることで、相手に好印象を与えるだけでなく、自信を持ってビジネスシーンに臨むことができます。
ここでは、初心者でも押さえておきたい上着の着用ルールをわかりやすくご紹介します。
ボタンの正しい留め方

スーツの上着は、正面をボタンで留める仕様になっており、ボタンの数は通常「2つ」または「3つ」が一般的です。実は、このボタンの留め方には、ルールがあります。
まず、上着の正面ボタンの一番下はどのような場面でも留めないのがマナーとされています。スーツの前裾にはカーブがついており、下のボタンを留めてしまうとシワが寄ってしまい、シルエットが崩れる原因になるためです。
これはスーツに限らず、単品ジャケットについても同じです。2つボタンのジャケットの場合は、上ボタンのみ留めます。 3つボタンのジャケットは上の2つまたは中央1つのみを留めましょう。
このようにジャケットの一番下のボタンを留めないルールは「アンボタンマナー」と呼ばれます。
フラップの扱い方

スーツの上着には、左右に大きな腰ポケットが付いています。このポケットの上には「フラップ」と呼ばれる蓋がついており、ポケットの中にしまうことが可能です。
フラップは外着であるスーツのポケットを、雨やホコリから守るために考案されたものです。そのため、日本ではフラップのことを「雨蓋(あまぶた)」と呼ぶこともあります。
本来の使い方としては、ホコリやチリがポケット内部に入らないよう屋外ではフラップを外にだしておき、ホコリが少ない室内ではポケット内にしまうのが適切です。
現代でも屋外ではフラップをだしておき、室内ではポケット内に入れるというのがマナーになっています。このルールを知っておけば、スーツの着方が理解できていると認識されるでしょう。
しかし、それ以上に大切なのは、フラップが中途半端に出ないようにすることです。ときおり、ポケットに物を出し入れした後にフラップが半分だけ出ている方をお見かけします。だらしない印象を与えるとともに、周りからの信頼も損なう恐れがあるため注意しましょう。
なお、結婚式や式典などのフォーマルな場面では、たとえ屋外であってもフラップはポケットの中にしまっておくのがマナーです。
ボタンは立つときに留めて座るときに外す
スーツの上着は、立っているときにボタンを留めた姿がもっとも美しく見えるように作られています。姿勢が伸びた状態でボタンを留めることで、ウエストラインが整い、上着のシルエットも綺麗に映ります。

一方で、座った際は体の動きによりお腹まわりに自然とふくらみが生じるため、ボタンを留めたままですと生地が引っ張られ、窮屈に見えたり、不自然なシワが入ったりする原因になります。そのため、着席時にはボタンを外すのがスーツの正しい着こなしとされています。
また、海外のドラマや映画などでも、着席時にボタンを外し、立ち上がると同時に静かにボタンを留め直すスマートな所作をよく見かけます。こうした動きが自然にできるようになると、スーツを理解して着ている印象につながり、さりげない所作の美しさが、身だしなみ全体の印象を引き上げてくれます。
面接時はボタンの留め方に注意
前述したように、着席時にはスーツのボタンを外すのが基本マナーです。これは着こなしのルールとして広く知られており、一般的なビジネスシーンでは問題なく通用します。ただし、就職活動の面接など、評価が重視される場面では、注意が必要です。

というのも、面接官の中にはこのマナーを知らない方もいらっしゃるため、着席と同時にボタンを外すことで「だらしない」と誤解される可能性があるからです。面接時には入室後、面接官がボタンを留めたまま座っているかどうかをさりげなく確認しましょう。
面接官がボタンを留めたまま座っていれば、自分もそれにならってボタンを外さずに座る方が無難です。あくまで場の空気や相手に合わせた柔軟な対応を心がけることが、好印象につながります。
インナーには長袖シャツを着る

スーツの上着の下には、基本的に長袖のシャツ(ワイシャツ)を着用するのがマナーです。夏場などで「暑いから」と半袖シャツを選びたくなりますが、スーツの構造や見た目の観点から、インナーには長袖を選ぶのが正しい着こなしとされています。
それは半袖シャツの上にスーツ上着を着ると、汗や皮脂などが上着の袖裏や袖口の生地を傷めてしまうからです。また、スーツの上着は袖先からなかのシャツが1~1.5cm程度見えているのが正しい着方です。半袖シャツを着ると上着の袖先からシャツが見えることがありません。こうした理由から、インナーとして着るシャツは長袖を着用します。
ダブルスーツの上着

ダブルスーツの上着も単品での着用はおすすめしません。そもそもダブルスーツは、上下をセットで着用することを前提に設計された装いであり、重厚感のあるシルエットや少し長めの着丈なども、同じ生地のスラックスと合わせることで全体の調和が取れるように仕立てられています。
上着だけを単品で着てしまうと、シルエットのバランスが崩れ、着姿がどこか浮いて見えてしまうことがあります。
また、ダブルスーツには、上品な光沢感を持つウール素材などのフォーマルな生地が用いられることが多く、カジュアルなスラックスや単品ジャケット用のマットな素材とは相性が良くありません。
このような理由から、ダブルスーツの上着は上下セットで着用するのが基本マナーとされています。ボタンの留め方や、着席時にボタンを留めたままにするなど、ダブルスーツには独自の着こなしのルールがあります。こうしたマナーを正しく理解した上で、一着のスーツを丁寧に着こなす姿勢こそが、品格ある大人の装いといえるでしょう。
ビジネスシーンやフォーマルな場で信頼感や存在感を演出するためにも、ダブルスーツはぜひ、正しいスタイルで着用することをおすすめします。
参考:ダブルスーツの着こなし方。正しい着方やマナー、コーディネートまで徹底解説。
スリーピーススーツの上着

スリーピーススーツとは、上着・スラックス・ベストの3点が揃ったスーツスタイルで、日本では「三つ揃え」とも呼ばれます。格式のある印象を与えられるため、フォーマルなシーンやビジネスの場でも重宝される装いです。
このスリーピーススーツの上着についても、単品で着まわせないかと考える方もいらっしゃるかもしれません。しかし、基本的にスリーピーススーツの上着もダブルスーツと同様、単品で着用するのはおすすめできません。
その理由として、まず挙げられるのがデザインの前提が「上下+ベストのセット」であることです。着丈やシルエットはスラックスと調和するよう設計されており、単品で着るとバランスが崩れ、重たく見えることがあります。
また、スリーピースも光沢感のある上質なウール生地が使われることが多く、これをカジュアルなパンツや異素材と組み合わせると、質感のちぐはぐさが目立ってしまいます。
こうした理由から、スリーピーススーツの上着もセットでの着用が基本とされ、
コーディネート全体に統一感を持たせることで、スーツ本来の美しさと品格を引き出すことができます。
参考:スリーピーススーツとは?特徴とかっこよく着こなすポイントを解説
スーツの上着は脱いでも良い?
とても暑い夏場などは、つい上着を脱ぎたくなるものですが、スーツを着ているときに、上着を脱ぐのははたしてどうでしょうか。
スーツは上下揃って着ることで相手への敬意を表します。上着だけ脱ぐという行為が礼節を欠くことになり、場合によってはマナー違反とされる恐れがあります。また、シャツはもともと下着が起源とされている衣類であり、上着を脱ぐことで、本来見せるべきではないインナーを人前に晒してしまうことになります。
このような背景から、基本的にはスーツ着用時に上着を脱がずに着続けるのがマナーとされています。とくにフォーマルな場や目上の方と接する機会がある場面では、上着は着たままでいることが無難です。
スーツの上着を格好よく着こなすために

この記事では、スーツの上着に関する基本的な着こなし方やマナーについてご紹介してきました。正しい着方をしてこそスーツを格好良く着ることができます。しかし、その前提として忘れてはならないのが、スーツのサイズが自分の体型に合っているかどうかです。
たとえば、上着ボタンの留め方が合っていても、スーツ自体が体型に合っていなければ格好良く見せることはできません。人の体は一人ひとり異なることのほか、筋肉の付き具合によって左右が非対称ということもあり、既製スーツでは完璧なサイズ合わせをすることは現実的に困難です。
それに対して、オーダースーツは着る人の体型に合わせて一点ずつ作るので、サイズに関しても既製スーツとは違うフィット感を得ることができます。ビジネスシーンでスーツを着る方であれば、オーダースーツを検討するのも良いでしょう。
参考:スーツはサイズ感が命!|正しいスーツ選びのチェックポイント|オーダースーツの基礎知識
まとめ
スーツの上着は、正しい着こなしとマナーを守ることで、ビジネスシーンにおける信頼感や清潔感を高められます。ボタンの留め方やフラップの扱い、座るときの所作など、基本ルールを理解しておくことで、周囲に好印象を与えられるでしょう。
また、ダブルスーツやスリーピースにはそれぞれのマナーがあるため、シーンに応じた着こなしが求められます。体型に合ったサイズ選びも見た目に大きく影響するため、理想の一着を目指すなら、オーダースーツも選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。
監修者

小林英毅(銀座英國屋 代表取締役社長)
1981年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。 オーダースーツ銀座英國屋の3代目社長。 青山学院大学ファッションビジネス戦略論・一橋大学MBA・明治大学MBA・ネクストプレナー大学にてゲスト講師。 銀座英國屋は、創業80年。東京銀座・オークラ東京・大坂梅田・大阪あべのハルカス・京都に店舗展開。
ビジネスウェアを選ぶ際の「どなたから、信頼を得たいか?」という視点を軸に、オーダースーツについて、お役に立つ情報をお届けいたします。
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