オーダースーツ 銀座英國屋コラムカノニコとは?|有名スーツ生地ブランド解説|オーダースーツの基礎知識
カノニコとは?|有名スーツ生地ブランド解説|オーダースーツの基礎知識
仕事ができるエグゼクティブには、優れたビジネスパーソンだけがまとうオーラが漂います。そしてそれを際立たせるものは、その人が身につけるオーダーメイドスーツです。
将来が期待されるヤングアダルトからミドルエイジにかけての、これからのエグゼクティブにおすすめの生地ブランドがあります。カノニコの愛称で世界中のビジネスパーソンに親しまれている「ヴィターレ・バルベリス・カノニコ(Vitale Barberis Canonico)」です。
今回の記事ではカノニコの生地が持っている魅力を、背後のストーリーを紐解きながら紹介します。エグゼクティブとしての存在感を出したい方は、オーダースーツを作る際の参考にしていただけますと幸いです。
世界最古のミル「カノニコ」の3世紀半の歴史
カノニコは現在のファッション界で、世界中の一流ファッションブランドや有名テーラーがこぞって扱う生地を提供するミル(織物業者=織元)です。
実に3世紀半という長きに渡って質の高い織物を生み出し続けてきた、世界最古のミルといわれるカノニコの歴史を見ていきましょう。
世界最古の揺るぎない裏付け
「ヴィターレ・バルベリス・カノニコ」は、イタリア北部の織物産地であるビエラを代表するミルです。少なくとも1663年以前に創業した、人類史上で最も古いミルとされています。
ビエラは英国のハダーズフィールドや日本の尾州と同じく、良質の軟水が得られる水脈と豊かな自然に恵まれた、織物づくりに理想の環境です。ちなみに、その3つは世界3大織物産地と呼ばれています。
1663年のイタリアの租税に関する公的記録で、当時の織物商バルベリス・カノニコの毛織物に関する商取引の事実が記載されており、それが歴史上最も古いミルの証しです。
この記録によれば税の支払いに充てる現金が不足している分に関して、商店主のバルベリス・カノニコが毛織物で納めることを許可されたと記載されています。
それ以外にも、カノニコ家の人たちが生地を巧みに染める貴重な技術者であることも記載されています。門外不出の染色技法を親から子に、一子相伝のかたちで承継していた事などの記述が、世界最古のミルである信憑性を高める証拠です。
温故知新を体現した進取性ある老舗カノニコ
19世紀の中盤、歴史の転換点のひとつである産業革命の大きなうねりの中で、バルベリス・カノニコは積極的に機械を導入しました。織物製造のオートメーション化を図り、生産量を拡大します。
自動織機の使用によって原毛の紡績に始まり、染色加工や織布、縮絨加工や整理、そして仕上げまでのすべての工程を一貫して手掛けるようになりました。
バルベリス・カノニコはさらに、19世紀の末期から20世紀の初めにかけて計画的に電力を導入し、着々と生産を飛躍的に拡大する体制を整えます。また、当時では最高級とされていたドイツ製の織機を導入し、生地製品のクオリティ向上にこだわりました。
戦争の影を振り切り立ち上がる後継者ヴィターレ
1930年代に入ると、軍靴の響きの中でイタリアの独裁者ムッソリーニによるファシズムの旋風が吹き荒れました。しかしカノニコ家の若き後継者ヴィターレは1936年、大いなる決意を胸に秘めて立ち上がります。
忍び寄る戦争の影にじわじわと蝕まれ、経済活動のあらゆる自由を奪われてゆく中での勇気ある決断でした。彼はそれまでの織物商ではなく会社組織として、自らの名を添えて「ヴィターレ・バルベリス・カノニコ」社を設立します。
飽くことなき技術導入によって、カノニコ社の生み出す生地製品のクオリティは目覚ましい向上の一途をたどりました。
そして第二次世界大戦後、ヴィターレ・バルベリス・カノニコが作り出す生地は、服地の国際市場でトップクラスの地位を確立します。その品質の素晴らしさと、ヴィターレの秀逸な企業戦略による輝かしい功績です。
その後ヴィターレの不屈の意志を継いで、後継者アルベルトとルチアーノの2人はヴィターレ・バルベリス・カノニコを株式会社化します。そしてルチアーノは輸出、アルベルトは生産技術の分野をそれぞれ担当し、カノニコの名声をさらに高めました。
長い歴史は革新的な事業展開の大いなる助走
カノニコは世界のテキスタイル業界を牽引するリーディングカンパニーとして、常に目新しい取り組みを行っています。その姿は、長い歴史と伝統の重さとはうらはらに、軽々としたフットワークが伺えました。
ガレージ・イタリア(高級車向けのカスタム・チューンナップ専門店およびその名を冠したグッズブランド)やグローブ・トロッター(高級スーツケース・アタッシュケース)などは、従来であれば老舗織元とのコラボレーションなどありえない最先端ブランドです。
彼らとの、違和感のないコラボレーションがファッション界で高く評価されました。
それらの斬新な試みにより、カノニコのそれまでのどちらかといえば裏方といえるような役回りから、表舞台で脚光を浴びると存在となったのです。ミルというものに対する、世間の認識を多少なりとも変えるインパクトがある活動でした。
革新的な事業の方向性に重厚感を与えているのは、ほかならぬ3世紀半を超える時の流れに根を張った歴史です。
これらの動きの原動力となった仕掛け人こそ、バルベリス・カノニコの13代目の子孫のひとりであるクリエイティブディレクター、フランチェスコ・カノニコでした。
またカノニコ社の輸出力は、クオリティの高さに肩を並べる大きなプライオリティ(市場優位性)となりました。近年では国別の売上分布においては、イタリア国内が3割未満、輸出が実に7割以上となっているのです。
現在の事業展開の舵取りに関してはフランチェスコ、アレッサンドロ、そしてルチアという新世代の後継者3人が担っています。
妥協なきこだわりが生み出すカノニコの魅力
カノニコの服地が持つ色の冴え具合や深みは、他の生地ブランドの追随を許さないグレードです。着る人の内なる個性を外に映し、彩り、増幅してくれるでしょう。
そういう面では、世界最高峰と称賛される双璧、エルメネジルド・ゼニアやロロピアーナという超一流の生地ブランドと比べても、遜色ありません。むしろ、部分的にはそれらを凌駕するほどの高いクオリティを持っています。
カノニコ生地の魅力と特徴を掘り下げてみましょう。
一貫生産にこだわるブレないものづくり
カノニコは常にハイグレードな生地を生み出すために、原料からこだわっています。オーストラリアの提携牧場にて、上質な原毛段階の羊毛を確保することが彼らのものづくりの出発点です。
そして徹底した一貫生産により、高品質かつコストパフォーマンスの高い生地を世に送り出します。
カノニコ社の一貫生産には、大きく分けて以下の7つのフェーズがあります。
- 第1フェーズ:洗浄
- 第2フェーズ:コーミング
- 第3フェーズ:紡績
- 第4フェーズ:染色加工
- 第5フェーズ:経糸成形
- 第6フェーズ:織布
- 第7フェーズ:整理・仕上げ加工
それぞれのフェーズを補足しておきます。
第1フェーズ:洗浄
第1フェーズの洗浄は、いわば自然界にあった素材を人間界に招き入れる重要なプロセスです。ローラーで羊毛を刈り取って良質の軟水で洗浄します。
汚れと不純物をきれいに除去するという作業で、原料を最終的に高級素材まで高めてゆくのに欠かせない準備です。
第2フェーズ:コーミング
第2フェーズはコーミングです。コーミングとはコーム(櫛)で梳くことを意味します。
洗浄された羊毛繊維が温められてテープ状(スライバー)になり、コーミングで短い繊維やネップ(団子状になった繊維)を取り除かれるプロセスです。
長い繊維はウーステッド用の梳毛糸用に、取り除かれた短い繊維やネップは紡毛糸用になります。それらの原料を束ねて塊の状態にしたものが、「トップ」です。
第3フェーズ:紡績
トップはさらにトップ同士で大きく束ねられて、繰り返しコーミングされてスライバーになります。スライバー状とトップ状を繰り返し、最終的なスライバーに紡績加工で撚りをかけて糸になるのです。
繰り返しコーミングされたものを撚り上げることにより、カノニコ生地の特徴である耐久性が担保されます。
第4フェーズ:染色加工
染色加工には3パターンがあります。トップごと染める「トップ染め」と、糸に紡がれた状態で染める「糸染め」、織られた生地を染める「後染め」です。
加工方法ごとに、風合いと持ち味がそれぞれ異なります。このフェーズは専門家による正確かつ緻密なマネジメントを要するプロセスです。
第5フェーズ:経糸成形
経糸(縦糸)と緯糸(横糸)は、双方がしっかりと絡み合うことで堅牢な生地となります。生地製造の基本的な要素であり、経糸を巻き取るプロセスは特に重要です。
糸が絡み合う複雑な構図は、まるで幾何学的な美しさが感じられます。ただし、経糸の順序を間違えたまま織機の目が通ると生地としては欠陥品となるので、繊細さが必要な作業です。
第6フェーズ:織布
経糸が上下運動をする間を、筬(おさ)誘導された杼(ひ=シャトル)により緯糸が打ち込まれます。経糸に緯糸を通すごとに、生地が形成されてゆくというプロセスです。これが織布工程であり、熟練した技術者の目でチェックされます。
第7フェーズ:整理・仕上げ
織り上がる生地に何らかの不具合があった場合は、整理工程を担当する職人が手作業で修正を施します。その後に行われるのはクリアカット作業や縮絨加工です。
クリアカット作業は表面の起毛を除去して、なめらかさを加えます。「地のし」とも呼ばれる縮絨加工は、生地の安定性を高めるために湿らせて高温で加熱する重要な作業です。
最終工程である整理・仕上げのフェーズでは、そのほかにもさまざまに仕上げのテクニックが発揮されます。
このような妥協を一切排した7つのフェーズの証しこそ、出来上がった生地の素晴らしい色の冴えと深みと言えるでしょう。
カノニコの展開する主な生地銘柄のシリーズは、以下のとおりです。
●ペレニアル/PERENNIAL(スーパー110’s)
●トロピカル/TROPICAL(スーパー120’s)
●フランネル/Flannel(スーパー100’s)
●サキソニ/ Saxony(スーパー120’s)
●リベンジ/ Revenge(スーパー150’s)
各銘柄についての詳細は、カノニコのペレニアル・フランネルetcの紹介┃オーダースーツ人気ブランド生地解説をご参照ください。
着る人の個性を彩る色の深みと冴え
カノニコの製造工程における最初のフェーズである洗浄の精度は、糸の色の染まり具合やハリ、コシ、光沢など生地の持ち味すべてに反映します。
カノニコ生地の色目でとりわけ定評があるネイビー系やグリーン系、ベージュ系の服地は、色の深みや冴えの効果が顕著であり、他社と一線を画すグレードです。
なお、大前提である服地としての機能性や耐久性などの基本クオリティはもちろんとして、コストパフォーマンスの面でも非常に優れています。
価格以上の満足が得られるということに関しては、世界中のビジネスパーソンからの厚い信頼こそがその証明です。
ちなみに世界的ブランドである「ジョルジオ・アルマーニ」や「バーバリー」をはじめ、多くのビッグブランドやセレクトショップが、毎シーズン定番的に「カノニコ」の生地を使用しています。
言うまでもなくオーダーの世界では、名門テーラーはもとより、ほとんどのテーラーが積極的に顧客に勧める生地のひとつです。
カノニコがおすすめの人とは?
今は中堅社員あるいは幹部として駆け出しでも、これから一流のエグゼクティブを目指していく方たちに、カノニコはおすすめです。
日々仕事のスキルを磨き、折々の経験から学びゆくことも大切でしょう。しかし身だしなみからくる存在感も「未来の一流エグゼクティブ」として意識して欲しいからです。
一流を目指す人を輝かせる生地
いわゆる一流の人のオーラは、風格や迫力を伴います。もちろん内面から湧き上がる力強さも秘めていますが、それだけではありません。
実が彼らほど、自身の身だしなみに気を使っている人たちもいないでしょう。とりわけ、ビジネスパーソンの鎧であるスーツにはこだわりを持っています。
いくら優秀な人材であっても、外見が伴わなければオーラ―や威厳が漂いません。年齢を重ねて、ビジネスの世界でそれなりの役割を果たしている自覚がある方には、はなおさら勿体ないことです。
あなたのパーソナリティを輝かせてくれるカノニコ生地でスーツを仕立て、ビジネスの現場で存在感をアピールしましょう。人と出会った際の第一印象は、その人の装いに大きく左右されることは心理学上でも多く語られています。
カノニコの色が冴えわたったネイビーウーステッドのスーツや、森のように深みのあるグリーンのサキソニーのスーツを着る人は、もうそれだけで鮮やかな印象を残します。
一流を目指すビジネスパーソンは仕事のスキル向上と併せて、カノニコの色の深みと冴えで存在感を際立たせましょう。それはきっと、あなたのビジネス人生の戦略として大変有効な試みとなります。
(参考)オーダースーツ銀座英國屋でのシングルスーツお仕立て価格
ペレニアル / Perennial(スーパー110’sウーステッド)税込価格264,000円
トロピカル / Tropical(スーパー120’sウーステッッド)税込価格264,000円
フランネル / Flannel(スーパー100’sフランネル)税込価格308,000円
サキソニー / Saxony(スーパー120’sフランネル)税込価格264,000円
リベンジ 150’s / Revenge 150’s(スーパー150’s)税込価格308,000円
さいごに
いかがでしょうか?
もし、カノニコにご興味がありましたら、ぜひ、カノニコの各生地コレクション(銘柄)をご紹介する記事もご覧ください。
また、オーダースーツ銀座英國屋では、無料オーダー体験(オーダースーツの無料相談+フィッティング体験)をご用意しています。
気になる生地・デザインでのお仕立て価格もご確認いただいたうえで、改めて、お仕立てを検討いただくことも可能です。
監修者
小林英毅(銀座英國屋 代表取締役社長)
1981年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。 オーダースーツ銀座英國屋の3代目社長。 青山学院大学ファッションビジネス戦略論・一橋大学MBA・明治大学MBA・ネクストプレナー大学にてゲスト講師。 銀座英國屋は、創業80年。東京銀座・オークラ東京・大坂梅田・大阪あべのハルカス・京都に店舗展開。
ビジネスウェアを選ぶ際の「どなたから、信頼を得たいか?」という視点を軸に、オーダースーツについて、お役に立つ情報をお届けいたします。
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