採用応募者の不安払拭を目的とした「内定確定後面談」

こんにちは!採用コンサルタントの山崎です。

採用応募者にとって「本当にこの会社に入社して良いのだろうか?」という不安は付き物ではないでしょうか?
オーダースーツ銀座英國屋では、応募者の不安の払拭を目的に、独自の選考方法を導入しています。

その選考方法とは、「選考過程に社長が関わらない」ということです。
まず、英國屋の選考では、書類選考から2回の面接を経て内定を出していきます。
社長は選考過程を社員に託しており、内定まで一貫して人事社員と現場管理者、会社役員が決定権を担っています。

「社長が選考に関わらない。」と言うとよく、「社長が最終決定しなくていいの?」と疑問に持たれることがあります。
たしかに一般的にみると、社長が最終決定をすることが当たり前のように感じるかもしれません。
そのような中、英國屋の小林社長は「自分は選考過程に参加しない」「採用担当の社員に一任する」と決め、選考に関わるのではなく、採用を決定した内定者に対して「内定確定後面談」を実施。内定をお伝えし、応募者が入社の承諾をする前のタイミングに、社長と内定者が対話する場を設けています。

この「内定確定後面談」について、小林社長の想いをインタビューしました。

■会社組織や社員に対する社長としての想い

小林社長:選考は、経営に携わっている自分が関わるより、現場を熟知している人間に任せた方が良いと思っています。
山崎:現場の方にお任せしている理由は何でしょうか?
小林社長:私は20代で三代目社長に就任し、社員の協力を得ながら経営に携わってきました。現場は理解しているものの、気が付くと将来や組織全体に目が行ってしまう自分よりも、よりお客様に近い距離で、社員同士肩を並べて仕事をしてきた人間の方が、より会社のカラーに合った求職者、お客様との信頼関係を築いてくれる応募者、を正確に判断できるのではないか、と考えたからです。
山崎:経営者として、採用する人材は自分の目で判断したいのではないでしょうか?
小林社長:選考してくれている社員を信頼していますし、また、実際に採用した人も素敵な人ばかりという実績があるから大丈夫です。

小林社長:私自身が選考に関わらない意図の2つ目は、これから働いてくれる応募者だけでなく、今会社のために働いてくれている社員のモチベーションも大事にしたいということです。
山崎:今いる社員のモチベーションが、採用に関係するのでしょうか?
小林社長:私から社員へ『採用の権限を移譲する』ことで、社員の働き甲斐や、そこで得られる成果によって自分自身の成長を実感してもらいたい、と思っているのです。
山崎:共に働く仲間を採用するという大事なことを、現場の皆さんにお任せすることで、大きなモチベーションの創出を図るのですね
小林社長:人事として働く入社9年目の植村も、「任せてもらえること嬉しく、より誠実に仕事を頑張ろうという気持ちになっている」と話してくれています。
山崎:社員が一緒に働く人材を内定し、その内定者に社長が内定後の面談でコミュニケーションを取っていく、というスムーズな連携が生まれ、英國屋にとって確実な採用フローが構築されたのですね。

■内定確定後面談導入のきっかけ

小林社長2010年代から社会的に「早期離職」問題が増え始めたなか、英國屋でも入社後の早期離職者が続けて発生しました。英國屋では3年未満で離職してしまうケースが多く、10名弱の社員が会社を離れていきました。離職していく理由は個人によって様々で、決してネガティヴな理由だけではなかったのですが、10名弱の離職というのは中小規模の自社にとっては少ない人数ではありません。そこで、「どうすれば早期離職を防げるか?」を考えた結果、応募者が持つ「入社前のイメージと入社後の現実にギャップがあるとモチベーションダウンにつながるのではないか?」という結論に至ったのです。

例えば、以前は当時30代であった社長の私が選考に関わり面接官をしていたので、若い社員が多い職場というイメージを持たれやすい状況がありました。ところが実際入社するとシニア社員が大半を占めていて、入社前のイメージとギャップが生まれます。そのギャップがモチベーション低下につながるのではないかという懸念から、事前に選考段階で「社員は高年齢の在籍が多い」ことを伝えるようにしました。

このような1つ1つのギャップに繋がるイメージが出てこないように、内定確定後面談ではきちんと内定者に会社の実情を伝えるようにしています。また、選考前に定期開催している社長セミナーでも、社内の実情を内容に盛り込んで参加者へしっかり伝えるようにしています。特に内定確定後面談では、辞退を防ごうとして良いイメージやメリットばかりを伝えるのではなく、マイナスに感じられることや会社の現実を正面から伝えていくようにしたことで、ここ数年は3年未満の早期離職はほぼ発生しなくなりました。

■気兼ねなく社長と会話ができる場

山﨑:入社前と入社後にイメージのギャップが生まれないようにという意味での内定確定後面談ですが、応募者は「本当に気兼ねなく社長に質問できるの?」と思われるかもしれません。工夫されている事はありますか?

小林社長まず、内定確定後面談の最初に「内定通知書」を社長の手から本人へ直接手渡ししています。さらに内定は取り消しができない旨も説明して、内定者が「選ばれる側⇒選ぶ側」に立場が変わったことを理解してもらい、安心して質問・確認していただけるような場にしています。

そして、先に社長の私から、自ら会社の実情、例えば業績や課題などの、数字も踏まえた機密情報を積極的に開示し、時にはプライベートの話題も少し含めながら、内定者がリラックスして質問できるような雰囲気づくりに気を配っています。
「ここまで開示してくれるんだ!」と感じてもらえれば、相手からも話しやすくなるのではないかとの考えから、面談では気さくな雰囲気づくりと、内定者自身の話を社長が最後まで丁寧に聞く、というスタンスをとることも意識しています。

内定者からは、「飲み会の頻度はどのくらいですか?」「本当に残業は無いのですか?」「入社したらどの辺に住んだら良いですか?」「オーダースーツ業界ってこの先ほんとに大丈夫なのですか?」など、遠慮なく、そしてざっくばらんな質問が出てきますよ。和やかに対話をしていくので、いつのまにか内定者自身の緊張もほぐれ、面談の最後には社長とのコミュニケーションを楽しんでくれているような雰囲気にもなっています。

■社長が内定者に対して想うこと

山﨑:内定者への印象も教えてください。

小林社長採用を担当してくれている社員が、応募された方のお話しを深く伺って選考をしているので、内定者は皆さん想像以上にとても素敵な方達ばかりです!
内定確定後面談をしている中で、「ちゃんと選んでくれているんだなあ」という社員に対する感謝と、「辞退しないでこのままうちに入社してきてほしいな」という内定者に対する期待を胸に抱いています。だからこそ逆に自身としては「会社の現状や、社員や内定者への想いなど、伝え残すことがないように・・!」というプレッシャーも感じますね。今は求職者が会社を選ぶ時代。弊社も選んで頂けるように、これからも社員や内定者へ誠実に接していきたいと思っています。

■さいごに

「人を大事にしたい」という社長の人柄や社員に対する想いがあふれ出たインタビューでした。
特に、採用は現場に任せて社員のモチベーション向上を図り、社長ご自身は内定確定後面談に注力される、という独自の取り組みに、銀座英國屋としての一貫した人材採用への強い意志を感じました。
また、社会情勢に会社としてどう立ち向かっていくべきか、という課題に対しても独自で工夫改善に励んでいる点に、社長としての覚悟や心意気も感じます。

「人を大事にし、実際に行動している会社」に興味があられる方は、ぜひオーダースーツ銀座英國屋(東京・大阪・京都)の社長セミナー(6名までの少人数・夜間WEB参加も可)にご参加ください。

■監修者

山崎香織  採用コンサルタント「ヒトカラ」~中小企業採用支援事務所~ 代表
2006年より人材派遣事業、就職支援アウトソーシング事業、人材紹介事業でのコンサルタント経験を経て、現在は全国の中小企業に対し、新卒採用からキャリア採用、正社員からアルバイト採用まで、幅広く人材確保の支援を行っている。
幅広い採用手法の提案をし、コストを抑えた人材確保を実現。