モノづくりが好き。

2007年 中途入社

フィッター・室長大沢

モノづくりが好き。

高校時代では、電子工学を勉強していました。
しかし、勉強する中で、自分がデジタルの人間では無いと判断できたため、テーラーを営んでいた父の影響もあり、テーラーの後継者のために開校された、東京洋服学園(現在は休校)で二年間学びました。

元々、手先の器用さには自信がありましたし、また、モノづくりが好きだったので、自分には合っていて、担当の先生にも認められました。
銀座英國屋に入社できたのも、担当の先生からの推薦があったからです。

フィッターとして自信は、自分が意図するシルエットを表現できるようになったとき。

入社(昭和55年)当時は、今のようにすぐに技術指導をしてもらえたのではなく、製品の地方各店への発送や各支店からの修理品の受付といった下積みの仕事が殆どで、フィッターの基礎となる裁断の技術を教わるようになったのも1年経ってからでした。
そしてフィッターの仕事を始めたのも、入社3年半が経過してから。
その頃からやっと仕事が面白くなり始めた経験があるので、今の若い人たちには、仕事にやりがいを持てる様に勉強会などを開き技術者としてのスタートをサポートし、早く現場に出られるよう取り組んでいます。

フィッターとして自信を持つようになったのは、入社7年程度経過したときです。
フィッターを始めた最初は、無我夢中でピンを打って(注:ピンを打つというのは、フィッター独特の言い方です。しつけ糸で仮留された仮縫い品を、更にお客様の体型にフィットさせるための、ピンで仮留する作業を指します。)いましたが、自分が意図するシルエットを表現できるようになってから、自信を持ち始め、やりがいを感じるようになりました。

技術者としての銀座英國屋の魅力は、技術に集中できる環境がある点。

銀座英國屋では、営業担当と技術担当が分かれています。
私が経験したブランドでもそうでしたが、他のブランドでは、技術者に営業ノルマが課せられていました。
この場合ですと、たとえお客様の来店が無い時間帯であったとしても、店頭に立たなければならず、技術を磨く時間を確保できないというもどかしい時間も多くありました。
銀座英國屋は、技術者には営業ノルマがなく、営業活動をする必要がないため技術に集中できます。

また、注文量の多さが重要となります。
技術者は、経験値が技術に反映されますので注文量の多い会社に勤めることは重要な要素だと考えています。
様々な体型のお客様を沢山経験し、そのたびに仮説と検証を繰り返すことによって、技術者としての引出しが増えるためです。
特に若手技術職は、新規客様の注文量が多い店舗であるほど、成長に適した環境だと感じます。

また縫製体制も重要です。
縫製技術者の高齢化は世界的に深刻な状況です。
自社では職人を抱えておらず、外部の縫製職人に縫ってもらうという体制のテーラーも多くあります。
しかし、やはりフィッターとして磨き上げた技術を、製品に反映していくためには、縫製者と密にやり取りができる環境が必要です。
銀座英國屋は、100%子会社のエイワ縫製があり、店舗(営業・フィッター)と縫製職人が定期的に品質改善会議を開き、縫製現場と販売現場が一体となって取り組んでいます。
この体制は非常に貴重な体制ですので、更に昇華させて参りたいと思います。

CAD導入による作業時間の半減

2016年から銀座英國屋独自のCAD(Computer Aided Design、設計・デザイン用のプログラム)を開発し、作業時間が半分以下になりました。

これにより、業務量の負担が更に減り、仮縫い時に伺ったお客様の要望を、どの様に型紙に反映させるのか技術を突き詰める時間が更に確保できるようになりました。

老舗として蓄積してきた知恵を、更に若い方々が利用しやすいようなCAD開発を続けていければと思っています。

何歳になっても、新たな発見がある。

水本先生(※銀座英國屋の最高峰の縫製技術者)も70歳を超えられましたが、「いまだに新しい発見がある」と仰います。
フィッターも同じように日々進化が出来る仕事だと考えています。

しっかりと仮説・検証を積み上げていくと「去年上手く出来なかった仕事が、1年間積み上げてきた経験で、今年は上手く出来る」ということが、起こります。
これは技術職としての奥深さ、また、やりがいでもあります。

もっと銀座英國屋は認められるブランドになれる。

今の銀座英國屋の課題は、ブランド価値の向上だと認識しています。

有名な海外ブランドでは、イージーオーダーでも銀座英國屋よりも高い金額でスーツを販売しています。
技術者として、それらの製品よりも、より良いスーツをお納めしている自負があります。
だからこそ、より高い単価で勝負できるように、ブランド価値の向上が必要だと認識しています。

そして、ブランド価値が向上すれば、更に贈答品としての価値が上がると思います。

「つい、あなたが作ってくれたスーツに袖を通してしまうんだよ」

これまでで印象に残っている私の仕事は、お受け取りになられたギフトでお仕立ていただいた上場企業の社長様のスーツを作った時の仕事です。
その方は、何軒もの有名なテーラーでお仕立てになっている方でした。

その方は、特徴的な肩をしていらしたので、肩廻りが楽になる様に型紙の補正にも工夫をして、さらに普通の肩パッドでは対応できないと判断し、私が肩パッドを調整してスーツをお納めしました。

少し経った後に、その方がお店にいらして「クローゼットはスーツで溢れているんだけど、ついあなたが作ってくれたスーツに袖を通してしまうんだよ」とお褒めの言葉を頂きました。
それ以来長いお付き合いが始まりました。

私が考える事を形にしたものが評価いただけた事が自信になりました。

フィッターに向いているのはロジカル能力の高さ

フィッターというと、シルエットに関わる仕事だからこそ、感性が重要ではないか?と思われる方が多いようですが、私自身は、むしろロジカル(論理的思考)能力が重要だと考えています。

理由は、人間の身体は十人十色な為に、感覚だけに頼るのではなくてありとあらゆる問題に対して、理論で仮説・検証を繰り返して答えを見つけていくことが重要なのです。

ロジカル能力が高いタイプであれば、自分自身が伸びることもできますし、また、人の指導も可能だと思います。

一緒に働きたいと思えるのは、自分を磨ける方。

フィッターという仕事に興味を持っていただけることが、もちろん重要です。
ただ、技術職だからこそ、技術だけではなく、自分の人格を磨ける方が良いと思っています。
「人格を磨く」というのは、自分のことを認めながらも、自分の悪い点にも目を向け、直すことだからです。
「技術を磨く」というのも、同じ作業ではないでしょうか? だからこそ、人格を磨ける方と私は一緒に働きたいと思っています。

最近の趣味はカヤック

富士五湖などでカヤックを漕いでいます。
無心になって漕いでいると、とても心地が良いのです。
水面に浮かんで技術のことを考えることもあり、とても心地良い時間です。
いつもは銀座にいるので喧噪から離れた場所に自分を置きたくなるようです(笑)