オーダースーツ 銀座英國屋コラム
ステンカラーコートとは?特徴や選び方・スーツに合うコーデも紹介
ステンカラーコートとは?特徴や選び方・スーツに合うコーデも紹介

ステンカラーコートは、チェスターコートと並んでビジネスシーンでは定番の一着として知られています。他のコートと比べると装飾を抑えた作りをしているので、特にスーツとの相性が良く場面を選ばず着まわせるのも魅力です。
しかし、シンプルだからこそ、どのように選ぶか、どう着こなすかに迷ってしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか。この記事ではステンカラーコートの特徴や選び方、スーツとの合わせ方について分かりやすく解説します。
ステンカラーコートとは?

ステンカラーコートとは、襟腰と呼ばれる立て襟がついたコートです。ボタンが隠れる比翼仕立ての前立てと、襟元から脇に向かって、斜めに切り替えが入ったラグランスリーブが特徴で、シンプルで上品な印象を持ちます。ラグランスリーブとは生地の切り替え部分が襟ぐりから脇にかけて、曲線を描くように斜めに入っている袖のデザインのことです。ビジネスシーンからカジュアルまで幅広く活用でき、オンオフを問わず着用できる万能なコートとして人気があります。
ステンカラーコートの名称
「ステンカラーコート」という名称は広く知られており、コートを取り扱っているお店であればこの名称で通じます。しかし、和製英語のため海外では通じない点には注意が必要です。正確には「バルマカーンコート」(Balmacaan Coat)と呼びます。バルマカーンはスコットランドの地名が由来だと言われています。
ステンカラーコートという名称が生まれた起源は諸説あります。たとえば、襟の形状が台襟の上部分から下に向かっていることから「スタンド・アンド・フォール・カラー」が変化して「ステンカラー」になったとされる説や、フランス語のsoutien(支える)から来ている説などです。
ステンカラーコートがスーツに合う理由
ステンカラーコートがスーツに合う理由は、上品でシンプルなデザインにあります。ステンカラーコートは比較的装飾が少ないため、どんなスーツにも合わせやすくなります。
また、肩部分がラグランスリーブの仕様になっているので、スーツの上から羽織っても肩周りが動かしやすく、着心地が良いというメリットもあります。こうした理由から、ステンカラーコートはビジネスシーンでも取り入れやすく、スーツとの相性が良いコートとして多くの人に選ばれています。
ステンカラーコートの特徴
ステンカラーコートはシーンを選ばずに、着用できる定番アイテムです。ここで、ステンカラーコートの特徴について細かく見ていきましょう。
シンプルなデザイン
ステンカラーコートの特徴は、シンプルで汎用性が高いデザインです。装飾が少なく、すっきりとした見た目は着る人を選ばず、さまざまな場面で活躍します。なかでも多くのモデルに取り入れられているのがAラインのシルエットです。これはアルファベットの「A」のように、肩まわりはすっきりと、裾にかけてゆるやかに広がる形のことを指し、体型を問わずきれいに見せる効果があります。
スーツに合わせると、落ち着いた印象と信頼感を与えられます。反対に休日は、カジュアルな服と組み合わせることで、ナチュラルかつ上品な雰囲気を演出することも可能。流行に左右されにくいデザインのため、一着持っておくだけで長く使えるのも安心できるポイントです。さまざまな着こなしに対応できる柔軟さが、このコートの大きな強みといえるでしょう。
襟の形状

ステンカラーコートの襟は、シンプルながらも特徴的な形をしています。襟の折り返し部分より首に近い位置に襟腰と呼ばれる立ち上がりがあり、後ろ側(背中側)が高く、前に向かって低くなるデザインです。これにより、着用時に自然に襟が立ち上がってみえるので顔周りに立体感が生まれます。
左右に広がる襟も特徴的です。顔まわりに大きな襟があることで、相対的に顔が小さく見える「小顔効果」があります。スタイルを良く見せたり、全体的なシルエットのバランスを整えられたりするのもポイントです。

チェスターコートのような下襟がなく、第一ボタンまで留めると襟元がすっきりとした見た目になります。
反対に、第一ボタンのみを開けると、下襟に近い形をつくることが可能です。ただし、チェスターコートほど大きく開くことはなく、控えめで上品な印象になります。
ラグランスリーブ

ラグランスリーブはジャケットやコートの袖のデザインのひとつです。生地の切り替え部分が襟ぐりから脇にかけて、曲線を描くように斜めに入っていることが特徴として挙げられます。
首の付け根から袖部分までがつながっているため、肩の可動域が大きくなり、腕が動かしやすく、着脱がしやすいのもポイント。ステンカラーコート以外では、トレンチコートによく見られる袖の付け方です。
なお、ラグランスリーブの名前の由来には歴史があります。クリミア戦争で活躍したイギリス軍のラグラン将軍が、負傷した腕でも服を脱ぎ着しやすいように、と考案されたのが起源と言われています。
比翼仕立て

ステンカラーコートのボタンは縦1列に付いています。このボタンを全て留めると、第一ボタン以外は隠れる仕様になっています。これはボタンホール(ボタン穴)の位置に重なるよう上側にもう1枚生地が付けられているからです。この仕様を「比翼仕立て」と呼びます。
ボタンが隠れることで、一層シンプルで上品な印象になるのが特徴です。
ステンカラーコートの選び方
ひとえにステンカラーコートと言っても、店頭には素材や色、サイズなどたくさんのものが並んでいます。
ここでは、数多あるステンカラーコートの選び方について解説します。
季節に合った素材を意識する
ステンカラーコートを選ぶときは、季節に合った素材を選ぶように意識しましょう。季節に応じて目的に合ったものを着用することで、防寒としての役割はもちろん、見た目の印象も大きく変わります。代表的な素材の特徴を以下にまとめました。
ウール

ウールはステンカラーコートに限らず、コート全般でもっともポピュラーな冬の素材です。保温性に優れ、上品な印象を与えます。見た目にも暖かさを演出することができます。
カシミヤ

カシミヤはカシミヤヤギの産毛から作られる繊維です。肌あたりが柔らかく保温性にとても優れているので、冬場のコートでは人気があります。耐久性があり繊維が細く均一で、生地表面には美しい光沢があるのが特徴です。
カシミヤ素材のコートは高級感があり、遠目で見ても上質さが伝わります。
コットン

コットン(綿)素材はカジュアルな印象を与えます。防寒性能はウールには劣りますが、春先や寒さが厳しくなる前の秋口にちょうどよく、季節の変わり目に重宝する一着です。
コートによってはライナー(取り外しができる裏生地)が付いているものもあり、そうしたコートであれば保温性も増すので長い期間使うことができます。
ポリエステル

化学繊維であるポリエステルは雨傘やレインコートに使われているように、はっ水性能に優れているのが特徴です。水を玉状に弾くので水染みになりにくく、天候を気にせず使えます。
ただし、ポリエステル自体の保温性は低いので注意が必要です。コットン素材のコートと同じく、内側にライナーが付いている物を選ぶと長い期間着ることができます。
コートは生地面積が大きいため、生地の良し悪しが仕上がりにダイレクトに影響します。一度購入すると長く使うアイテムなので、上質な生地でオーダーをするのも良いでしょう。
コートの生地については「スーツスタイルにオススメのコート&人気コート生地ランキング(50万円以下)|オーダースーツ銀座英國屋」でも、触れていますので、ご参照ください。
色と柄が与える印象を知っておく
ステンカラーコートの色や柄については様々なものがあります。その中でスーツと合わせる場合はどのようなものが良いでしょうか。 ここではステンカラーコートでよく使われる色と柄について解説します。
黒

黒はフォーマルな印象が強く、きちんと感を引き立てたい場面でも使いやすい色です。シンプルなステンカラーコートに黒を選ぶことで、全体の印象にさらに上品さが加わります。黒無地のコートは汎用性が高く、スーツの色、柄を問わず使うこと可能です。特にグレーのスーツは色のグラデーションが生まれるので、まとまりのあるコーディネートになります。 また、告別式など不祝儀の際には一択の色です。
グレー
グレーは黒に並んで汎用性が高い色です。グレーのコートはビジネススーツで定番のグレーやネイビーカラーとも好相性なので、取り入れやすく、濃い色のものから明るい色まで段階があります。ビジネスシーンで使うのであれば、ミディアムグレーやチャコールグレーといった色のトーンが低いものを選んでおくと無難です。
ネイビー

ネイビーは精悍(せいかん)で若々しい印象を与えます。またネイビーはビジネススーツでも定番の色なので、コートを着る上でも取り入れやすい色と言えるでしょう。
柄物

ステンカラーコートは無地以外では、チェック柄を目にすることがあります。柄が入ったコートはオシャレな印象を与える反面、無地と比較するとカジュアルな印象になります。 また、柄入りのコートを着た状態で中に柄があるスーツを着ると、柄同士が干渉してコーディネートが難しくなります。柄入りのコートは2着目以降にするかプライベートで使うのが無難です。
スーツに合わせる想定でサイズを選ぶ
スーツと合わせる前提でステンカラーコートを選ぶ場合は、実際にスーツを着た状態で試着をするのがベストです。試着する際は、身幅、着丈、袖丈の3つをチェックしましょう。
身幅

身幅は、コートの正面ボタンを留めたときに窮屈さを感じないかがポイントです。スーツの肩や胸まわりにシワが寄るようであれば、サイズが小さすぎる可能性があります。ただし、余裕がありすぎると全体の印象がゆるくなり、だらしなく見えてしまうので、ほどよいゆとりを意識しましょう。
着丈

コートの着丈は長くなるほどクラシックな装いになり、短いほどカジュアルな見た目になります。膝丈ほどの長さがあれば、流行に関係なく着用が可能です。着丈については以下で詳しく解説しています。
関連ページ:着丈とは?測り方とサイズ選びのポイント
袖丈

スーツのジャケットの袖が、コート袖から覗いてしまうと、ちぐはぐな印象になるため、腕を下ろしたときに手の甲の半分ほどが隠れ、ジャケットの袖が見えない長さが理想です。
全体として、スーツとの重ね着を前提にしたサイズ選びをすることで、見た目も着心地も両立できます。
コートを選ぶときに押さえたい知識については、以下でも詳しく解説していますので、ご参照ください。
関連ページ:スーツにオススメのコートとは?|種類・色・適正サイズまで徹底解説!
ステンカラーコートを使ったスーツコーデ
ステンカラーコートはシンプルなデザインであるため、どんな服装にも合わせやすいアイテムです。ここでは、ステンカラーコートを使ったスーツコーデを、着こなしのポイントと併せてご紹介します。

ネイビースーツに合わせる場合
ステンカラーコートをスーツに合わせる場合は、同系色でまとめると統一感が生まれやすくなります。たとえば、ネイビーのスーツならグレーのコートとネイビー系色のネクタイ、白い無地のシャツと合わせるのが定番。スラックスはタイトなものを選ぶとスッキリとまとまります。
グレースーツに合わせる場合
グレースーツの場合は同系色、または黒のコートを選ぶと合わせやすくなり、白い無地のシャツに、ネクタイはボルドーや茶系統の落ち着いた色を選ぶと、上品にまとまります。グレースーツに合うネクタイの選び方については、こちらで詳しくご紹介していますので、ご参照ください。
関連ページ:グレースーツに合うネクタイとは?オススメの着こなし方を徹底解説!
コーデのポイント

また、スーツに明るいステンカラーコートを合わせるときは、マフラーや手袋の小物を黒で統一できるとよりまとまったスタイルになりやすいです。全体の色味が暗く感じた場合は、襟元のマフラーから覗くシャツの色を淡めのものを選び、明るさを取り入れるのも良いでしょう。
シルエットにも気を配れると、なお良くなります。特に、ビジネスの場では全体的に細身のスタイリングを意識すると、スマート且つ信頼感のある印象を演出できます。
パンツはシルエットに与える影響が大きいので、テーパードタイプを選ぶのが無難です。裾はダボつかないよう、靴の甲に乗り、ワンクッションできる程度に調整するとよいでしょう。
まとめ
この記事では、ステンカラーコートの特徴や、選びかた、コーディネートの例をお伝えしました。ステンカラーコートは控え目で上品な印象を与えることから、ビジネススーツとも好相性です。 スーツの上にコートを着たい場合は、スーツを着た状態で必ず試着してください。そうすることでサイズ選びの失敗を防げます。この記事をご覧いただくことで、ステンカラーコートについての理解を深めていただければ幸いです。
監修者

小林英毅(銀座英國屋 代表取締役社長)
1981年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。 オーダースーツ銀座英國屋の3代目社長。 青山学院大学ファッションビジネス戦略論・一橋大学MBA・明治大学MBA・ネクストプレナー大学にてゲスト講師。 銀座英國屋は、創業80年。東京銀座・オークラ東京・大坂梅田・大阪あべのハルカス・京都に店舗展開。
ビジネスウェアを選ぶ際の「どなたから、信頼を得たいか?」という視点を軸に、オーダースーツについて、お役に立つ情報をお届けいたします。
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