ボタンダウンシャツは襟先に特徴があり、襟の先に小さなボタンが付いています。

シャツとしては着用場面をかなり選ぶデザインですが、シーン別の向き不向きさえ知っておけば、さまざまな組み合わせで活用しやすいアイテムです。 この記事ではボタンダウンシャツの基本知識を紹介したうえで、ビジネスにおけるスーツとの相性、着こなすポイント、シーン別のコーディネートについて詳しく解説します。

ボタンダウンシャツとは？

ボタンダウンシャツとは、襟の先をボタンで留める形状のシャツです。英語のボタンダウン（button down）は「ボタンで留めた」という意味となります。

形状としては、正面ボタンに沿って縦方向に「前立て」と呼ばれる帯状のパーツが付けられています。前立てはボタンを開閉させる際に生地が傷むのを防ぐため、補強することが目的のパーツです。前立てが付いていることでボタン穴側の耐久性が増し、傷みにくくなるのがメリットとなります。

ボタンダウンシャツには、一般的にオックスフォード生地が使われます。これはタテ糸とヨコ糸を交互に交差させる平織りで作られており、生地の目が荒く丈夫で通気性が良いこと、見た目でカジュアルな印象を与えやすいことなどが特徴です。

ノーネクタイのカジュアルな着こなしでも襟の形が崩れにくく、生地やデザインの種類も豊富なこともあり、ビジネスカジュアルやクールビズなどで選ばれます。

ボタンダウンシャツの起源

ボタンダウンシャツは、1800年代後半にイギリス上流階級で流行していたポロ競技が起源となります。

ポロ競技は、４人１チームとなり、乗馬した上で馬を操りながらマレットと呼ばれるスティックで球を打ち、相手チームのゴールに入れる競技です。

ポロの試合中、馬に乗って疾走する競技者のユニフォームの襟が風でヒラヒラと揺れ動くため、襟先をボタンで留めていました。これにヒントを得たアメリカの企業が、1900年代初頭に襟をボタン留めしたシャツを開発。その後、「ボタンダウンシャツ」というファッションアイテムとして発展しました。

ボタンダウンシャツがポロ競技向けのスポーツウェアであることをふまえると、カジュアル寄りなオックスフォード生地で作られているのも自然と言えるでしょう。

ボタンダウンシャツとスーツの相性は？

ボタンダウンシャツはスーツ専門店や百貨店のシャツ売り場でも広く取り扱われていますが、他のシャツと同列で販売されているため、スーツ着用時にボタンダウンシャツを着ている方が多いのが実情です。

しかし、実はスーツスタイルでボタンダウンシャツを着るのは基本NGであり、マナー違反となる場合があります。その理由は主に2つです。

そもそもボタンダウンシャツはポロ競技が起源とされているため、シャツの中でカジュアルな分類に入ります。これに対してビジネススーツはフォーマルな場で着用するものであり、カジュアル由来のボタンダウンシャツは本質的に相容れません。

そしてスーツの素材は、梳毛（そもう）と呼ばれる細くて光沢のあるウール糸が一般的です。梳毛で作られたスーツにはキメの細かい上質な光沢があります。対して、ボタンダウンシャツで主に使われるオックスフォード生地は、織りが荒くざっくりとしているため、光沢がある梳毛のスーツと合わせるとちぐはぐな印象を与えてしまいます。ビジネススーツでは、「ブロード」と呼ばれる生地に光沢があるシャツを合わせるのが無難です。

ただし、これはあくまで格式あるフォーマルやビジネスの場でのマナーです。個性的なデザインと実用性を備えるボタンダウンシャツは、カジュアル寄りの場面を中心に広く受け入れられています。

ボタンダウンシャツを着こなすポイント

ボタンダウンシャツを着こなすポイントは、主に2つです。特徴的なデザインだからこそ、他のアイテムに合わせやすいものを選ぶとコーディネートしやすくなります。

ベーシックなものを選ぶ

ボタンダウンシャツを買うなら、まずはベーシックなものを選びましょう。

中にはボタンの色が黒いものやボタンホールの色がシャツ生地とは異なる派手な色で作られているものがあります。いずれもオシャレさをアピールするためのディテールで、目を引くことも確かです。

しかし、そのような凝ったシャツはスーツのコーディネートでは取り入れにくく、またビジネスシーンで着用すると、意図せず軽い印象を与えてしまう恐れがあります。ボタンダウンシャツを選ぶ際は単色で無地のもの、ボタンやボタンホールなどが生地色と馴染むベーシックなものを選ぶと良いでしょう。

色については白無地がもっとも汎用性が高くおすすめです。他にも淡い水色の無地なども使い勝手が良く、コーディネートしやすい色です。

襟先のボタンはきちんと留める

もう1つのポイントは、襟の先についている小さなボタンを、着用時にきちんと留めることです。

ボタンダウンシャツの襟先には小さめのボタンが付いています。時おり、伊達やオシャレの要素としてこのボタンをわざと外している方が見受けられます。

しかし、襟先にボタンが付いているのに留まっていないと、どこか不自然な印象を与えます。両方ともきちんと留めて着用するのが基本です。

ボタンダウンシャツを使ったコーディネート

ボタンダウンシャツは通気性が良く、生地も丈夫なので使い勝手も非常に良いデザインです。ここでは、おすすめのコーディネートについて解説します。

クールビズで取り入れる

ボタンダウンシャツは、清潔感のあるクールビズコーディネートに向いています。

現代では、夏を中心にクールビズファッションが浸透しており、ジャケットは着用せずに上半身はシャツでお仕事をする方が増えています。

その際にボタンダウンシャツと選ぶと、襟先のボタンが良いアクセントになり、一枚で着ていても間延びした印象にならないためオススメです。着用するときは正面の第一ボタンのみを開けるとバランスが取れます。

ビジネスシーンでの着用ですので、シャツの裾先はスラックスに入れておきます。

ジャケットスタイルで取り入れる

スーツスタイルではNGなボタンダウンシャツも、単品ジャケットのスタイルであればマナー違反とならないこともあります。また単品ジャケットはスーツのような強い光沢がない分、ボタンダウンシャツのオックスフォード生地とも好相性です。

ノーネクタイであれば第一ボタンを開けておくのも良いでしょう。

ネクタイを締める場合は、シルクのネクタイであればまず問題ありません。ジャケットスタイルならではの軽快感を演出したいなら、シルクのニットタイも効果的です。

プライベートでボタンダウンシャツを着る

プライベートであれば、特にルールはありませんので基本的に自由です。ボタンダウンシャツは生地がある程度しっかりしているため、トップスはシャツ１枚というのも良いでしょう。ボトムス（ズボン）はチノパンやデニムなどカジュアルなものがオススメです。

シャツの裾先をタックイン（ズボンに入れること）すると真面目な印象になります。タックアウト（裾先を出す）すると、よりラフな見た目になります。状況に応じて使い分けると良いでしょう。

まとめ

今回はボタンダウンシャツについて、その起源や選び方、コーディネート方法などについて解説しました。

着方について襟先のボタンは両方ともきちんと留めておくと、きちんとした見た目になります。選ぶ際はボタンやボタンホールに突飛な色が使われていないベーシックなものにしましょう。

ポロ競技の際に襟先が揺れ動くのを防ぐことがルーツのボタンダウンシャツは、ビジネススーツと合わせることは避け、その他の着方でコーディネートするのがオススメです。例えばクールビズでシャツのみで臨む方法やジャケットスタイルのインナーに合わせると馴染みやすくなります。

監修者

小林英毅（銀座英國屋 代表取締役社長）

1981年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。 オーダースーツ銀座英國屋の３代目社長。 青山学院大学ファッションビジネス戦略論・一橋大学ＭＢＡ・明治大学ＭＢＡ・ネクストプレナー大学にてゲスト講師。 銀座英國屋は、創業80年。東京銀座・オークラ東京・大坂梅田・大阪あべのハルカス・京都に店舗展開。

ビジネスウェアを選ぶ際の「どなたから、信頼を得たいか？」という視点を軸に、オーダースーツについて、お役に立つ情報をお届けいたします。

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