銀座英國屋にとって志望理由が必須でない理由は?採用担当へインタビュー

志望動機が必須でない理由

こんにちは!採用コンサルタントの山崎です。

一般的に企業の採用選考では、書類選考の一基準として「なぜ自社を選んだのか?」という志望理由も合否の判断要素にされます。ところがオーダースーツ銀座英國屋(東京・大阪)では、志望理由を記入して頂くことを必須としていません。それは何故でしょうか?

そこで、銀座英國屋の採用担当の植村さんへインタビューしてみました。

プロフィール

植村

2014年入社。銀座本店で3年半コンサルタント職を経験したのち、本社勤務。現在は銀座英國屋の広報・採用を担当。社内外を問わず「心の通うコミュニケーション」を大切にしている。

志望理由よりも自己PRが重要

――銀座英國屋に応募する際、志望理由は必須ではない、とうかがいました。これには、どんな狙いがあるのでしょうか。

志望理由はもちろん、記入して頂いている方に関してはしっかりと目を通しています。しかし、志望理由の内容で書類選考の合否判断をしていません。これは新卒だけでなく中途採用においても同じです。

志望理由以外の、応募者が持つ強みやこれまでの経験(学生であれば学生生活)を自己PRとして記入していただければ、それだけでも自社に合う人材かどうかを見極めることができます。

―強みや経験で人材を見極めているのですね。では、銀座英國屋に応募した背景はどのように確認しているのでしょうか。

志望理由ではなく、一次面接に進んで頂いた際に『どのような基準で、会社や仕事を選んでいるのか?』を伺いながら、その自然な会話の流れで『どういった背景があって、その基準で選んでいるのか?』『銀座英國屋をどう知ったか?』などを聞いてまいります。

もしそこで、『応募者の希望と当社が少し違うかも…』と感じることがあれば、その違うと感じる点をしっかり応募者に伝え、それに対してどう思うか、という点を聞き、双方で意志疎通を丁寧にはかっていきます。

―この対話で、仮に「なんとなく」で受験志望した応募者側であっても、自分自身が「この会社で働く動機」を確認できるということですね。

磨き上げた自己PRは、他社の選考でも使える

―志望理由を必須にしていない理由は、他には何かありますか。

志望理由を考える時間を減らして、その分自己PRをじっくり書くことに時間を使って頂きたいですね。その方が並行して受験する他社企業への応募時にも有利に働くと思うのです。

―自社の選考をしながら応募者のことにも気を配る、そんな配慮に驚きます。

自己PRは一番頑張って書く「作文」なはず。何度も書き換えて作っていると想像できるからこそ、銀座英國屋としても大切に読んでいるということです。

「努力や試行錯誤の跡」を重視

―ここまで、銀座英國屋では志望理由を重視しない理由を教えていただきました。では、書類選考では何をチェックしているのでしょうか。

銀座英國屋では『これまでの経験を自分自身でどのように捉えて努力や試行錯誤をしてきたか』という点をポイントにしています。自己PRの内容や、その文章に対しての言葉の選び方などを中心に総合的に判断しているのです。

これまでの学歴や肩書きという形より、「どのような努力や取り組み姿勢をもって成功を成し遂げたのか?」「失敗経験がある場合はその失敗を自分自身がどう捉え、その後どう過ごしてきたか?」という点を見られています。

高い学歴を持つ方や、大手上場企業での勤務経験、肩書、表彰歴などは、応募者本人の努力によって勝ち得たものであり、価値あるものです。

応募者が行ってきた、これまでの努力を評価するということですね。

結果・成果は、環境や運に大きく左右されてしまうもの。

銀座英國屋としては、結果・成果がその時には伴わなかったとしても、努力・試行錯誤し続けられることが、最終的には結果・成果になると考えています。

だからこそ、「努力や試行錯誤の跡」を重視しています。

自己PRで重視する具体的なポイント

―銀座英國屋にとって、自己PRはとても重要だということが分かりました。では、自己PRでは、具体的にどのような点を重視していますか。

まずは、困難に直面した出来事に、最終的に前向きな意味づけをしているか、ということです。

入社後にも困難に直面することはありますし、渦中では辛いと思うのは自然だと思います。しかし、そのような出来事からも『学び』を見つける姿勢を持てる人を『成長できる人』だと思うので、自己PRで『過去の困難をどのように捉えているか』を見ています。

―困難から学ぶ姿勢が大切ということですね。そのほかには、どのようなことをチェックされていますか。

困難を乗り越えるために具体的な工夫や努力をしてきたか、ということも重視しています。

「困難を改善するために具体的に試行錯誤し、努力してきた経験がある人は、入社後にも『諦める』『グチを言う』のではなく、『どうしたら?』と考え、出来ることを行動に移せる人だと感じます。

実際に入社した若手社員は、積極的に自ら考える、という行動ができており、従来の会社の接客スタイルに対して、『もっとこのようにしたらよりお客様に喜んで頂けると思うのでやってみていいですか?』というような提案を、会社にしてくれています。

そのような前向きな視点を持てる人同士で切磋琢磨して銀座英國屋の未来を担ってほしく、『具体的な試行錯誤・努力のエピソード』も見ています。

―前向きな取り組みができるかどうか、具体的なエピソードから判断しているんですね。他に重視されていることはありますか。

周りからの協力を得ているか、その事に気が付けているか、ということも重要です。

『営業成績トップでした!』『〇〇賞をいただきました!』という経歴も素敵なのですが、それを自分1人で成し遂げたように感じる方ですと、エグゼクティブの信頼を得るのは難しいと思います。周りに助けられていることに気がつけている事、謙虚な姿勢を持っていることも自己PRから見ています。

履歴書は20分かけて読み込む

―大企業の人事が履歴書を読み込む時間は、一般的に「数分」と言われています。しかし、銀座英國屋の場合には、20分くらいかけて履歴書を読み込むとうかがいました。

銀座英國屋では、面接の時間をとても大切に考えており、なるべく応募者の良い個性を引き出したいと考えているからです。

だからこそ履歴書にはあらかじめ、注目ポイントをマーカーで付け、確認・質問したい内容を加筆して準備し、一次面接の際にしっかりと応募者に寄り添い、その方の深い想いを掘り下げられるように臨んでいます。
また、面接当日までにその応募者の出身中学から高校、大学、これまでのお仕事場のHPも見るようにしています。

―出身中学まで確認するのはすごいですね。そこまでされている人事担当者様は初めて聞きました。そこまですると、その方の生い立ちのストーリーが見えてくるということでしょうか?

はい、そこまで遡って見るようになったのは、以前に一緒に選考に携わっていた先輩社員が、事前にここまで履歴書を読み込むとすごく良いよ、とすすめてくれてから、私もやるようになりました。

出身中学から見ていくと、どのような環境で過ごしてきたのかがイメージがつきやすく、学校の校風なども分かるので、その校風が本人の魅力に出ているのがなんとなく分かってきます。事前に情報を見ておくことで、自己PRの中で学生生活のことを聞いた際に、よりいっそうイメージがつきやすくもなります。

応募者の方から面接時に、『そこまで読み込んでこられるとは思っていませんでした。深く聞いてもらえて嬉しいです。』というコメントを頂戴することも多くあります。(笑)

―面接は応募者にとって、とても緊張する場。このように深いところまで掘り下げて話を持っていくことで、緊張がやわらいでいくのも表情から分かるようです。

手書きの履歴書なら上手な字より、丁寧に書いているか

―履歴書は手書きか、パソコンで入力するのかどうか、応募者にとって悩みどころです。銀座英國屋では、どちらを重視していますか。

履歴書の記入形式としては、パソコンで入力したものでも手書きでもどちらでも気にしません。

もし、手書きで書かれている場合は、相手が読みやすく、丁寧に書いているかが目に入ります。

銀座英國屋のスタイリスト職(接客担当)では、お客様に直筆のお手紙をお送りする機会も多くあります。上手かどうかという視点ではなく、読み易いようにと『丁寧に書かれた字』ということが1つのポイントとなっています。

まとめ

筆者はこれまで数ある企業様の選考過程を見させてきましたが、ここまで書類選考時に深堀りして読み込まれる人事担当者さまは初めてでした。

中学校まで遡って相手のことを知る、というのは意外と簡単なことではありません。1人1人にじっくり時間を取る、向き合う、という銀座英國屋の採用に関する想いがみなさまにも伝わったのではないでしょうか。私も普段採用選考に携わっている立場として、頭の下がる思いがしました。

とはいえ、銀座英國屋の場合には、対話の中で深堀りしていただけるので、求職者の方にはあまり重いプレッシャーとはとらえず、まずは履歴書を書いてみて頂ければと思います。

監修者

山崎香織  採用コンサルタント「ヒトカラ」~中小企業採用支援事務所~ 代表
2006年より人材派遣事業、就職支援アウトソーシング事業、人材紹介事業でのコンサルタント経験を経て、現在は全国の中小企業に対し、新卒採用からキャリア採用、正社員からアルバイト採用まで、幅広く人材確保の支援を行っている。
幅広い採用手法の提案をし、コストを抑えた人材確保を実現。