オーダースーツ 銀座英國屋オーダースーツ顧客様インタビュー歴史の重みと、今この時を表現するスーツが信頼感を生み出す
歴史の重みと、
今この時を表現するスーツが信頼感を生み出す
Profile:麻生商事株式会社 代表取締役社長
福岡県出身。大学在学中に仲間とITベンチャーを創業。さまざまなネット関連プロジェクトに参加する。2012年よりトヨタ自動車九州㈱で生産管理職に従事。2015年、麻生商事㈱へ入社。2018年6月より現職。2023年より日本青年会議所(JC)会頭に就任予定。
挑戦して身の丈を知り、
次代へ準備することが
事業継続の秘訣
小林:今日は、お時間いただきありがとうございます。
まず、御社の事業概要について教えていただけますでしょうか?
麻生様:当社は、2022年に150周年を迎え、104社で構成される麻生グループの中枢を担う総合商社です。
現在は、建設・土木資材をはじめ、産業機械、環境エネルギーなど各分野の製品を幅広く取り扱うとともに、環境問題の解決にも積極的に取り組んでいます。
小林:104社もの企業が結集するグループというのは、すごいですね。
麻生様:年々、M&A等を通して増えています。グループ各社の事業は多様で、豊洲市場の大卸(卸売業者)の会社やゼネコン、人材派遣会社や土木関係の会社、出版関係の会社、病院まで経営しています。
小林:元々、麻生グループは炭鉱業からスタートされたんですよね。
麻生様:おっしゃる通りで、1872年、福岡県飯塚市で麻生太吉が炭鉱業に乗り出したのがグループの始まりです。
ただ、高度経済成長期を前に石炭産業が衰退し始めたこと、日本の建設ラッシュで必ずセメントが必要になるという予測とが相まって炭鉱の閉山が決まりました。
麻生商事のルーツである新飯塚運送興業株式会社は、元々炭鉱で使う資材を買い付けて商いをしていたのですが「炭鉱が閉山したら働き手の雇用を守れない」という危機感から、商社としての事業フィールドを広げて雇用を守ってきました。その時代時代に、ご先祖様がシーズ(独自のノウハウや企画力)を培ってくれていたので、今も企業体として生き残ってこれたのだと思います。
小林:お話を伺っていると、事業の広がり方が独特だなと感じます。炭鉱の閉山が決まったときも単純に解雇するのではなく、社員が活躍できる場を求めて動かれたことで、自然と多角化されてきた印象を受けますね。
麻生様:そうですね。元々、グループ内で病院を経営することになったのも、炭鉱で働く社員が怪我をしてしまったり、家族が病気になったときに必要だったからですし、学校法人を始めたのも、社員の子息の教育水準を上げ、時代の要請に応えられる人材を育てたいという思いからでした。
小林:病院や学校も含めて「人生まるごと面倒を見る」という感覚が根付いていらっしゃるんですね。では、グループが成長を続けておられる秘訣についてもお聞かせいただけますか?
麻生様:当社の社訓であり麻生家の家訓に、「程度大切 油断大敵」という言葉があります。「程度大切」は、自分たちの現状と将来を客観的に分析して把握し、身の丈にあった規模で事業を充実させていくということ。「油断大敵」は文字通りで、順調なときも決して油断しないという意味です。
この社訓は一見保守的に聞こえますが、チャレンジしなければ身の丈もわからない。時代の変化に合わせて挑戦した結果、客観的な目線でグループの置かれた現状を見つめられるようになりますし、常に危機感を持って、将来のビジネスのシーズをつくろうと覚悟ができる。
その繰り返しが大事だという教えが、「程度大切 油断大敵」という言葉に込められているのだと思いますし、その教えを代々守ってきたことが成長の秘訣だとも感じます。
小林:「程度大切 油断大敵」という言葉には、そのような教えが込められているんですね。私も事業を営む上で時々立ち止まり、この言葉を自分に問いかけていきたいと思います。
暮らしを長く支える、
レジンコンクリートの
普及を目指したい
小林:麻生商事さまは、建築資材の中でも主に「レジンコンクリート」を扱われているとお聞きしました。取り扱うきっかけについて教えていただけますか?
麻生様:元々、グループ内の「アソウレジコン」という会社が、レジンコンクリートという製品をつくっていました。2009年にアソウレジコンを合併し、業務効率化を目指すと決まったことで取り扱いが始まりました。
小林:レジンコンクリートとは、どんな資材なんですか?
麻生様:コンクリートという名前ながら、実際はコンクリートではありません。素材をレジンという樹脂と繊維質の樹脂で固めてコンクリート同様に成形したものです。主に、地中に埋まった下水道の配管資材として使われています。
小林:コンクリート製の管との違いはどんなところにあるのでしょうか。
麻生様:レジンコンクリートは、コンクリートと比べて耐用年数が圧倒的に長く、維持管理や改修工事の負担が軽減されます。特に下水に含まれる硫化水素に強く、コンクリートだと40〜50年が寿命と言われる中で、レジンコンクリートは80〜90年持つだろうとされています。
数年前、40年前に埋めたレジンコンクリート管を試しに抜いてみたところ、傷もなく品質がしっかり保たれていました。「一度販売したら、更新の受注がとれない。商売的には失敗かもしれないな」と、社員と一緒に苦笑いしてしまいました(笑)。
小林:(笑)。レジンコンクリート管を採用されるお客様にとっては、長寿命で素晴らしい商品ですね。
麻生様:そうですね。特に、硫黄成分の強い温泉地域や、塩害を受けやすい漁港周辺は管が腐食しやすいため、レジンコンクリート製の管はよろこばれています。国内はもちろんですが、今はシンガポールでレジンコンクリートの下水管需要が高まっていて、台湾の提携会社と頑張って出荷しているところです。シンガポールは年々人口も増えていますので、インフラ周りの耐久寿命をできるときに延ばしておこうという意識があるのだと思います。
常に誠実であるために、どうすればいいかを考え続ける
小林:銀座英國屋は「信頼を得られる装い」をコンセプトとしています。麻生様は、「信頼」というものをどのようにとらえられていますか?
麻生様:私にとってもグループにとっても、決して損なってはならないものと考えています。お客様や周囲の方から信頼いただいたおかげで、150年間事業を続けられたという歴史がある。その歴史の重みを忘れてはならないと思っています。
ただ、信頼を得るためにすべきことに正解はないと思っていて、社員にも具体的に指導したことはありません。社員一人ひとりが自分なりに考え、常に誠実であることを心がけてもらえたらと思っています。
一例ですが、仕事をする中でどうしてもお客様の要望にお応えできないこともあります。そんなときにも、正直に自分たちの現状を伝え、できるだけ双方が納得感ある答えを模索する。そういった真摯な対応を重ねることで、信頼感は増していくはずです。
小林:そうですね。会社の未来を思い描くことなく安請け合いしてしまったら、結局、自分たちだけでなくお客様も不幸にしてしまいかねませんね。正直な対応というのは、実は社員の心も守っているのではと思います。
麻生様:会社にとって売上を上げることは至上命題ですが、そこで無理をすることが将来的にプラスに働くかどうかは、イコールではないですよね。目先の利益にとらわれすぎず、長期的な目線を忘れずに経営していきたいですね。
祖父の思い出を辿って、銀座英國屋でのオーダーへ
小林:ここで改めて銀座英國屋でオーダーしようと思われたきっかけについて教えていただけますか?
麻生様:元々、父(第92代 内閣総理大臣 麻生太郎氏)はスーツが仕事着で、かっこいいなと思ってたんです。
小林:お父様、本当にスーツの着こなしが素敵ですよね。ネットニュースでも「ダンディーだ」と、よく話題になっています。
麻生様:ありがとうございます(笑)。実は、母方の祖父がずっと、銀座英國屋さんにお世話になっていたんです。そういった経緯から、銀座英國屋さんは「爺さんがスーツを仕立てていたテーラーさん」として、長年気になる存在でした。
住まいのある福岡から東京に来る機会が増えたこともあり、それなら祖父もお世話になったお店に行ってみたいと思い、伺うことにしました。
小林:今日も、ご注文いただき本当にありがとうございます。
私が目の前にいると言いづらいかもしれませんが、実際、銀座英國屋でお仕立てになってどうですか?
麻生様:やはり、身体に合わせてつくっていただいているので着心地がいいですし、対応も丁寧で、細かい部分にも配慮いただけてありがたいです。
テーラーさんによっては、「お店独自のスタイル」へのこだわりが強いお店もありますが、銀座英國屋さんのすごさは、こちらの好みや特徴に合わせて柔軟に対応いただけるところだと感じます。
小林:各テーラーの定番を「ハウススタイル」と言いますが、わたしたちは「お客様が信頼を得られる装いに仕立てられるか」という部分を最も大切にしています。
麻生様:「ハウススタイル」はお店の顔でもあるので、おすすめされると「選ばないわけにはいかないかなぁ」といった無言のプレッシャーがあるというか(笑)。銀座英國屋さんはそういったことが全くないので、「今回はこんな風にしたい」と気軽に相談しながら、自由にスタイルを変えられます。
スタイリストの織田さんは、1回、2回とオーダーする中で私の好みを理解して「こういう生地もありますよ」と自然に提案してくれます。その日の気分で私がパッと選ぶと「普段より生地の青みが強いですが、大丈夫ですか?」などと、さりげなくアドバイスしてくださったり、場合によっては、「それは……前回と同じ生地ですね」と、やんわり止めてくださったり(笑)。
「お客様が選んだものだから、それでいい」ではなく、押し付けがましくなく、でもプロ目線の助言をくださるのはありがたいです。オーダー経験の少ない、若い世代はなおさら。同じような生地でも見え方が全く違うといったことは、プロじゃないとわかりませんしね。
印象に残る接客が再訪の決め手。納得感あるアドバイスも魅力
小林:今、麻生様を担当する織田は29歳です。若いスタイリストが担当についたときは、正直にどう思われました?銀座英國屋は一般的にみて高級店とされているので、若いスタッフに対し、お客様はどんな印象を持たれているのかが気になっていました。
麻生様:対応が誠実ですし、スタッフの方の年齢は気になりません。確かに、昔ながらのテーラーといえばキャリアを重ねた5、60代の方がお店に立たれていて、その佇まいそのものが信頼の証だったのかもしれません。ただ、私は「時代に合ったスーツにしたい」と思っているので、年齢が近い織田さんのアドバイスは納得感があり、ありがたいです。
小林:ありがとうございます。初めて銀座英國屋でスーツを仕立てていただいてから、またつくろうと思われたのはどんな理由からでしたか?
麻生様:接客の好印象が、再訪のきっかけです。2回目はたしか、最初につくってから1ヶ月も間が空いてないんですよね(笑)。最初に冬物をつくっていただいたので、春夏のスーツもお願いしようと思ったんです。
小林:ありがとうございます。最初の接客は、再訪いただけるか否かの鍵なので、評価いただけたことが光栄です。
麻生様:あらゆる事業で同じことが言えますが、接客は大切ですよね。当社はBtoBの会社なので、お客様は対 会社になりますが、営業マンの応対の仕方、印象が多くの仕事の成否を決める気がしています。
小林:これからも、お客様の信頼を得られる接客を徹底していきたいと思います。最後に、顧客様インタビューでは「お気に入りのアイテム」をお持ちいただいているのですが、こちらご紹介いただけますか?
麻生様:大野さんという先輩経営者からいただいたライターです。青年会議所で活動する意味を見いだせずにいた私を「経済界には面白い人もいる。もっと麻生くんの個性を出せばいい」と励まし、視野を広げてくださった方で、活動も遊びも全力で楽しめる間柄になれたのですが、2022年50歳という若さで病に倒れ、逝去されました。
亡くなる前に「これやる」とくださったのがこのライターです。いただいた激励、尊敬の念、楽しかった思い出を忘れたくないという想いで持ち歩いています。
小林:強い想いのこもったアイテムをご紹介いただき、ありがとうございます。お互い、自分の個性も出しながら将来に向けたシーズづくりに取り組んでいきたいですね。本日は、ありがとうございました。